邂逅
「開ける一択!!!!」
めっちゃ楽しそうだ。実はノックする前に透視でネタバレしてしまったのであまり開けたくない。 ネタバレしたからノックしたんだけど。
「普通に考えて鍵かかってるだろどうやって開け」
「オッラァアアアアァァッッッッ!!!!」
私が全て言い終わる前にとても美少女がしてはいけない掛け声を叫んでドロップキックをぶちかます。
当たり前のようにドガッシャーン!とけたたましい音が廃墟に響き、ドアが気持ちいいぐらい吹っ飛んだ。
「な、なんじゃお主ら!?」
「驚いたわね……まさかこんなところにケモ耳幼女がいるとは。」
私は透視で知っていたけどな。
魔法少女が蹴破った扉の先には、まるで廃墟の中とは思えないほど生活感が溢れる小部屋だった。
そこら中にゴミ袋が散乱し、漫画やライトノベルが転がっている。そんな部屋の中央には布団とちゃぶ台、そして魔法少女の部屋で見たようなパソコンが鎮座している。
極めつけはこの部屋の主であろう少女で、頭には大きな耳が生えている。あれは狐のものだろうか。
体格は明らかに子供で、ダボダボのTシャツにパンツだけと実に目のやり場に困る格好だ。
パンツの後ろには尻尾が見える。左右に揺れるそれは耳と同様実際に生えているもののようだ。
なお、魔法少女の蹴飛ばしたドアがすぐ側に飛んでいて驚いたのか恐怖なのかぷるぷるしている。直撃しなくてよかったな。
「の、ノックぐらいせんか!」
「した。」
「したわよ。」
「え、マジ?全く気づかんかったのう……。」
見ればヘッドフォンを首にかけている。透視した時は室内も非常に暗くよく見えなかったがつけていたようだ。さっきの轟音に驚いた時とっさに外したのだろう。
明らかに人間用だが。どっちに装着するんだろう?
「それは勿論人間の方の耳じゃよ。」
思考を読まれた。
「ふふん、お主ら人間ごときの考えている事なぞお見通しじゃ。」
そして挑発された。私も同じこと出来るのに……。
「なんじゃおぬし、何か言いたげじゃのう。」
別に言いたいことはないが、少しムッとしてしまったようだ。
折角なのでちょっと実験しよう。本当に脳内が読めるのであれば何かしら反応はあるはずだ。
「なあ、じゃあこいつの考えている事もわかるのか?」
「え?私?」
「わかるとも。簡単じゃ。」
ちなみに、今こいつが考えていることは「ケモミミ幼女って珍しいし売るところに売れば高値で売れないかしら。」だ。ロクでもねえ。
「読めたぞ!こいつが今考えていることは『恐怖』じゃ!どのようにして偉大なるわしに許しを請うか震えておるのじゃな!」
「1ミリも合ってねえ。」
「ぜんっぜん違うけど……。」
「え。」
「正解は『お前売り飛ばしたらいくらになるかな』だ。」
「あ、大体そんな感じ。」
「え。え。」
「ああ、ちなみに今は『なんか人間じゃなさそうだし人権も無いよね。』だそうだ。」
「うんうん、その通り。」
「ええええええええええええええええええええええ!?」
とても物騒なことを真顔で言う魔法少女に慄き後ずさるケモミミ幼女。
「く、くく……。お主ら、わしをバカにするのもここまでじゃ……。」
プルプル震えながら引きつった笑顔を向けてくる。
「わしはかつて九尾だった大妖狐!貴様ら人間なんぞ本気を出せば一捻りなのじゃぞ!」
「へぇ。」
「と言う夢を見たの?」
「くそぅ……好き勝手言いおって……。妖力が万全であれば、このような姿でもなかったのに……。」
「昔は強かったのか。」
「ふふん、それはもう暴虐の限りを尽くしたものよ。」
「という夢を見たの?」
「現実じゃあああああああああ!」
とうとうキレた。
「流石に堪忍袋の緒が切れたわ!いくら全盛期の姿に戻れずともこの姿とはいえ半殺しぐらいにはできるのじゃぞ!」
そう叫ぶと、ぐぬぬぬぬと唸って何やら力を放出しているようだ。
正直、弱すぎて話にならない。いや、もしかしたら一般人基準だとそれなりの脅威なのかもしれないが……相手が悪かったな。
「ふん。」
なんかよくわからない力のベクトルを感じたのでこっちもなんかよくわからない力のベクトルを送り返したら簡単に消滅した。脳内でベキベキバキボキ、と小気味良い効果音が流れる。
「お、お主、何者じゃ?」
「通りすがりの超能力者。」
「すみませんでした!命だけは助けてください!」
勝てないと知るや否や土下座している狐娘。
こいつ妖力と同時にプライドも失っていやがる。
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