9月

お月見

「う~さぎうさぎ、何見て跳ねる。」

三宝を洗いながら、彼女が歌っている。

「うさぎさんは十五夜だけど、私はこれよね。」

彼女の目線の先には、三宝の上にのった団子の写真があった。

「というわけで、私がここまで手伝ったんだから。よろしくね。」

彼女は三宝とチラシを彼に突きつける。

「・・・団子多すぎだろ。」

そのチラシには、五段重ねの月見団子が写っていた。

「これには乗らないな。」

彼のその言葉に、彼女はちょっとショックだった。

「じゃあ・・・出来るだけお願い。」

「はいはい。」

そうは言ったが、どうせ作った分だけ彼女はぺろりと平らげる。それは食べすぎだ。

「じゃあ、出来上がるまでに片付け頼む。」

「了解しました!」

彼は彼女に仕事を与えて台所から追い出した。

「さてと。」

彼は腕まくりをして、団子を作り始めた。

1時間後、彼は三宝に四段重ねになった団子をもって居間に入ってきた。

「待ってました!こちらへ!」

彼女は三宝を置く場所に彼を導く。そこは窓際に小さいテーブルだった。

「今日は月が見えるね。」

「そうだな。」

窓から見上げると、空に月が見えていた。

ひとしきり月と団子の競演を二人で見ている。

次第に、彼女はソワソワとし始めた。彼女にとってはよく我慢したなと彼は思った。

「まだ食べるなよ。味も何もないぞ。」

「うぅ。」

彼女は目の前の月に釘付けになっている。そんな彼女を置いて、彼は台所に向かった。

そして、彼は皿を2枚持って戻ってきた。

「さて、砂糖醤油ときな粉だ。」

彼女の顔に笑顔がこぼれる。

「さて、頂こうか。」

箸を彼女に手渡し、彼は彼女の隣に座った。

「それでは、いただきま~す。」

てっぺんの団子をつまむ彼女。そして、砂糖醤油に付けて口に運ぶ。

「美味しい。」

にこやかな顔の彼女を見ながら、彼も団子をつまんだ。

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