仲良し姉妹

「おはよう。」

ふわぁぁ、と欠伸をして眠たげな魔法少女。

「おはよう。また寝てないのか?」

「うん、ちょっとね。今日も授業中寝ちゃうかも。」

「その言い方、罪悪感はあったのか……。なんで徹夜を?」

「秘密。」

 ぺろりと舌を出してウインクしてくる。いちいちこういう仕草を伴うところが実にあざとい。狙ってやってるわけではなく素でやっているのが恐ろしい。

「ふむ。ここだけの話だが、私は人の思考を読むことができる。」

「……つまり。」

「私に秘密は隠せないぞ。どうせバレるからさぁ吐け。」

「誰にも言わない?」

「安心しろ、私は口が固いんだ。私が秘密を抱えてる からな。というか言いふらせるほど友達がいない。」

「えぇ……。うんとね、実は私、漫画描いてて。それ描いてたらどうしても徹夜になっちゃって。」

「ほう、初耳。……あんまり詮索しないほうがいいかな?」

「うん、そうしてくれるとありがたいかな。」

「誰にだって隠したいことはあるからな。気にするな。」

 魔法少女が漫画を描いてるとは意外だ。まぁ、過去にもクラスの真面目な委員長の脳内を覗き見たらクラスの男子と担任の中年男性教師のガチエロBLを妄想してそれを漫画にするためにネームを考えていた時は思わず声が出そうになってしまったほどビビったなんて経験があるし、それほどの秘密ではないだろう。

 そういえば、委員長と言っただけで女子のイメージになるのは何故だろうか。私もアニメや漫画の影響受けすぎかな。まぁ、その委員長も女子だったけど。綺麗な顔立ちの美人だったのに、真面目すぎて男子が寄り付かないタイプだったな。だからこそ脳内があんなんだったとは思わなかった。すまん、委員長(元)。

 宣言通り、今日も魔法少女は授業中爆睡していた。私も仕事で徹夜してしまい爆睡した。

 目がさめると夕方だった。お昼を食べた記憶がない。

ぐぅぅ、と我ながら見事な腹の虫が鳴る。慌てて辺りを伺っても誰もいない。どうやら誰にも聞かれていないようだ。

 スマホを開くと魔法少女から連絡が来ていた。先に部室に行ってるね、か。

部室に行くと魔法少女と柏台の他に、楓先生と柏台姉……そういえば名前知らないな、とにかくこの2人がいた。

「あ、やっときた。おはよう。」

「おはよう?もう夕方だよ?」

「疲れて寝てたみたいだし合ってるよ。」

いつものノリで会話する魔法少女と柏台。来客2人が若干気まずそうにしている。

「はいはいおはよう。……ところで、お2人は?」

「ああうん、こないだのお礼だって。」

「あっはい!この度はどうもありがとうございました。」

「私からもお礼を言わせてほしいな。ありがとう。助かったよ。」

柏台姉と楓先生が2人して頭を下げる。

「いえいえ私達そんな大層なことしてませんよ。」

「そうですよ。頭をあげてください。」

 歳上2人に頭を下げられるのは流石に気まずい。それは魔法少女も同じようで、手をブンブンと振っている。

「愛菜を助けてくれてありがとう。元生徒会長だし、学校でも問題になってたんだ。いじめが原因なんじゃないかとも言われてね……。」

「気がついたら自分が自分じゃない感覚に襲われて、凄く怖かったの。いつのまにか……本当にあんな事ってあるのね。莎莎嘉も、心配してくれてありがとう。」

「えへへ……。」

 頭を撫でられている柏台。涎が垂れているけど見なかったことにした。うん、2人とも。

 ぐぎゅるるる、と突然また私の腹の虫が騒ぐ。うう、恥ずかしい。

「あー、ごめんね。実はさっきまでお礼のケーキがあったんだけど……。」

「私が全部……食べちゃった。ごめん。」

 確かに机の上には紙の食器があり、ゴミ箱にはケーキのものらしき空箱が捨てられている。

「ん?ああ、別にいいよ。多分その場にいてもあげてたと思うし。」

正直今はケーキのような甘いものよりラーメンが食べたい気分なのだ。

「まぁご覧の通りお腹空いたし、今日は何か食べていかない?」

「いいね!どこ行く?」

「駅前のラーメン屋なんてどう?」

「行く行く!」

 さっき結構な量のケーキを食べたんだろうが、そんな事を微塵も感じさせない食いつきっぷりである。

 これだけ食べた方が大きくなれるのかな。いろんな意味で。くぅ。

「おっと、もうこんな時間……じゃあ、私達は帰るね。」

「失礼しました。妹と今後も仲良くしてくれたら嬉しいです。」

「勿論です!」

「じゃあ、また明日。」

「気をつけてねー。」

 柏台姉妹が帰っていく。なにやら手を繋いでいた気がするが、まぁ仲のいい姉妹なら手ぐらい繋ぐだろう。恋人繋ぎにしていた気もするが、きっと見間違いのはずだ。うん。

「さてと、じゃあ私達も帰ろうと思うんですけども。」

「そう?それならご飯食べに行かない?2人とも一人暮らしでしょ。」

 楓先生からの意外な提案にしばし逡巡するも、断る理由もないので私は同意する。魔法少女も「いいですね!」と乗り気だ。

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