妹。


わたしの妹。


よくできた、わたしなんかにはもったいない、妹。


染めていないのに少し明るい、やわらかな髪。

きれいというよりかわいい方向に整った顔だち。

穏やかで花のようにふわっと笑う笑顔。

いつもほのかに香る、石けんの香り。


人望も厚く、誰からも好かれる、

まだ何者にだってなれる、中学2年生の、妹。


わたしにはない、色んなものを持っている、わたしの、妹。



幼い頃は、嫉妬した。


なぜ妹はすべてを持っていて、

わたしはなにも持っていないのか。

そう、嫉妬した。


親を恨んだ。

妹を恨んだ。

友人を恨んだ。

環境を恨んだ。

世界を恨んだ。

恨んで恨んで恨んで恨んだ。


でも、そんな嫉妬も、いまはもうない。


諦めたのだ。身の程を知ったのだ。



妹は、あれでいて努力家だ。

花のような笑顔と、陶器のような肌を持ちながら、

表には見せないけれど存外負けず嫌いで、努力家だ。


だからわたしは悟った。

あの子はなんでも持ってるんじゃない。

なんでも掴み取ろうとしているんだ。

そう、悟った。


それは、わたしにはできないことだった。

自分は努力した。

そう思っていたけれど、ぜんぜん足りなかった。

生きることへの情熱が、あまりに違いすぎた。



だからわたしは諦めた。

嫉妬もしなくなった。


ただただ「すごいなぁ」と、

他人事のように思うだけになった。


ずっと胸の中にあった感情も、

そうなってからはどこかに消えていた。


そしてそんな想いがあったことすら忘れて、

ただ、毎日を生きていた。




昨日までは。


妹の部屋から、妹のものではない喘ぎ声を聞くまでは。

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