第2話「異能者組織」
保健室に戻り、宗藤とナツキははイスに座った。刹那は空いてるベッドに入りこんだ。
「物の向きを変える異能ってさっき言ったろ。それの応用で、刹那の影が飛び出てくるからその影の向きを変えて強制的に引っ込めたのさ」
便利な異能だ。
「で、さっきの女性だがな」
宗藤は少し考えてから話しだした。
「俺はある団体に所属しててな。そこは政府公認でしっかりとした異能者の団体だ」
「異能者で構成されてるNPOみたいな組織ですか?」
『異能者』によって構成された組織は全国に多数ある。
会社のように営利目的で活動しているものや、非営利で異能を困った人のために使う慈善組織もある。
『異能者』の組織には独自の認可制度がある。認可されると、警察等の公的機関からの協力要請が出されたりする。
『異能者』が犯罪を犯した場合、警察では対応が難しい場合がある。
ならば『異能者』には『異能者』を。
「うちは営利活動をしてる。基本的には民間の一般人の相談や、異能者の相談などを請け負ってる。認可されてるから政府、警察などの公共機関からの依頼も受けてる。他には『異能者』の保護や異能の制御について教えたりしている。」
「なるほど。さっきの女性もその組織に所属している一人ってことですか?」
「そうだ。唐突なんだが神崎君、君も仲間にならないか?」
「え?」
言葉の通り唐突である。
「さっきも言ったようにうちは認可組織だ。警察等の協力実績もある。もちろんご両親にも説明する」
「僕は学生ですよ」
放課後の部活動に参加とはわけが違う。異能も何かに役立つものではない。
「うちのメンバーには教員免許持ってるやつがいる。勉強面で心配しなくていい。保健室でただ教科書眺めるよりかは有意義かなとは思う。仮に要請があり、欠席する場合出席日数は補填される。社会学習の一環としてな。それに報酬ももちろん出る」
かなり魅力的な提案だ。
「でも僕に捜査とか逮捕協力なんてとてもできませんよ」
「はは大丈夫だ。君は未成年、学生だ。そんなことはないさ。やっても書類をまとめたりとか、情報収集とか後方支援だな。後は刹那の面倒見て貰えればな」
「辞める時はいつでも辞めれますか?」
「当然だ。唯一気をつけて欲しいのは活動中に知りえた情報を漏らさないってころくらいかな」
「……分りました。僕でよかったら参加してみたいです」
「ありがとう。俺は親御さんへの書類やらを取ってくる。今日は普段通りにしていてくれ」
「分りました」
「刹那行くぞ」
「やだ」
「おい……」
しばし、宗藤は悩む。
「分かった。その代わり絶対保健室から出るなよ?神崎君の目に見えるところにいろよ……」
宗藤は端末を操作する。
「ごめんな神崎君刹那をよろしく頼む。正直、驚いてる。刹那が他人に懐くなんてしかも初対面で」
「そうなんですか?」
「あぁ。俺は能力を抑えることができるだけで懐かれてるわけじゃない。刹那に無理強いすると暴走する可能性もあってな。連れていきたいが嫌がるんじゃな」
宗藤は保健室を出て、職員玄関で靴を履き替え連絡を取る。
二時間程度が経過し、宗藤が戻ってきた。
途中刹那が眠ってしまったので黙々と課題の問題を解くことに専念できた。
「お、ちゃんとやってるみたいだな。と刹那は寝てるか」
「これで終わりです」
「そうか、明後日の土曜日空けといてくれるか?」
「土曜ですか?……大丈夫ですけど」
「そうか。それと今日は送ってくよ。親御さんにも話ししたいからな」
「わかりました」
昼になり、お弁当を広げる。
そして保健室のドアがノックされる。
「どうぞ」
宗藤が返事する。
「失礼します新しい先生ですか?」
「あぁ。臨時のな。でどんなご用件?」
「いえ、お弁当食べにきました」
「お弁当?」
「はい。ナツキって保健室から出ないからこっちが行くしかないじゃないですか」
「へーそうか。へー」
宗藤はニヤニヤしながらナツキを見る。
「あ、須田先生からは許可貰ってましたよ」
彼女は佐霧 茜(さえぎり あかね)。ナツキとは幼稚園からの幼馴染だ。
ナツキの異能を理解した上で普通に接してくれる唯一の友人だ。
「私は佐霧っていいます」
「俺は宗藤だ。おそらく一年弱程度しかいないだろうがその間よろしくな」
「はい。ナツキがお世話になります」
「ちょっと、茜なんだよそれ」
「何って社交辞令よ」
「それでは邪魔者は退散しよーかなと」
「えー先生も一緒に食べましょうよ」
「いいのか?コンビニ弁当だぞ?」
「いいですよ。一緒に食べることが大切なんです。あれ?誰?」
賑やかな声で刹那が起きてきた。
「あ……この子は俺の遠い親戚筋で名前は刹那。ちょっと病気と人見知りが激しいから失礼なことしたらすまない。先に謝っておく。赤ちゃん抱いて出勤みたいな感じだな。学校から許可は貰ってるぞ」
「そうなんですか。刹那ちゃんも一緒に食べよ?」
「ほれ、刹那」
刹那に手作りのお弁当を渡す。色鮮やかですごい美味しそうだ。
「えーこれ先生が作ったんですか?」
「違う違う、仲間のやつが作ってくれてるんだよ」
「仲間?」
「俺は一応本職が心理カウンセラーなんだ。で、所属してるカウンセラー団体があって学校や会社などに派遣されるんだ。で、そこには心理学以外の学生のために必要な知識や技術をもってる専門家が複数人所属していてな。栄養とかが専門の先生が刹那用に作ってくれているんだ」
「へー大変なんですね」
茜は話題を変えにぎやかな昼食になった。
「ナツキ、危ないとこよらないで家帰りなね。何かあればすぐ連絡してね」
最近爆発テロ騒ぎが起き物騒なのだ。
「わかったよ。また明日」
「じゃね」
そういうと茜はクラスに戻っていった。
「すみに置けないじゃないか友達……ね」
「違いますそういうんじゃありません」
「えぇ?彼女はいい子だし、それこそ異能だって知ってるんだろ?」
「はい。幼稚園からの幼馴染です」
「そっか。若いっていいなー」
「……すごいおじさんくさいですよそれ」
「どうせおっさんだからな」
午後はいつも通りプリントや教科書の問題を解いた。
放課後になり、指示通り学校の裏門で待っていると宗藤がやってきた。
「刹那は預けてきた」
ナツキは宗藤の車に乗る。
「刹那は普段組織の事務所に泊まっている」
保護した『異能者』なのだろう。
車なのですぐナツキの自宅に着いた。
「ナツキ君のお母様ですか。私は臨時で学校に勤務している宗藤といいます。本職は心理カウンセラーです」
名刺を渡す。
「はい。ナツキがお世話になっております」
長々とした話が終わり、宗藤は帰っていった。書類の置かれた机。そしてようやく母が口を開いた。
「ナツキがしたいっていうなら構わないわよ。認可された組織なら安全だと思うわ。それに、他の『異能者』の人と接することができる機会だもの。でも、危なくなったらすぐにやめなさいね」
「うん。大丈夫だよ」
ナツキの母はナツキに甘い。特に昔の事故があってより甘い。
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