第3節

「……あれ、確か郵便屋さん……」


 コダマはあの小学校へ戻ってきていた。学校ではあのアンドロイド教師が出迎えてくれた。


「どうも、ご無沙汰してます」


「ご用の向きはなんでしょう?」


 教師の口調は、年経て丸くなっていた。設定を時代の変遷に従っていじられたのか、経年によるものなのかは不明だった。


「郵便です」


 そう言ってコダマは封書を手渡した。


「これは……」


「先生宛の手紙ですよ」


 教師は目を丸くした。彼は封書を注意深く開けると、注意深く折られた便箋を引き出した。


 『先生ありがとう』——と、便箋の中心に大きく書かれていた。それを囲むように、子供達それぞれのコメントが、寄せ書きされていた。そして——。


 『百年目の誕生日おめでとう』


 教師の無機質な目の中に一瞬、有機的な感情の揺らぎが現れたようにも見えた。


「みんな……」


 厳しく怒ったこともあった。一緒に笑ったこともあった。その思い出が、教師の電子頭脳の脳裏で、鮮明に描き出されていく。


「……ッ。郵便屋さん!」


 すでに、コダマの姿は無かった。

                                     了

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