創作短編怪談
湊歌淚夜
彼女の思い
ボクは朝起きてシャワーを浴びる、いわゆる朝シャワーの習慣があって、その日もいつもと変わらずシャワーを浴びようと、起きてすぐにシャワールームに向かったんです。服を脱いでる間はまだぼうっとしてたんだけど、
シャワーを浴びた瞬間に右脇腹に鈍痛が走って、おかしいなと思って下腹部を見てみるとナイフで刺されたような傷があって床も真っ赤に染まってたんだよね。僕は怖さと痛みで動揺してたけどとりあえずお風呂から出て、傷に大きめの絆創膏を貼って、昼病院に行こうと思ってたんだ。
で、この時にふと、別れた彼女のことが頭によぎって。その彼女は…3年前に事故で亡くなってたんですが。僕が仕事でドタキャンした旅行の行きの飛行機が、墜落してね。
その事を恨まれてるような気がして、傷が酷く痛んだ。
で、ひとつ疑問が残ってね。ベッドで目覚めてその時点では気づかなかったんだけど、そのベッドからここまで、一滴も血は垂れてないんだよ。服には一切血がついてなかったのにベッドから足跡の血がどこかに向かってるの。
それを辿ってみたら、自分の家のトイレに続いてたんだ。んで、トイレのドアを開けたら、床が血の海で。で、便器の中になぜだかボトルシップがあって。
その中には手紙と……指輪が入ってて。
その手紙にはこう書いてあったんだ。
―あなたを、はなさない。
傷がまた1つ増えたような鈍い痛みを感じて、ふと後ろを向くと、ボロボロになった彼女がそこにいたんだ。彼女は
―これで、ずっと、いっしょだね。
といって僕を嘲た目で見てた。僕はそこで刺されたのが心臓だと気がついて。もうその時には意識は遠のいてて。
次の日には、僕の死亡ニュースが流れてた、「一般男性、謎の死亡事件」ってね。
世間はやっぱり一個人に冷たいなって。
ま、僕の体も冷たいけどね。
創作短編怪談 湊歌淚夜 @2ioHx
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。創作短編怪談の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます