第3節
「……あれ、確か郵便屋さん……」
コダマはあの小学校へ戻ってきていた。学校ではあのアンドロイド教師が出迎えてくれた。
「どうも、ご無沙汰してます」
「ご用の向きはなんでしょう?」
教師の口調は、年経て丸くなっていた。設定を時代の変遷に従っていじられたのか、経年によるものなのかは不明だった。
「郵便です」
そう言ってコダマは封書を手渡した。
「これは……」
「先生宛の手紙ですよ」
教師は目を丸くした。彼は封書を注意深く開けると、注意深く折られた便箋を引き出した。
『先生ありがとう』——と、便箋の中心に大きく書かれていた。それを囲むように、子供達それぞれのコメントが、寄せ書きされていた。そして——。
『百年目の誕生日おめでとう』
教師の無機質な目の中に一瞬、有機的な感情の揺らぎが現れたようにも見えた。
「みんな……」
厳しく怒ったこともあった。一緒に笑ったこともあった。その思い出が、教師の電子頭脳の脳裏で、鮮明に描き出されていく。
「……ッ。郵便屋さん!」
すでに、コダマの姿は無かった。
了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます