第13話 忌み数

 やあ、なんだかんだ言って十三話目まで来たね。13か、不吉な数字だね、はは。

 君は忌み数って知ってる?数字の4とか、13とかは忌み数とされてるんだ。要は4は読み方が、し。死を連想させる、とか、キリスト教では聖書の中で13って数字がやたらと登場していて、13番目の天使がサタンであるから不吉とされている、とか、こじつけみたいなものだね。

 国を問わずに忌み数っていう文化はあって、イスラエルでは6が不吉とされていたり、イタリアでは17が不吉とされていたりするんだ。どこの国もやっぱりそういうこじつけはあるんだね。

 都市伝説では666とか、4時44分がどうたらとか、忌み数に関する話は少なくないんだ。これからする話はそんな忌み数にまつわる話。


 ―忌み数—


 とある街にでるって噂のマンションがあった。けっこう都会にあって、十五階建てくらいある立派なマンション。廃墟ってわけじゃないし、新しくはないけどそんなにおんぼろってわけでもない。雰囲気もおどろおどろしくないし、住人もいるのになぜかでるって噂が独り歩きしてるらしい。

 ただ、一つ不思議なのはみんなでるって言うけど、何がでるのかは一切わからないらしいんだ。だけど行ったやつらはみんな口をそろえてでるって言う。

 その噂を怖いもの知らずの若者が聞きつけた。その人からこの話は聞いたんだけど、彼は幽霊やオカルトの類を一切信じていない人だったらしいよ。その時はね。

 そんな噂があるなら、行ってみようじゃねえか。そう言って噂を教えた友達に呆れ顔をさせた後、早々とその日の夜にそのマンションに繰り出したんだ。無鉄砲っていうか、まあどこにでもいるバカな若者だね。

 ところがいざついてみて気が付いた。マンションのどこにでるのか、それを聞いていなかったから、どうしたらいいのかわからなかったんだ。連絡して確認しようにもわざわざ真夜中に来たもんだから友達は寝ちゃってて、どうしようもない。

 突っ立っててもしょうがない。せっかく来たんだしとりあえず中に入って見ることにした。エントランスはセキュリティが甘くて普通にすんなり入れたそうだよ。十五階もあるから階段で登るなんて気が遠くなる。エレベーターでとにかく適当な階をうろついてみることにした。

 エレベーターに入って、何の気なしに4階のボタンを押したそうだよ。エレベーターの中に一人で入ると、真夜中ってこともあって、雰囲気がちょっと怖かった。静かに上がっていって、4階について扉が開いた途端、妙な光景が飛び込んできた。

 真っ暗なんだ。街の灯りがあるから、廊下の照明が切れてたとしても少しは明るいはずなのに、まるで地下みたいに真っ暗だったそうだ。

 あまりに不自然な光景にエレベーターから出れずにそのまま呆然と立ち尽くしてたら、エレベーターの扉が自動で閉まってしまった。あっけにとられてて動けないでいたら、エレベーターが勝手に上に上がりだした。

 ビビったそうだよ。なにも操作してないから動かないはずなのに勝手に上がっていくんだ。怖くなって階のボタンを見たら、13階のボタンが光ってる。

 一刻も早く逃げ出したかったけど、降りようにも13階に辿り着かないと優先順位があるから降りることが出来ない。ただ震えながら一階のボタンを連打して待つことしかできなかった。

 そのうち13階に辿り着いて、自動で扉が開いた。そしたら4階の比じゃないくらいやばかったらしい。

 やっぱり真っ暗なんだ。灯り一つともってない。暗すぎて目の前ですらわからないくらいの真っ暗闇。それなのに尋常じゃないくらい人の気配がしたそうだよ。

 ざわざわしてるというか、人が大勢いる体育館に入った時みたいに、群衆並みの気配が暗闇からしたそうだ。

 鳥肌が立って閉ボタンを連打したそうだよ。がたがた震えながら扉を閉じて、一階に降りるまでの間、生きた心地がしなかった。一階に着くなり、ダッシュでマンションから飛び出して逃げたって。

 後日、噂を聞いた友達にそのことを話したらさ、お前バカ言うなよって笑うんだ。どういうことだって訊いたらさ。そのマンション、4階と13階は無いって言うんだ。

 昔の建物にはたまにあることなんだけど、忌み数は縁起が悪いってことで4階と13階を無くして表示してあるんだ。つまり1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、14・・・っていう風にそもそも4階、13階って銘を打ってないんだ。だからお前が行ったっていう4階と13階なんて存在してないはずだってね。

 そんな馬鹿なことがあるかよって、明るい時間帯にもう一度そのマンションに行ってみたらしいんだけど、エレベーターのボタンは確かに4階と13階は省かれて表示してあったそうだ。

 でも、あの時確かに俺は4階と13階に行ったはずなんです、ってその人は言ってたよ。 

 エレベーターには異世界へ通じる、なんて都市伝説もあるけど、この話って4階と13階が幽霊みたいなモノなんじゃないかな。幽霊階、なんてね。そのマンションに行った連中がみんな口をそろえてでるって言うのは、存在しないはずの4階と13階がでる、って意味だったのかな?

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