第16話 今でも記憶に残る「あさま山荘事件」

 日本を変えるつぶやきなので、やはり、何がこのような現状をもたらせたのかを考えることは大切だと思い、個人的な記憶の断片からかんがえてみようと思うのです。


 今の若い人は殆ど知らないと思うし、中年でも知っている人は少ない。歴史の教科書にはきっと載っているのでしょうが、かつて、日本には激しい学生運動が起こった歴史があります。


 個人的には、戦後教育において、憲法と民主主義を教えたからだと思っているのですが、どちらかと言えば、共産主義に加担した運動であったと思います。1960年代がピークであり、私が小学生の頃はニュースで報じられていたと思います。


 因みに、私の住んでいる田舎では殆どそうした運動がなく、何か別世界の日本という印象がありました。当時は安保反対で暴れており、何をそんなことで躍起になっているんだろう位は感じていた気がします。


 そして、1970年代に入ると学生運動も沈静化してきたようで、その最後に登場するのが表題の「あさま山荘事件」ではないかと思います。当時私は中学一年生でした。


 確か試験期間中で、コタツで勉強しながら、事件のライブ中継を見ていた記憶があります。その時の印象として、警察という国家権力が正義であり、それに歯向かう学生たちは「悪」という風に見せられたような気がします。


 当時の私は、何で学生たちを政府はイジメるのか?という感じでいました。粋がっている学生たちをそこまで追い込む必要がどこにあるのか?弱い相手にそこまでする意味があるのか?という感じです。それを昼間っからライブ中継するというやり方にも疑問を持った気がします。


 かと言って、私は左翼とか特定の政治思想を持っていたわけではないし、今でもそれは変わりませんのであしからず・・・・


 それから三年後に高校のオリエンテーションで、最初に忠告を受けたのが「学生運動をするな!」という事に違和感を覚えたのを未だに覚えています。


 学生運動というものが良いか悪いかは別として、若者が主義主張を持つことは素晴らしい事であり、悩み多き青春に於いては当たり前ではないかと思います。


 実に不思議なのは、あれだけ学生運動に没頭した私たちの前の世代の人たちが、そうした主義主張を捨て、企業の奴隷となって必死に働いたことです。もちろん、その頑張りが今の日本を作っているのですが。


 アイデンティティーを最も大事にしていた人たちが、それを捨てて生きることを選んだとしか思えないわけです。極端な話「あさま山荘事件」によって、アイデンティティーが壊されてしまったと感じるのです。


 そこからの日本人は滅私奉公という産業奴隷に変貌していく。国家という権力に飲み込まれていくのです。その結果が、今日の日本になるのではないかと考えます。


 こうした原因を生み出したのは、当時の学生が未熟だったという事。もっと言えば、バカだったという事。それは、学校で勉強したことでそうなったのです。


 アイデンティティーという人間の権利を守るために戦う。この時点でバカとしか言えないわけで、戦いは身を亡ぼすだけということを理解できなかったせいではないかと思います。


 そして、見事に身を滅ぼしてしまい、もはや風前の灯と言えるでしょう。


 何かを為すには戦ってはいけないのです。戦うことの成果は敵を増やすだけだから。それでは圧倒的な権力に立ち向かうことは出来ない。所詮、一人一人の力は弱いのです。


 だから、大事なのは如何に協力するか助け合うかだと私は思います。


 現在の日本にどれくらいの協力関係、助け合いの関係があるかは分かりませんが、身を滅ぼしていく現状に於いて、誰もが自分のことで精一杯という状況ではないかと思います。


 そうした状況が、他人と争うことを迫り、敵を作り、身を亡ぼす者を増やすという悪循環になっているわけです。そして、今やその先に何があるかが見えて来たのではないでしょうか?


 結局、個々人がアイデンティティーを捨て、国家の奴隷と化したことで争い合い、最期は孤独死するという誠にお粗末な結果をもたらしている。それは、未だに日本人が未熟でありバカであるという証拠だと思います。


 人を人たらしめるアイデンティティーを取り戻さなければ、人は生きていけないという事なのです。その為に先ずやらなければならないのは、アイデンティティーを潰す学校教育を廃止することではないかと考えます。


 もちろん、それは私の考えであり、誰もがそう思うわけではないでしょう。


 大事なのは、個々人が学校教育で消された自分自身を取り戻すために何をすれば良いのかを考えることだと私は思います。その答えが日本を変える原動力になるのではないかと思うのです。

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