探索

 中はどこにでもありそうな廃墟で、壁には先人たちが残した落書きが数多く残っている他、窓ガラスは全て割られており、普通に危ない。転んだらやばそうだ。転ばないけど。

 山中で周りが森というだけあって昼間なのに中々に薄暗く、雰囲気はバッチリだ。個人的にはオカルチックなものよりも入り込んでる虫の方が怖いけども。

 3階建ての廃墟を魔法少女の提案で上から順に探索していく。せっかく来たんだから全部見て回ろうとのことだ。

 最上階を最後にすると疲れてくると絶対行かないから、とのこと。

 とはいえ客室であっただろう部屋には当然ながら何もなく、また何も出ず、2階の途中からだんだんと徒労感が色濃くなっていく。

 2階も同じような客室で、入り口で見た地図によると1階には大浴場等の施設があるらしい。

「そういえばさ、何か噂とか聞いてないのか?何号室でどういうお化けが出るとか。」

「うーん、特には。なんか毎回バラバラなんだよね。軽く調べたけどお化けが出たとか物が飛んできたみたいな話、全部違う部屋だったの。」

「ほう、それはまた珍しい。」

「あとね、なんか出てくる幽霊も毎回違うの。子供だったり、若い女性だったり、おじさんだったり、おばあさんだったり、武士だったり。何なんだろうね。」

「ん、てことは上から全部回ってるのは……。」

「何かあたり引かないかなって。」

「えぇ……。」

あたりなのかそれは。

 2階も探索を終え、埃っぽさに咳き込みつつ1階に戻ってくる。

 1階は客室とは別の部屋が多く真新しさはあったがどれも暗い上に荒れ放題でよく分からず、彼女が期待するような出来事もない。

 大浴場なんかは露骨に気持ち悪いことになっていた。流石の彼女も嫌悪感を露わにしていた。

 というわけで最終的に、最奥の倉庫を残すだけとなった。

「うーん、特に何もなかったなぁ。ここでラストか。」

「流石になぁ……。噂なんて所詮噂だしな。」

「レビューサイトだと絶対なんか出るって評判良かったのに。」

「それはいい評判なのか?というかなんだそのサイト……。そっちの存在の方が怖いな……。」

 魔法少女が扉を開けるとすぐに違和感に気づいた。この部屋だけ埃っぽさがないのだ。

 薄汚れているのは変わらないが、この倉庫だけあまり時間が経っていないような気がする。

 とはいっても倉庫にあったであろうものは全てなく空の棚が並んでいるだけである。

 照らされた分しか見えないが、音に反響的には中は結構広そうだ。

「流石に何もなさそうだな。」

「うーん、残念。何もないかぁ。」

 魔法少女が中に入りくまなくライトで照らしながら歩いている。時折こちらに向くライトが眩しい。

「あれ?」

「ん?どうした?」

 魔法少女が何かに気づいたらしく声を上げる。

 慌てて駆け寄ると、彼女はこう言った。

「ここ、床がおかしい。」

「というと?」

「ここだけ踏んだ感触が違うの。音、かな。」

ギシギシと床板を踏む魔法少女。

「どれ。」

 私も床を踏んでみる。側の床と踏み比べてみると、確かに若干音が違う気がする。

言われてみれば、といった感じの些細な違いだ。よく気づいたな。

「これ外せそう。」

「持ち上げてみようか?」

「お願い。」

 魔法少女が退いた床板を、ふわっと浮かせてみる。するとその板だけ綺麗に宙に浮き、下から扉が現れた。

「これって……。」

「地下への扉、だよなぁ。」

 2人して顔を見合わせる。地図には地下室なんて書いてなかった。

 扉の先を透視すると地下に降りる梯子がある。

「下に続いているらしい。行くのか?」

「行く!!!」

 魔法少女はこれまでに見たことがないぐらい目を輝かせている。すごく楽しそうだ。

 梯子を降りると少し通路があり、行き止まりに扉がある。扉には『解放厳禁』と書かれたプレートが貼り付けられている。

一応ノックしてみる。コンコン、と音が響くが反応はない。

「……んで、これどうする?」

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