第4話 無人のダム

 やあ、家の中に出てくる幽霊の話が続いたから、今度は外に出る幽霊の話をしようか。

 はは、中だろうが外だろうが変わらないって言いたそうだね。まあ実際そうなんだけど。今から話すのはダムにまつわる怖い話だよ。


 ―無人のダム—


 こんな話を知ってる?ダムってね、まあ山の中にあるし、雰囲気があるせいなのか、よく心霊スポットとして名前が挙がるんだよね。まあ自殺する人とかもいるから、そういう風になりやすいんだろうね。

 そのダムもね、ちょっとした心霊スポットとして有名だったんだ。いや、ちょっと語弊があるかな。心霊スポットとしては機能していないんだ。

 要は山の中にあるから人気もないし、だだっ広い駐車場もあるし、ダムの上なんか格好の走り場だから、肝試しの場所っていうよりは不良のたまり場みたいになってたそうだよ。夜な夜なバイクで乗り付けて集まっては騒音をたてて走ったり、ゴミを撒き散らしたりね。中にはスプレーで落書きをしたり、看板とか物を壊すやつもいたそうでね。管理業者は迷惑に思ってたそうだよ。ひどい時には、ダムの上で事に及ぶやつもいるのか、そのゴミが放置されてたそうだ。

 近隣住民はいないから苦情は出なかったそうだけど、とうとうダムの管理業者が業を煮やしてね。対策に乗り出したんだ。その対策っていうのが一風変わったものでね。

 ダムのあちこちに人感センサーを設けて、夜間に車とか人が通ったらスピーカーから大音量でご当地キャラクターのイメージソングを流すってものだったんだ。どこかのダムが似たようなことをやってたらしくてね。それを模倣して二番煎じでやってみたってわけ。

 効果はてきめんなのか、そのセンサーをつけてから不良たちはぱたりと来なくなった。まあそうだよね、バイクでかっこつけたいのに、バカみたいな底抜けに明るいキャラクターソングを流されたらたまったもんじゃない。ましてや事に及ぶなんてムードが台無しだ。

 ダムはあっという間に平和を取り戻したってわけだ。ただね、怖いのはここからなんだ。

 その管理業者、不良たちのリアクションを見たかったからなのか、監視カメラをつけてたそうなんだよ。音声も録音できるやつをね。

 最初の内は不良たちが悪態をついて去っていく映像が収められてたそうだよ。してやったりって感じで嬉々として確認してたらしいんだけどね。途中で妙なことに気が付いた。

 真夜中、誰もいないのに突然キャラクターソングが鳴るんだ。もちろんカメラには人も車も映り込んでいないし、鳥とか鹿みたいな野生動物だって映っちゃいない。

 センサーの故障かと思って確認するけど、ちゃんと正常に動作してる。

 そのセンサー、何に反応してるんだろうね。ちなみに今もそのままでセンサーをつけてるらしいよ。近隣住民はいないから迷惑にはならないし、不良たちは来ないしで、不気味な以外は弊害はないからね。

 こうしている今も、人っ子一人いない無人のダムでそのキャラクターソングが大音量で流れてるのかもね。

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