悪霊退治?
「あああああああなた達誰ですか鍵はどうしたんですかででででで出て行ってください!」
普段はクールでカッコいい人なんだろうなあ、と思いながら目の前で慌てふためく姿を観賞する。ギャップが非常に面白い。
「私達は妹さんに頼まれて貴女を救いに来たんです!さぁ!大人しく救われなさい!」
意味不明なことを宣言し柏台姉と対峙する魔法少女。完全に危ない人である。
「ね、ねえ大丈夫?お姉ちゃん、元に戻せそう?」
「任せて!お姉さんは悪霊に取り憑かれているだけだから!3秒で終わる!」
嘘つけ。デタラメな事を……と呆れていると、何やら様子がおかしい。
「チッ、さては貴様魔法少女か!バレちゃあしょうがない!」
ある意味清々しささえ感じるような悪役顔になると、いかにも悪役がいいそうな事を口走る柏台姉。
「この小娘の身体は乗っ取った、私を祓えるものなら祓ってみろ!」
わーっはっは、とおそらく元の柏台姉は絶対しないだろう高笑いをしている。魔法少女曰く悪霊が魔法少女の存在を知っている事に関してはもう疑問すら抱かない。
「は?え、何?どういうこと?ドッキリ?」
しかしあまりの急展開に私もついていけていない。思わず魔法少女に聞いてしまう。
「ビンゴね。孤独死したニートの悪霊に取り憑かれてしまっているんだわ。」
聞いてねえ。というか今更だけど悪霊って何。え、柏台が言ってたことマジだったの?
悪霊ね……悪霊ねぇ。うん。そんなものまでいたのかこの世界。今まで何にも知らなかったんだなぁ私。うん。
「ふはははは!どうした、祓ってひでぶっ」
「あ、できた。」
とりあえず超能力を悪霊らしきものを引き剥がすイメージで行使したらなんか引き剥がせた。なんか白いモヤモヤが浮いている。
「ナイス!これで直接攻撃できるわ!」
「え、ちょ、どういうこと?ま、待って私元ニートだからそんな強くないの許して!」
「問答無用!」
「あと100年は引きこもりたかったー!」
私が引き剥がした半透明の白いモヤモヤを魔法少女が殴ると、それは最低な断末魔を上げて霧散した。一件落着のようだ。
殴っただけで消滅する悪霊が弱いのか、そもそも悪霊って殴れるのか、こいつが特別なのか、私が超能力で具現化でもしたのか、詳しいことはよくわからないし疑問も数多く残るが……私は深く考えないことにした。知恵熱が出るから。
柏台姉はと言うと、気を失っているようで魔法少女がベッドに横にしている。
「お姉さんはじきに起きると思う。もう大丈夫じゃないかな。」
「ありがとう!本当にありがとう!」
柏台が魔法少女に飛びついて抱きしめている。微笑ましい。
なお、足元にはあまり中身を知りたくなさそうなペットボトルがいくつも散乱している。目の前の光景と背景のギャップが酷い。
そして私は見逃さなかった。柏台が、私達が悪霊と対峙している間にそのうちの一本を拾い上げ、自分の部屋に大事そうに抱えて行った事を。……忘れよう。私は何も見なかった。
あ、というかこれ、オカルト退治じゃん。マジでオカルト退治部じゃんこれ。どうしよう。早速活動しちゃったよ。別にどうもしないけど。
やがて目を覚ました柏台姉は多少混乱しつつも無事に元に戻り、取り憑かれていた間も意識自体はあったようでその後の復帰もスムーズにいった。まあ、私もちょっと手伝ったんだけど。
件の日曜から3日後。相変わらず授業中は寝てばっかりの私達は放課後に部室や教室で遊んで帰るだけの日々を送っていた。あの一件以来打ち解けたから、柏台もちょくちょくつるむようになった。
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