第1話 出会いは上手くいく男「肩守」


「あっ、これ遅刻じゃね?」


 今日から2年生となり、後輩もできる始業式の日。昨夜遅くまでゲームをしていた憩太は寝坊をしていた。


「俺の目がおかしくなければ8時30分って書いてるよな……この時計」


 憩太の通う松風まつかぜ学園の登校時間は朝8時45分まで。憩太の家の近くには交通機関がなく、自転車通学も認められていない。

 そして、今から制服に着替え家から全力で走っても間に合わない。


「こういう時、テレポートとか高速移動とかの『能力』があればなぁ!」


 この世界の住人は基本的に何かしらの『能力』をもっている。そして肩守憩太の『能力』は、こんな時役に立つものではなかった。


「お兄ちゃーん!もう待てないよ!先行くね!!」


 憩太の妹、火鳥ひとりは今日から憩太と同じ松風学園の1年生だ。遅刻ギリギリまでお兄ちゃんを待ってくれる優しい妹だが、遅刻ギリギリまで起こさないで放置するひどい妹でもある。


「火鳥のやつ、起こせよ……」


 口ではこう言うが、憩太も起きられない自分が悪いとわからないような年齢ではない。

 身支度を整え、一足遅く出発する。


「いってきます」


 そういえば父と母も起こしてくれなかったな、と思いながら憩太は駆け足で学校へ向かう。

 ちなみに松風学園の周辺は微妙に入り組んでいる。憩太も11が、今では庭同然に走り回れる。

 これなら比較的緩めの罰になりそうだ、そう憩太が確信した途端、曲がり角から人が飛び出してきた。


 ――やばいっ!!避けられない!!!


「うわぁっ!」

「きゃぁっ!」


 盛大にぶつかってしまった。

 幸い、お互い怪我はないようだ。


「……っ」


 そしてこれが、肩守憩太の、新しい出会いだった。




 登場人物紹介


【名前】肩守火鳥かたもりひとり


【能力】周囲の温度を少し上げる能力


【備考】主人公である肩守憩太かたもりけいたの妹。憩太のことをお兄ちゃんと呼んで慕っている。能力故に冬は周りに人が集まるが、夏はちょっと距離を置かれる。

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学園ラブコメの女神は俺に微笑んでくれない いざよいあぐな @agunaiza0841

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