第19話 くろいぬ氏の正体

景山プロからのメールを見た、くろいぬ氏は苦笑した。

「半日で10万円とは安すぎですね。世界一のプロなのに」

そういうと、くろいぬ氏は手にしていた鞄の中から、100万円の札束を取り出し、ゾンビ・ロバートに渡した。

くろいぬ氏はバックギャモン・プレイヤーである。大阪例会に数回出席しただけで、JBL(日本バックギャモン協会)の会員だったこともあるのだが、知名度は高くない。地味で控え目。無口。どんな仕事をしているのか知っているのは、ゾンビ・ロバートだけだった。

くろいぬ氏は、複数の企業を経営する実業家であり、投資家。金融資産だけで、100億円を超えている。趣味は、バックギャモンと野球のバットの素振り。マンションには素振りの間があり、1日100本以上振る。心身の健康法かあもしれない。最近は、後継者の育成を目的に「素振り文武両道」というブログを毎日書いている。嘘だと思うなら検索して欲しい。きっと、貴方も読者になる。

「この100万円はどう使っても良い。ただし、交通費と日当で10万円包みなさい。バックギャモンはやらない方が良い。それよりも、バックギャモン界の状況をリサーチして欲しい。景山プロは神戸オープンに関心を持っている。神戸は世界的に有名な都市。特に神戸ビーフは有名だ。しかし、それだけではない。有馬温泉。須磨海水浴場。六甲山。動物園。水族館。美術館。中華街。きりがないほどの観光都市だ。ここでバックギャモンの大会があるとなると、世界中からプレイヤーが集まるだろう。それには、神戸バックギャモン協会を一般社団法人化して、神戸新聞社の協力を得る必要がある。景山プロの人脈、顔、知恵がどうしても必要なんだ」

「私はゾンビなので理事にはなれない。ただし特別外交官として、神戸市内に居住する権利を裏のルートで取得した。居住だけではない。神戸市から一歩でも外に出れば警察につかまる可能性がある。しかし、神戸にいる限りはVIPなんだ。神戸のゾンビだな」

ははは。ははは。

「場所は神戸ベイシェラトン」にしよう。ここから歩いて5分だ。問題は日程だな。モンテカルロがどうんるのか。とにかく、日程調整だ。頼んだよ」

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