10月

ハロウィン

「トリックオアトリート!」

玄関を開けるなり、彼女がジャックランタンのお面を付けて出迎えてくれた。

「トリックオアトリート!」

なおも言い続ける彼女に、彼はハイハイと適当に答えて家に入る。

「とりっくおあとり~と~!!」

彼女はお菓子の描かれたチラシを指さしながら要求してきた。

「中々アグレッシブなお化けだな。」

「トリートオアトリート!」

チラシが二枚に増えた。

「すでにお菓子のみの要求だな。」

「ぎぶみ~とり~と~!」

トリートしか残っていない。

「もはやハロウィン関係ないな。」

「えーい!良いからお菓子よこせー!」

ついに本性を現した。

「判ったから、これでも食べてろ。」

彼は彼女の頭にプリンを乗せた。

そのプリンを手に喜びの舞を踊る彼女。

「ところで、トリックオアトリート。」

彼が不意に呪文を唱える。彼女はプリンを抱いたままフルフルと首を横に振った。

無言で彼は台所へ行き、彼女の嫌いな食材を並べ始めた。

「トリートでお願いします。」

「うむ。」

彼女のプリンを冷蔵庫に入れ、彼は彼女の好物で晩御飯を作り始めた。

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