静やしづしづ



八人の八女やおとめの神子みこ(巫女)が、神楽かぐらを舞っている。


今日は、夏祭りだが、この神社のしきたりだろうか。


父の好大郎と母のさとことで、千鶴は今日も祭りに訪れた 。


さとこは、巫女さんの舞を一目見て、居ても立ってもいられない。舞女の感性が衝動を起こさせる。

「お母さんも 踊ればいいのに。」


さすがに、神聖な舞の前で踊ることは憚ったが、

巫女の舞を見てすぐに覚えてしまった。


「八人もいはると映えるわねぇ。」


三人で、焼きそばを食べて、今川焼きを食べて、人形焼きをお土産にした。


「お母さん、あんこ好きだねー。」


「おばあちゃんのあんこで育ったからね。」


「おばあちゃんて、お静おばあちゃんのこと?」


「お静おばあちゃんの、お母さん。昔はおやつもなんでも作ったからね。」


「へー。おいしそう。」


「お静かあさんは、踊りが好きだったのよ。それでね、お母さんに、子供の頃から踊りを習わせたかったの。お静おばあちゃんのほんとの名前は、万葉まよだけど、お静ってすごく気に入っていてね。」



「へぇ。なんで?」






「それは、源義経の、しづかさんから来てるのよ。俗にいう、静御前しづかごぜんねぇ。」


「ふーん。だあれ?」


「牛若丸ののちの奥さんで、舞の名手なの。」


「えー?躍りの?」


「そうなの~。」



「牛若丸~~?」


千鶴は可笑しい。

なぜかというと、

丸島げんくんの

おもしろい顔が浮かんでくるからだ。



「静姫は、白拍子しらびょうしにさせられたの。」



「ふ~ん。」



白拍子を知らなかったが、今川焼の白餡はおいしかった。


「お前がまだ母さんのお腹にいたとき、ここへ来て、母さん踊ったんだぞぉ。うっとりするほど、綺麗だったなぁ……。」


「ふ~ん…きれい…」


千鶴は想像したが、

よくわからなかった。

千鶴は、踊りには向いてないのかもしれない。


「白拍子は、すいかんを着て、立て烏帽子えぼしを被って、刀をさして男の格好してるんだよ。」


「へぇ~かっこいいんだ」


「今様を歌って踊っていたのよね。」


「歌劇団みたいだねぇ~。ママなら、桜組だね。(笑)」


「ふふふふふ」


「はっはっはは」


「あはははっ。幼稚園みたい。」







静やしづしづ おわり~


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