8月

褐色

うだるような暑さの昼下がり、下着姿の彼女がフローリングの中央で溶けている。

「あつい~。」

壊れてしまったエアコンの代わりに、扇風機が全力で部屋の空気をかき混ぜるが、ぬるい空気が行ったり来たりだ。

「服ぐらい着たらどうだ?」

俺は溶けている彼女に服を着るように促すが、一向に動く気配はない。

「全く、だらけるのもここまで来ると清々しいな。」

そう言って、俺は彼女のそばに座る。そして、持って来ていた麦茶を飲む。

「あー、私も欲しいな~。」

「取りに行け。」

「ハグ一回でよろしく~。」

「汗だらけになるな。」

「ハグ一回~。」

どうあっても動く気がない彼女を見て、俺は小さくため息をキッチンに向かった。

数分後、俺は二人分のアイスコーヒーとバニラアイスを手にして、溶け切っている彼女の前に座った。

「あれ?」

麦茶が来ると思っていた彼女は、目の前の光景に不思議そうな顔を見せる。

「これで、ハグ一回分だな。」

俺の言葉に、彼女は今日一番の笑顔を見せた。

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