第二十三話 どうなっちゃったの? どうなっちゃうの?


瑞希みずき、死んじゃうの?」


 と、わたしは、血が出ていて、はだかんぼのままで……


 真剣な顔で……まじまじと見る智美ともみ先生と、その傍ではたえちゃんが泣いている。

 ……怖くて恥ずかしくて、それらが混ざり合って、


 すると、するとね、


「大丈夫、心配ないから」


 ニッコリと……顔を上げた智美先生は、ニッコリというよりも二カッと笑っていて、顔も近くて、まずは……まずは耳を疑った。グスッ……と、少し治まった妙ちゃんも、もう涙が止まってしまったわたしと、思うことはきっと同じだと思える。



 不安だった。


(わたしの体、どうなっちゃったの?)

 と、その思いが、脳内で広がる最中、その途上で、


「と、智美先生、瑞希ちゃんは、どうなっちゃうの?」


 と、わたしが質問しようと、思いを整えているその途中で、妙ちゃんが先に、わたしが質問しようとしている内容と、酷似していることを質問した。


 で、幻とも一瞬だけれども思えた……それでも、崩れることのない笑顔。

 幻でも何でもなく、現実に起きたこと。


「そのことは、あとで教えてあげるから、

 今は、瑞希さんを保健室へ連れて行かなくちゃね」


「……う、うん」


平田ひらた先生には、わたしから言っておくのから、妙子たえこさんは瑞希さんと一緒に、先に保健室へ行っておいてね。あとで先生も行くから待ってるようにね」


「はい」


「じゃあ、お願いね」

 と、その言葉のあと……


 どうしてか、安心できた。


「瑞希ちゃん、立てる?」


「う、うん……」


 妙ちゃんの手を借り、ゆっくりと立つ。


 そこにはもう智美先生の姿はなく、二人きりの二人だけ……他の子はみんなプールサイドで、もう水泳の時間は始まっている。だけど、わたしは……はだかんぼのまま。


「瑞希ちゃん、顔が赤いけど……大丈夫?」


 と、妙ちゃんの言うう通りで、さっきから顔が熱くて、それに何だか……体がポカポカとフワフワで、まるでわたしの体じゃないみたいで。……それと何だか、堪らなく……


 それで、何と言ったらいいのか、


「たぶん大丈夫と思うけど、何か変なの……」


 すると妙ちゃんは、じっとわたしの顔を見てから、


「もしかして、恥ずかしいの?」


 これが、そうなの?

 気がつけば左手で胸を、右手を下腹部に当てていた。


「う、うん……と思う」


 すると溜息、妙ちゃんが……

 見る見ると、困った表情になっていったの。


 だからまた、不安も不安で、


「あ、あの……どうしたの?」


「瑞希ちゃん、パンツと半ズボンを履いたら血が付いちゃうから……ちょっと恥ずかしいと思うけど、上だけ着て、下はバスタオル巻こうと思うけど……我慢できる?」


 と、言ってくれたので、ちょっと安心して、


「う、うん。我慢する」


「良かった。じ、じゃあ、あたし着替えるから、ちょっと待っててね」


 するとね、段々ぼやけてくるの。

 妙ちゃんの後ろ姿……すすり泣きになっていたようで、妙ちゃん振り返って、


「瑞希ちゃん、またお腹痛くなったの?」

 と、わたしの体を揺する。


「ううん、違うの。……さっきはひどいこと言って、ごめんね」


「あたしの方こそ、ごめんね」


 妙ちゃんは、そっと、わたしの髪を撫でてくれた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る