社会に馴染めなかった僕が異世界へ転移したけど、やっぱりどうにもならなそうな件

にある

答1 それは、“生きていてもいい”ってことだと思ったから。

「さて、どうしようかね。」

「え?あれ?」

「君、あれでしょ、どんくさいでしょ。」


 目の前に居る白髪の老人が、失礼なことを問いかけてくる。

 老人、と思ったのは白髪だからだが、しかし、見えているのに、ぼやけている気もする。非常に気持ちが悪い。


「それに、人の話聞いてるようで聞いてなくて。指示待ち人間ってわけでもないんだけど、失敗率高いから、結果的に悪い方に行ってしまったり。」

「え、あ、はい。」

「で、自己嫌悪。ストレスがすぐ溜まる。緊張してないときはまぁまぁ出来るけど、応用が効かないから、なかなかうまくいかない。」

「う。。。」

「もっとあるけど、まぁいいや。さて、どないしようかな。」

「え、あ、あの、いま、どなって、いるのでしょう。あれ?」

「ん?ああ、君はね。死んだの。車に轢かれて。」

「そう、なんですか。いや、そう、なんですね。」

「うん。記憶は、まぁひどい有様だったから、消しといてあげたけどさ。なんとなーく、身に覚えがあるでしょ。」

「はい。あれは、えーと、コンビニ終わりで、ああ、そう、また、お客さんがいっぱい来て、返金処理とか色々間違えたりして、すごく怒られて。」

「まぁそこはいいや。で、フラフラしながら帰ったら、轢かれた、と。」

「そう、ですか、死んじゃったんですね、僕。」

「ああ、そうだね。」

「ってことは、あれかなぁ、僕を轢いた車の人、なんか、悪いことしたなぁ。」

「あー、いや、まぁ、注意不足な点は十分にあったし、そこはもう考えないでおこうや。」

「あっハイ。ええと、あの、あなたは、なんていうか。」

「神様?」

「そう、です。神様d」

「違うよ。近いけどね。厳密には違う。それ今は関係ないけど。」

「そ、う、なんですね。」

「そう。今は、君がどうしたいか、ってことと、なによりどうしたもんか、ってところ。」


 深くため息をついて項垂れる老人(仮)。

 そこに同情や憐憫を感じることは出来ず、ただ、面倒だな、と思っているだけ。そう、感じられる声だ。


「まずさ、君は、このまま消えたい?それとも、まだ生きたい?」

「ええと、そうですね。。。」


 生きたい、と即答できない自分がいた。事故の直前まで、もう消えてしまいたい、と思っていたこともある。

 しかし、死にたかったわけではない。痛いのも、誰かに迷惑をかけるのも、死に損なってもっとひどいことになるのも、ごめんだった。


「消える、ってのは、その、死んだら来世とか、」「無いよ。」


 ごくり。


「そう、ですか。」

「そう。っとはいえ、まぁ、この選択が来世みたいなもんだけどね。輪廻転生ってのかな。」

「それが、今、決めれば出来るんですね。」

「そう。出来るよ、ただね。君の場合。」

「はい。」

「ええと、なんというかな、それまで培った能力とか、余剰領域、早死した時なんか特にね、そういうのを使って、いわゆるスキルってーの?そういうのを配布できるんだけど。」


 また、ため息。


「君の場合さ。それが無いのよ。若いは若いんだけどね。」

「そう、なの、ですか。」

「そうなの。だからさ、生きたい、って思ったらさ。なんにも持たずに、そのまま、」

「生きたいです。」

「お。」

「あの、神様、の代理さん?あの、出来るなら、まだ、僕、生きていたいです。」

「あー、そっかぁ。うん。まぁ、そうだよね。わかった。じゃあ、そのまま、向こうに投げるわ。」

「はい、あの、宜しくお願いします。」

「ん。ああ、違和感無く思い出せないと思うけど、名前はもらったからね。それが代償。」

「名前……僕の名前。」

「うん。まぁ、どうでもいいやね。それじゃ、行ってらっしゃい。」

「ありがt」


 す、っと消えた。


「はぁ。この仕事、ほんとにやるせないよなぁ。」

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