最後の3分間
山谷拙文
第1話 最後の3分間
世にダイエットというものがごさいます。
バナナダイエット、コンニャクダイエット、朝から水一杯ダイエット、リンゴダイエット、納豆ダイエット、豆乳ヨーグルトダイエット、はぁはぁ。
書店に行きますと、雨後のタケノコの如くダイエットの本がズラリと並んでおります。
糖質ダイエット、炭水化物の摂取を減らす、高タンパク低カロリーが基本のようでございます。
どうしてこうダイエットなるものが喧しいものになったか、考えてみまするに端的にデブが増えたからでございます。
デブの増加とともに増えたものがごさいます。コンビニでございます。コンビニに入りますと、まず目に入るものが種類豊富なカップラーメンのラインナップでございます。
老舗の日清カップヌードルを始め、ペヤングなどの焼きそば、ひいては御当地ラーメンなどというものまで出る始末。
これを三度の食事の合間におやつ代わりに食べたり、寝る前にちょっと一杯食べたりすると体重は順調に果てしなく右肩上がりに増え続けるのであります。
そもそもカップラーメンなるもの、浅間山荘に潜伏した日本赤軍を成敗するため、出動した警視庁の狙撃隊に温食を提供しようと日清が開発したものでごさいます。
これを民間に下ろしたら大ヒット、世界にまで広まろうとは、日清の幹部も想定外、デブの増加に至ってはもっと想定外だったに違いありません。
これと同時期にブラウン管では、爆発的なヒットを飛ばすヒーローが誕生しました。ウルトラマンです。
円谷プロが弥勒菩薩増像からモチーフをとったといわれる、この新ヒーローは最初から怪獣に苛まれるものの、最後の3分間でスペシウム光線なる必殺技で怪獣を退治し、日本のお茶の間は拍手喝さいしたものでした。
日本中に蔓延るデブが怪獣なら、これを退治するライザップはさしずめ現代のウルトラマンなのかもしれません。
トウのたったタレントや女優のダブダブした腹が見事にシックスパックになる様子は、まさに「変身」と言わざるを得ません。
都内の予備校に通うA君、合間にバイトに励んでは、そのお金でカップラーメンを買い込み、ウルトラマングッズを集める所謂オタクです。
彼の楽しみは、このウルトラマンと夜のカップラーメン、勉強が終わった後、寝る前にズズーってやるのが日課になって、おかげで順調にデブになっています。
お母さんは、今流行りの若年性の糖尿にならないかと心配でたまりません。
母「こら、寝る前のカップラーメンは太るからやめなさいと何度言ったらわかるの?」
A「ん〜、これはやめられないよ。だって僕はウルトラマンの化身だからさ」
A君はスペシウム光線の格好して、お母さんを威嚇します。
母「ウルトラマンの化身ですって?
注意されるたびに、これが最後これが最後って、結局毎晩ズルズルと続けてるじゃないの。どういうことかきちんと説明してちょうだい」
A「最後の3分間は何度も来るんだ」
そういえば、お父さんと久々にした夫婦生活も3分間しかもたなかった、親子して何か似てるわ、と妙に納得した平和な日本のお母さんではありました。
最後の3分間 山谷拙文 @dragon4848
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