第6話 家鳴り
家鳴りって言葉を知ってる?家にいると時々パキッとかミシッとかいうでしょ?あの音を家鳴りっていうんだ。
昔は妖怪の仕業とか言われてたらしいけど、要は家の構造物、柱とか家具の木材が収縮することによって出る音なんだ。よくラップ音がする、なんて心霊現象の正体は単なるこの家鳴りだったりするんだよね。
次の話はこの家鳴りに関する怖い話。
―家鳴り―
辺境の地ってわけではないけど、田舎の方の話。田舎っていったって、大きな商業娯楽施設とかがないだけで、まあまあ田舎過ぎず都会過ぎずって感じの街だね。
そんなところだからなのか、街には心霊スポットなんてまるでなかったそうだよ。街のどこにいたって人気があるから、そんなおどろおどろしい雰囲気があるとこなんて微塵もない。
そんな街で育ってきた高校生が体験したことなんだけどね。
夏休みに入って、友達たちとだらだら駄弁ってた時の事。肝試しをしようってことになったんだ。いいね、面白そうじゃんって盛り上がったけど、ひとつだけ問題があった。
肝心の場所がさっぱりないんだ。山なんてないし、神社とかはあってもきちんと管理されてるようなとこだから、夜な夜な騒ぐことなんてできない。街を出ればそんな場所ごまんとあるけどそこまで遠出してやりたいほどでもない。
どうしたもんかねって思ってた時、仲間の一人がこんな情報を聞きつけてきた。
街に一軒長いこと誰も住んでいない空き家があるって。おう、そこにしようぜって話になって、さっそくその日の夜、その空き家の前に集まった。
ところがいざ家の前に来てみると、空き家にしては雰囲気がまるでなかったそうだよ。街の真ん中にあるってこともあるし、なにより古い家じゃなくて見た感じは最近の家っぽい。
ここほんとに空き家なのかよって仲間の一人が言うけど、その見つけてきたやつは絶対に空き家だよっていう。ここの前をよく通るけど、明かりがついてるのを見たことがないって。半信半疑で敷地にぞろぞろ入っていくと、なるほど確かに人が住んでる気配はない。庭だったところは草が伸びきってるし、窓はくすんでコケみたいなものまではえてる。
あんまり心霊スポット感はないけど、まあせっかく集まったんだしここでいいかって話になって、入ることにしたんだ。
空き家とはいえ管理されてるからなのか、当然鍵がかかってる。だからリビングにあるような大きな窓から侵入したんだって。建てつけが良くなかったのか、窓ごとゆすったら簡単にとれた。
中は土足で入るのをやめとこうって思うぐらいきれいだったそうだよ。埃は積もってたけど、壁も床も古くなってない。
心霊スポットに来たって恐怖よりも不法侵入してるってスリルの方が強かったらしいよ。まだその時はね。
リビングから侵入して、全員で懐中電灯片手にキッチン、寝室、トイレ、お風呂場って探索していった。家具なんかはそのままになってて、食器なんかも置き去りになってたらしいよ。
ちょっとしたスリルと探検気分でワクワクしてたけど、入って見たらなんてことない。興ざめだなって思ってたら、階段がある。二階があるじゃんって上がっていったら部屋が一つしかない。ここを探検したらもう出ようぜってなって、ドアを開けてみんなで入った。
その部屋だけ他の場所と違ってやたらと家具があったそうだよ。子供部屋だったのか、勉強机が置いてあってベッドもそのままになってる。本棚には漫画とか参考書っぽいものがいっぱい詰まってる。
でも、ただそれだけで別に怪現象も起きないし、変な物だって見つからない。みんなでがっかりして、出ていこうとした時だった。最後尾を歩いてたやつが変なことを言い出した。
なあ、この部屋なんかやたらとミシミシ聴こえない?
え?って思ってみんなで立ち止まって耳を澄ましたら、確かにミシッミシミシッて家鳴りがする。そりゃ家なんだからこんな音ぐらいするだろ、ビビらすなよって仲間の一人が言ったら、その背後で部屋の中からそれを遮るように、ギシィッ!って特大の家鳴りがした。
その音を聴いた瞬間、みんなが縮み上がっちゃって、早足で階段を降りていったんだ。けど、みんな靴を脱いでたから、複数人とはいえそんなに足音はしないんだ。それも手伝ってか、怖いことに気が付いた。
追ってくるんだよ、家鳴りが。階段を降りてる時も、廊下を早足で逃げる時も、背後からバキッ!ミシッ!って凄い家鳴りがするんだ。それも逃げていく集団のすぐ背後で。
もう生きた心地がしない。うわーって叫んで転がるみたいにみんな駆け出した。侵入したリビングの窓から我先にって飛び出して、靴を履く余裕もないから手で引っ掴んで靴下で街に逃げたって。
あれが何だったのか今でもわからない。でも確実に、なにかがあの部屋から僕たちを追ってきたんですって、言ってたよ。
そうそう、最後尾を逃げてたやつが、家を飛び出して敷地からでるくらいの時にね、バンッ!って音が後ろから聴こえたらしいよ。ガラス窓を平手で強めに叩いたような音だったんだって。
二階の部屋にいたモノって、”家鳴り”だから家から出れなかったのかな?だから悔しがって最後に窓を叩いたのかもね。
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