14 救世主と少年達

 しっかりとした休息は必要だ。それは管理職である銀河京朔も十分に理解している。だが、事件解決目前ともなるとその管理を忘れてしまう。特に家族がいない身においては休日とは必要のないものだった。それを部下らに押し付けるつもりはないのだが、曜日感覚が薄れているのだから指摘してもらわないとつい忘れてしまう。

 気が付けばもう日付をまたいでいた。かれこれ三時間は机の上に座ってホワイトボードを眺めていた。

 数時間前、もはや前日のことではあるが、例のフードをかぶった男は井上撤郎ということで方針が決まっていた。その推測に京朔自身異議はないのだが、やはり海松らの意見が気になった。今川瑛梨子を中心にして展開していった事件の全容がいまだに理解できていないのが何とも情けない。事件発覚からすでにひと月が経とうというのにこの始末である。フードを被った男の正体事態も事件に直結した事案とは言い切れない。それでも繋がりそうで繋がらないホワイトボード上の相関図が複雑に絡み合っているように見えるのだ。

 眠気覚ましのコーヒーを飲み干し床に足を着く。固まっていたせいで体がやけに痛い。

 突然電話が鳴った。

 あまりの急な着信に心臓が飛び出るほどに驚いてしまう。またしても夜中の呼び出しだ。こういう着信は決まってよからぬ連絡なのだ。軽い深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、携帯電話を確かめた。見知らぬ電話番号。つまりこの段階で身内の人間からの連絡であるという線は半減したわけだ。

 恐る恐る着信に応じた。

『あ、もしもし。銀河さん?そうなんでしょ?』

 落ち着きのない女性の声は聞き覚えがあるはずだが果たして誰だかわからない。

「どなたでしょうか?」

 京朔が尋ねてようやく相手は何者かを名乗ったのだった。

『先ほどお会いした内田です。内田聖杜の母です』

 あの一見優しそうに見えたが、毒づいた様や敵意のこもった目を向けてきた女性だったはず。京朔にはそのような印象が強く残っていた。最後に名刺を渡したのはついさっきという表現は間違っていない。だが捜査に協力しようなどという態度には見えなかったから、彼女からの連絡は意外でしかなかった。

「要件は息子さんのことですよね?」

『あんた、聖杜に何したの?』と威嚇するような態度をぶつけてきた。

「何?申し訳ありませんが話が見えません。もう少しわかりやすく話していただかないことにはこちらとしての対応はしかねます」

『聖杜が人を殺したって連れて行ったでしょう。さっき病院から連絡があったんだから』

 急な話の展開に京朔は全くついていけなかった。誰かを連行したり指示した記憶など当然ない。

「病院から連絡とはどんな?」

『誰かをケガさせたとかで警察が取り調べしているって。あんたらが対応しているんでしょうが』

「わかりませんが、病院はどちらだと?」

 京朔の質問に彼女は地区内の私立病院を言った。聞けば今、旦那と車で向かっている最中らしく、声が異様に張っているのはこのためだとわかった。

 京朔は急いで上着を羽織ポケットから車のカギを漁る。ついでにコーヒーカップを片付けようかとも思ったが、なぜだか急にせわしなく思えてきて後回しにした。一刻の猶予もないような鬼気迫る思いが湧き起こってきたのだ。

 たどり着いた病院でまず内田夫婦と出くわした。連絡からそう時間は経っていないのだが、やけにおとなしい。威嚇的な態度とは打って変わったようすだった。

「息子は何をしたのでしょうか?」と椅子に座った奥さんがすれ違いざまに尋ねてきた。

「これから聞いてみないことには何とも」

「違うんです。帰ってきたあの子に警察が来たって話したら、はじめは興味ない様子だったのに、いきなり部屋から出て行ったと思ったら焦った様子で家を出て行ったのよ。あなたたちは何について調べていたんですか?」

「調査内容については事件の捜査としか言えません。それよりの息子さんは我々が来たことを知っているのですね」

「だから言っているでしょう!」と突然奥さんがムキになって声を上げた。

「待て、冷静にならんか」と旦那が彼女を制して京朔に頭を下げて言った。

「未熟な我々の未熟なせがれです。どうか偏見無く息子の話を聞いてやってください」

「わかっております」

 京朔には旦那の親心が痛いほど伝わってきた。歪曲した表現だが奥さんの気持ちもわからないわけではない。京朔は頭を下げたままの旦那の背中に手を当て、ではと一言だけ残し状況確認を急いだ。

 夜勤受付の男に案内され、手術室の前まで来た。香川省三の時とはまた違った緊張感があった。被害者の家族と思われる夫婦が肩を寄せ合って座っていた。ついでに警察関係者と思われる影が数名見えた。

「おやおや、銀河さんではありませんか?こんな遅くまでご苦労様です」

 聞き覚えのある抑揚のない低い声質。男たちの影の中に馴染みの顔が現れた。前髪と光の加減で目元が暗いが視線が合ったことはわかった。

「右野君だったかな。この事件も君が担当かね」

「光栄にも覚えていただいていましたか。おっしゃる通り我々の担当です。お互いたまにはのんびりしたいものですね」

 右野は足を組んだまま京朔を見上げていた。

「何があったか教えてくれないか?」

「その前になぜ銀河警部ともあろうお方が我々の事件に首を突っ込むのでしょうか?こちらはただの生活指導案件です。殺人捜査を扱う警部にはやや物足りないかもしれませんが」

「当事者の少年、内田聖杜はムツバ製菓事件に関して何らかの事情を知っている可能性が浮上している。御両親から緊急の連絡があって駆け付けたわけだ」

「そうですか、そうですか。それは何とも奇遇ですね」と右野は薄ら笑みを浮かべた。その表情から感情が全く読めない。

「すみませんが、お二人はどちら様でしょうか?」

 京朔は被害者の両親と思われる二人に直接問いかけた。すると旦那さんが顔を上げた。

「井上です。息子は撤郎と言います」

 その名前の響きに京朔は通電するような小さな衝撃を受けた。ホワイトボードに掲げられた写真、フードを被った男の画像の下のカッコ内に記した名前と重なる。

「失礼ですが、加害者とされる少年とは面識がありますか?」

「私はありませんが、妻なら……。どうだ?」

 消沈している妻に彼は尋ねたが、京朔の問いかけなど耳には入っていなかった様子だった。話を振られても黙ったまま話が理解できていない。

「加害者の少年は元サッカー部出身だと伺っています。息子さんもサッカーをなさっていませんでしたか?」

「中学からずっとサッカー部です。高校へは推薦で入学できたほどに優秀だったと聞いています」

 話そうとしない妻の代わりに夫が口を開いてくれた。

 京朔はスマホを懐から取り出すと画面を二人に見せつけた。それは例のフードをかぶった男の画像であった。結果にはさほど期待していなかったが、確かめないわけにはいかない。

 すると案の定夫は否定した。ついでに一緒に映っている速水佐敏のことについても確かめてみたのだが、旦那はわからないの一点張りだった。全てがそうではないが大抵の父親と言うのは息子や娘の交友関係にあまり興味がないものだ。最初から当てにはしていない。そして当てにできる母親は不安の色を滲ませて全くと言っていいほどに無反応を繕ったままだった。

「右野君。被害状況はわかっているのかね?」

「頸部を切り付けられたことによる出血、加えて顔中を拳で殴られ、肋骨を数か所骨折している状態で発見されたそうです。場所は自宅近くの空き地。程遠くない路地でケガを負った加害者男性を発見し、同じく緊急手術に至っている。男が加害者であるのは両手の骨折に加え血痕の突いた凶器を所持していたこと、さらに目撃情報と一致する姿であるという複数の状況から判断しました」

 右野は何も見ずにスラスラと状況を語った。組んだ足の角度に一切のぶれはない。ただ淡々と情報を述べたのだった。

「では、動機はまだ聞けていないわけだな」

「思春期の少年らの喧嘩でしょう。動機なんて案外単純だったりしますから」

 右野はやけに冷淡であっさりして話した。被害者家族が傍にいることを忘れているのではないかと疑うほどに面倒臭そうにしていた。

 ほどなくして医師が出てきた。心配そうに見上げる夫婦と眠そうに見上げる捜査員。医師が向かったのは捜査員の方だった。どうやら加害者少年、つまり内田聖杜の手術が終わったようだ。

 運び出される少年はギブスや顔中の処置の痕ぐらいであり、すぐにでも目覚めると言われれば何の疑いもない様子だった。

「命に別状はありません。数時間で目を覚ますでしょう」というのが執刀医の判断だった。

「すみません、息子の方は?」と奥さんが尋ねた。

「事実だけを申しますと難航しておりまして予断を許さない状態が続いております」

 そう言うと医師はもう一度手術室に戻って行った。おかげで夫婦は再び沈黙の中に引き戻された。

「それでは私たちは加害者少年に事情を聴かなければなりませんので、お先に失礼いたします」と右野を中心とした一派は集中治療室へと消え行った。

 内田夫婦のことを思い出し京朔も席を立った。成り行きとはいえ乗り掛かった舟を降りるわけにはいかない。それに胸の奥底にくすぶっている不安がどうしても病院を離れるなと警告しているような気がしてならないのだ。

 京朔は夫婦を探したが、すれ違った場所にはいなくなっている。もしかしたらすでに報告がいっており集中治療室に行っているのではないかとも思ったが、それらしい人物とは擦れて違っていない。帰ってしまわれたとも考えられるので、スマホを取り出した。時刻はいつの間にか朝五時をとっくに回っていることに気が付いた。状況がわからないまま病院にいるわけにもいかず帰ってしまったのだろう。

 京朔は連絡するために一度病院の敷地に出た。それが最低限のマナーだ。

 やはり夫婦は一度家に帰っていたらしい。電話口の彼女は傲慢さが前面で上からの指摘で聞くに堪えない。だから連絡は非常に単調に努めた。状況を説明するだけの簡単なもので後の文句のようなものは一切聞かないうちに病院であることを理由に通話を切った。

 しかし、本当の事件はこの後に起きた。思いがけない事態が起こったのだった。


 手術待合室に戻った京朔の目に映る光景は思いがけないものだった。それは井上が亡くなったなどということではない。一度出て行ったはずの内田が運び込まれていた。

 呆然とした様子で右野貴徳が立ち尽くしていた。シャツの袖に血が付いており何事かがあったのは明らかだった。

「どういう事態だ?」

 声をかける京朔に彼は袖の黒々とした血を不愉快そうに拭いながら呟いた。

「突然血を吐き出し呼吸が止まったようです」

「命に別状はないと言っていたはずだ」

「あの様子だと胸の中の血溜まりに気が付かなかったのでしょう。肋骨が肺に突き刺さり血が器官に詰まったのかもしれない」

 右野の推測を京朔は腕を組んで聞いていた。やけに冷静に話す右野がどうも怪しい。疑りたくはないが過去に香川の件もある。香川の無実を百パーセント信用できても、右野のことはそうはできない。現場となったスーパーマーケットの防犯カメラに少年が映っていたことは報告に上がっていないし、香川がどれだけ悪人であり、少年はいかに正しい存在だったかを印象操作したのも右野の報告によるものだろう。さらに内田聖杜に関しては医師の手が離れ右野に委ねられた直後のことだ。

 京朔は不信に思いながらも再び待合室の座席に座った。右野から目を離すべきではないと悟とるとスマホを取り出した。応援を呼ぶべきだろうかという考えがよぎったが、せっかくの休日にただの推測で呼び出しは憚れる。だが一度芽生えた不審感をそう簡単に拭い捨てられない。応援が必要だが確信が持てない。葛藤を抱きながら同じく腰を下ろす右野を見張った。

 そして来たる宣告。

 ついに京朔は仲間の呼び出しを決意した。寒空の下白い息と妙に熱くなっている頬の熱を風にさらし応援を要請した。

 そして最もつらい瞬間。遺族となった夫婦からはお叱りの声は一切ない。驚きのあまり言葉を失っている様子だった。ほんの数分前には想像もつかなかったことだけにその衝撃は計り知れない。

 宣告から数分後、今度は井上撤郎の執刀医が家族の前に現れた。

 深刻そうな様子から一層夫婦の不安感は募っていた。

「手術は成功しました。首のケガからかけた刃先を取り出すことは成功しましたが……」とまず初めに医師は述べた。だが様子がおかしい。それは不吉の前兆だと身構えるほどだった。

「ただ、二度と自分の足では歩くことができないでしょう。脊髄に受けた重大かつ深刻なダメージで下半身不随が予想されます。CTを見る限りでは我々には手の施しようがありません」

「そんな……」と母親は絶望をあらわにした。

「お待たせしました」と空気をぶち壊すようにして海松がやってきた。夫婦が泣き崩れてしまう直前であった。

 京朔は小さな怒りを滲ませ人差し指を立てて外にいるように指示した。まずいと察知した彼は静かに外に出た。

 そのうちに患者が運び出され集中治療室に押し込められた。彼の場合も目覚めには数時間を要するというのが医師の見解だった。

「それでは失礼します」と一段落したところに見切りをつけ右野ら捜査員は病院を後にした。

 遺族の説明やらいろいろな面倒ごとを押し付けるつもりなのか、彼らは後ろ髪を引かれることなくさっさといなくなってしまった。

 待合室の外ではすでに部下らが集まっていた。特に結華はスッピンのままで焦ってきたことが伺える。娘さんに悪いことをしたなと後悔したりもした。

「緊急と言うのはどのような要件でしょうか?」

 京朔の後悔など意にも留めず、真っ先に結華が尋ねた。

「内田聖杜が亡くなったのは聞いたな。このままだと彼を殺したのは被害者の井上撤郎ということになりかねない。しかし、俺は犯人を右野貴徳だと思っている」

「右野さんですか⁉」と未だに眠気眼の三田が聞き返した。

「担当医に訊いてみないことには何とも言えんが、どうも怪しい。香川の件も一枚噛んでいるというのが俺の予想だ」

「同僚を疑うのですか?」

「香川だって同僚だろう?」

 三田の問いに京朔は何でもないように切り返し、夜な夜なホワイトボードの前で辿り着いていた胸の内にあった奇怪ともとれる説を初めて明かした。

「それに相関図にない繋がっていないようで繋がっているのは俺たち警察の存在だって気が付いたんだ。ボードでつながれた線のすべてと繋がっているのは何を隠そう捜査している俺たちだって。すると速水佐敏と内田聖杜は同じ学校の生徒で同じ部活でつながり担当捜査官は右野貴徳だ。そう考えると内部にいる可能性を否定できなくなる」

「つまりムツバ製菓事件についても警察内部による犯行だというのですか?」と結華が聞いた。それは反論として聞いているのではなく、単なる疑問として尋ねているようだった。

「そこまではわからない。だが、俺にはどうも香川が事件を捜査している警察官だと知りながら襲われたのだと思えてならないのだ」

「わかりました。俺が右野貴徳の周辺を洗い出します」と無口に徹していた海松が理解を示した。言葉にはしないが海松の胸の内でも右野を怪しんでいたのだということが窺えた。直感は自分以上に優れていると京朔は評価していた。

「俺もその方針で行くのなら構いません。何をするべきでしょうか?」

「私もそのために来ましたから」と三田に引き続き結華も異存はないらしい。

 忘れてはならないことだが、彼らは休日返上で来てくれている。部下たちに恵まれたことが京朔にはたまらなくうれしかった。

「大丈夫ですか、警部?」と三田が覗き込んでいた。

 指摘されて初めて気が付いた。知らぬ間に変な涙が出ているのだ。

「徹夜の影響だろう」などと誤魔化してみるが、部下たちにはお見通しのようでそれ以上のことを聞こうとはしなかった。

「あの~。お呼びしましたか?」

 急に背後からか細い声で声を掛けられ、思わず飛び跳ねそうになりながらも振り返ると京朔の陰にすっぽりと治まるほどの小柄な看護師が立っていた。

 あまりのも突然、声を掛けられたので自分が何を所望したかわからず声を失っていた京朔に彼女も困惑している様子だった。

「警部。亡くなったという少年のことではないでしょうか?」とフォローを入れたのは結華だった。

「そうだった。医療ミスの観点で調べてもらおうと思ったのだ」と鼻の頭を掻いて看護師を見た。

「医療ミスなんて、そんな……」

 病院側としては人聞きの悪い言われ方をされては困るのだろう。彼女は京朔のその一言に緊張感を滲ませた。

「誤解しないでください。我々は医療ミスを疑っているわけではなく、殺人の可能性を」

「殺人!こ、こ、困ります!殺人病院なんてひどい言い方しないでください」

 困ったのは京朔の方だった。どうも話が噛み合っていない。それに看護師は敵意を向けるどころか怯えているのだ。

「じゃあ、俺もう行きます」と困惑のどさくさに紛れて海松がいなくなった。

「頼むよ」とだけ添えて京朔は難しい顔をした。どうもこの小柄の看護師とは波長が合う気がしない。

「こちらの警部が言いたいことは術後の急変について詳しくお聞きしたいだけです。いったい何があったのかを客観的に示すデータなり画像となる証拠を提示して説明してくださいと頼んでいるだけです。ミスだったり殺人ということはいったん忘れて、何があったかの事実だけを示せるものがほしいのです」

 代弁した三田に彼女はようやく落ち着きを取り戻した。

「証拠……例えばカメラならありますよ」

「どこのですか?」と思わず京朔は彼女の両腕を掴んだ。


「これはどういうことですか?」

 パソコン画面に映し出された映像に指をあてて京朔は尋ねた。その指の先には患者である内田の胸部に手を掛ける右野の姿が映し出されていた。

 カメラ映像として提示された映像は集中治療室に二台あるカメラのうちの一台が映し出した映像だった。天井に設置されたカメラの角度は二台でちょうどすべての患者のベッドを捉えることができる位置にある。そして対象となる内田聖杜のベッドは画面の奥から二番目、部屋の中央に位置する。

「応急処置をしているようにも見えますね」と三田が指摘した。

「急変した時間と映像の時刻を比較できますか?」

 京朔はパソコンを操作してもらっている事務長と名乗る男に訊いた。

「可能だと思います」と言うと彼はおぼつかない手つきでマウスを操作した。

 画面に表示されている映像のウィンドを下げ、患者のバイタルチェック機器にアクセスを試みた。時折、そばにいる若手事務員に尋ねながらようやく内田聖杜のものと思われるデータの前までたどり着いた。

「これですね」と汗をぬぐいながら彼はその表示欄をクリックした。

 傍で見ていた京朔らはすぐに出てくるデータだと思って見ていたが一向にその情報が画面に現れない。

「読み込みが遅いのかな」と事務長は何度もマウスを叩いてみるのだが表示されない。

「これ間違えたかな?どう?」と若手の助けを借りた。

 彼も同じくカーソルを当ててマウスを叩いても反応はない。そこですぐ下の情報にアクセスしてみた。それは内田聖杜の前に運ばれて来たであろう70代のおばあさんのものだったのだが、すぐに表示させることができた。

「理由はわかりませんが、消されていますね」と言うのが彼の意見だった。

「消されているとは故意に消されたということか?」

「恐らくは。ほらここ、よく見たらノーデータって表示されている」とカーソルで示してくれた。

「こんなことあるんですか?」と即座に事務長に尋ねた。

「いえ、そのようなことは、今までなかった……どうでしょうか?」と他のスタッフに尋ねるも彼らは適当に首を振るだけで無関心だった。

「データを消せるのはこの端末だけですか?」

「そんなこと出来るとは思ったことがありません。削除機能があるなんて聞いたことがないです」と事務長はツールバーにカーソルを当ててチェックしていたが、答えは変わらない。代わりに出てきた監視カメラの映像の静止画像だけが残されたままだった。

 映像の右野は明らかに患者の胸に手を当てているが、それは袖に付着していた血痕から明らかなのことだ。その問題はこれが急変後かどうか、わからないことである。思わぬデータ紛失に足元を掬われたのだった。

 執刀した医師の見解ではミスはなく肺の損傷という見落としはなかったと胸を張って答えた。そもそも運ばれてきたのは井上撤郎同様に複雑骨折と脳内出血の危険があったからだった。胸部にもいくつもの皮下内出血や肋骨の骨折は確認できたのだが、肺につき刺さるというものは無かったらしい。

 それはレントゲンなどによる証拠で証明できるだろうが、だからと言って右野が関わっているかどうかまでは的確な判断ができないのだ。

「刑事さん、井上君が目を覚ましたようです」とわざわざ内線で事務室まで連絡が届いた。

 事務員が無関心すぎることを覗けば協力的だった。医療ミスなどとは噂でも立てたくはないのだろう。

 病室では目覚めた少年と家族の複雑な感情が流れていた。動かなくなった下半身の憎らしく見つめていたのだった。それは絶望的なまなざしに他ならない。

「失礼しますが、事件について話せるかな」

 京朔はできる限り優しく話しかけた。だがやはり少年からは返事は返ってこない。

 なので京朔は両親に病室を出て行ってもらい独り言のように話し始めることにした。

「君をこんな目にしたのは元同級生の内田聖杜君だ。彼はどういうわけか君に殺意を抱いていた。だから彼は凶器を用意し、君に切りかかった。だが刃は脆くすぐに刃こぼれを起こし使い物にならない。出血する君を見ても飽き足らず彼は殴りかかった。彼が昔後輩に暴行を振るったように。それでも君は負けなかった。彼に必死に対抗したね。やられっぱなしはポリシーに反するというものだろう。自分ほどではないが彼を打ちのめしたんだ。彼は君に反して打たれ弱い。君への十発は彼には一発で効いた。だから彼はその場から逃げ出すことができたんだ。そして君は打ちどころ悪く脊椎を損傷させてしまい、その場で敗れてしまったのだろうね」

 聞いていただけの少年は涙を流していた。目元を拭き取る姿は京朔の目にはまだただの子供にしか見えない。

「こんなことを言っては何だが、君はいかれる暴君を追い払った。結果的に彼は死に君には命がある」

 その言葉に少年は頭を上げた。目に困惑を浮かべていた。そして口を開いた。

「死んだってどういうことだよ。聖杜が死んだ?」

「そうだ。彼は結果的に死んだ。どういう理由なのかはわからないが彼は君に殺意を持て立ち向かった。以前に暴行事件で学校から退学処分を受けたにもかかわらず、彼はその暴力を友達であったはずの君に向けた。だが、彼は返り討ちにあった。本来なら死ぬはずがなかった彼は君ではなく別の男に殺されたと私は見ている。何か話す気にはならないかな?」

 少年は京朔の言葉に大きな舌打ちをした。そしてシーツを掴み何度も太もものあたりに拳を振り落とした。音は立てても太ももには反応はない。それが悔しいのだ。

「思うに君は内田聖杜を怒らせる何かをしたのだろう?殺意を抱くほどの何かを」

「言いたくない」と少年は急に大人しくなってぼそっと呟いた。

「はあ~」とため息をついた京朔はポケットからスマホを取り出し例の画像をかざした。すると彼は明らかな動揺を見せた。

「この男は君か?」とすかさず尋ねた。

 京朔の問いかけに少年は俯いた。明らかに視線を逸らしたのだった。

「一人は君も知っている速水佐敏だ。知っていると思うが彼は死んだ。隣の少年は須藤欣悟だ。彼もまた殺されたというのが我々の見解だ。そして残るはこの頭を隠した男だ。これは君ではないかという見解が現在最も有力視されている」

「俺じゃない。人違いだ」

「だが、誰か知っているんだな?」

 少年は生唾を飲み込んだ。その顔は明らかに何かを知っている顔つきだった。

「君はおそらく内田聖杜から暴力を受けることを当然の報いだと思っているのだろう。半身不随になるほどの罰を君は受けたんだろうが、社会はそんなに甘くはない。たとえそれで罰を受けた気になっても裁くべき罪があるのなら俺たちは必死になって証拠を上げて罪を償わせる。協力的かどうかで心象は変わる。少しでもいい、ヒントをくれないか?」

「メールが来たんだ」と井上撤郎は口を小さく開けて言った。

「メール?それはどんな?」

「救世主だかを名乗る人からのものなんだけど、大切な情報が抜き取られたとかいうものだった。最初は何のことだかわからないから無視していたんだよ。だがその添付画像は明らかに俺が撮った写真だった。それだけじゃなく文字のやり取りの画像も添えられていた」

「いったいどんなものだ?何かやましいものだったのか?」

「まずいものだよ。救世主はそれを忠告してくれたんだ。何の対策もしなければトラブルのもとになるって。それには流出の原因も書かれていたよ」

「何だ?」

「RーFC。『四神霊獣大戦』の開発元だって」

「アールエフシー?シシン?」聞きなれない言葉に京朔の手にしていたボールペンが止まる。ただ分かった開発元という言葉だけはしっかりと記入した。

「スマホのゲームアプリだよ。とにかくそこから情報が流出しているから対策するように催促されたんだ。開発者の電話番号が書かれていたけど不気味だからRーFCにメールして確かめてみたんだ。そしたら確認するって返事が来たんだが、確認作業に時間がかかるからって待たされたんだ。そのうちメールである要求が来た。差出人は救世主だった」

「救世主からの要求か」

「ああ。そうだ。従わなければ漏洩した情報を関係者に流すと脅迫されたよ。それに成功には報酬もあった。だから……やった。その時に須藤と知り合った」

「どんな要求に従ったんだ?」

「それは……」と急に井上は口を真一文字に結んだ。

「まあ、いい。その要求に二人で答えたわけだな?」

「二人じゃない。速水も一緒だった」

「速水佐敏か?それは君が引き入れたのか?」

「違います。あいつも同じく救世主からの依頼を受けたって話でした。でも速水のおかげで気分が楽になった。だから罪悪感は薄れました。それに報酬は約束通りにメールで送られてきました」

「メールで送る?現金を?」

「通販で使える電子マネーですよ」

「電子マネーか……」と京朔の呟く声は舌を巻いていた。

 昔なら手口は直接人同士が会って手渡しをするか、駅のロッカーに預ける、郵便や宅配で送る、口座に振り込むなどであった。それを電子マネーで解決できてしまう世の中なのだ。思わぬ手口に京朔は頭を悩ませた。

「その後にRーFCから追加の連絡がありました。でも俺たちはもはや気にならなかった。誰かの依頼で報酬が手に入るんだし、もう情報漏れどころの話ではないですから」

 井上撤郎の曖昧な証言はすでに京朔の中では確信的なものに聞こえていたことは言うまでもない。関与したのが須藤欣悟であり、彼は父親の黒いワゴン車を運転できる。

 考えを整理している京朔を脇に井上は話を続けていた。

「情報漏れの証拠はないので何かの間違いだというのだが、できれば状況を調査したいというものだった。漏れた情報を具体的に教えてくれというので俺は無視した。見ず知らずの他人に教えるわけにはいかないし、もはや過ぎたることだから。無視を決めた数日後、学校で奴に捕まったんだよ」

「奴?誰のことだ?」

「二年の葉金罫太という男だ。ある後輩とよくつるんでいた男だから顔は知っていた。あいつは自分がRーFCの開発者だと言って俺の前に現れたんだ」

「ハガネケイタ……」と京朔は即座にカタカナでメモをした。新たに浮上したこの名の人物こそが事件を解決に導く存在ではないかと長年の刑事の勘が言っていた。


「失礼します。罫太君はいますか?」

 警察手帳をいつものようにインターホンにかざした。カメラが付いたインターホンが増えたおかげでこの手の聞き込みはやりやすい。

 すぐに硬い表情の母親が現れた。いかにも論理的な理系っぽい顔つきの女性だった。眼鏡の奥の目は鋭く、保護者会の代表でもしているかのような気品のようなものも感じられる。

「どういったご用件で?」と訝し気な様子をするのはどこも一緒だ。

「ある事件の調査で息子さんの名前が浮上しました。可能でしたらお話をさせていただきたいのですが……」

 京朔の予想に反し彼女は快く自宅に招き入れた。

「あの……うちの息子がご迷惑をおかけしたのでしょうか?」廊下を案内しながら彼女は尋ねた。

「申し訳ありませんが我々もわかりかねておりまして」

「そうですか……」と呟いた眼鏡の奥は光の加減で反射してよく見えないのだが、彼女の声からは母親なりの不安感を醸し出してことは感じ取れた。

 綺麗なリビングに案内すると彼女は急いで階段を上って行った。

 通された一行は椅子に腰を下ろし静かに待っていた。するとすぐに階段を降りてくる足音が聞こえ彼らの前に少年が姿を現した。少年は母親とそっくりな目をしていた。鋭い目に眼鏡、いかにも賢そうな精悍な顔つきだった。

 挨拶をそこそこに京朔は要点を尋ねた。

「RーFCとは君のことかな?話によれば君がゲームを作ったらしいね。名前はえ~と、シシンレイ……何とかという」

「四神霊獣大戦ですね」と少年は気負う気配はなく堂々と話した。

「そうそれだ。君が作ったということで間違いないね」

「作ったのは作りました。でも正確には僕はプログラムを組んだだけです。RーFCは僕らのチームの総称であって、ゲームは僕らの表現物です」

「表現物か。面白い。メンバーと言うのを教えてくれないか?」

「もちろん話しますけど、その前にこの聞き取りに何の意味があるか教えてくださいませんか?」

「それはそうだな」と京朔は井上撤郎から聞いた証言をそのまま説明した。救世主を名乗る謎のメールに始まり、情報漏洩、要求と報酬、そして十二月初旬に正体を明かし井上に接触したこともだ。さらに例のフードを被った男の画像を突き付けた。

 彼は一切口を挟むことをせずに淡々と話に頷いた。そして画像の正体を疑う問いかけにさもあっさりと自分であることを認めたのだった。

「これは僕です。そして速水先輩と須藤とかいう男」

「なぜこの二人と一緒にいるのだ?」

「速水先輩に呼び出されました。というのは前々から情報が抜き出されているという苦情を受けていたんです。そのたびに家で確認するのですが、何事もないんです。だからと言って何もないと思っていませんでした。何者かが情報に入り込んで潜伏している。そう睨んではいるものの、被害そのものを知りませんから気になっていたのです。だからゲームアカウントから井上先輩であること突き止め、直接どんな被害に遭ったのか学校で問い質したのですが何も語ろうとしないので、先輩の提案で速水先輩も被害者だからそっちから聞くようにと。それで連絡先を教えてもらったところコンビニで待ち合わせしました」

「疑問には思わなかったのか?」

「もちろん思いましたよ。まずいことなんじゃないかって思ったのであえてフード付きのパーカーで会いに行きました。そしたら速水先輩のほかにガラの悪い男がいたのでビビりました。それが須藤であることは自分からそう名乗ったので過去に友達が教えてくれた男だとすぐにわかりました。二人は突然場所を変えようってことになって、車に乗せられるとコンビニから近くのスーパーに向かい、買い物するとか言っていたけど、速水先輩は時間だと言って出て行きました。その間、速水先輩が盗み取られたという情報に関してはわからなかったのですが、須藤という男の存在で理解しました。脅迫材料になるようなやましい情報が盗まれたんだって」

「なぜかな?君はその友達から須藤の何を聞いていたのだ?」

「彼は盗撮犯だって」とまっすぐな目で葉金罫太は証言した。その目には疑いというものが一切感じられない。純真のほか何ものでもない様子だった。

「君、その話、誰から聞いたの?」と思いがけない食いつきをしたのは結華だった。

「同じ学校の式澤龍一です」

「やっぱり」と半ばため息の込められた口調で前のめりだった体を椅子に据え直した。

「その話は龍一君からとは……」

 驚いている警察の一同に少年は理解できていなかった。

 その様子を見ていた三田が「この人、龍一君のお母さんです」と手を添えて説明した。

「マジっすか!」と少年は初めて大きな声を上げた。

「これはこれは挨拶が遅れました」と遠くで見守っていた罫太の母親が結華の傍まで来て頭を下げた。

 それには結華もすかさず頭を下げて応えた。二人には遠からぬ縁があったことを初めて知ったのだった。

「説明が遅くなりました。昨夜龍一が話してくれたんです。写真を見せた時、おかしな反応をしたものだから何かと思えば写真の男に見覚えがあるって。それが須藤欣悟であって、罫太君が今言ったように彼は盗撮犯だって。でもやっとわかりました。龍一はきっとこのフードの男が罫太君だと気が付いていたんでしょうね」

 結華の説明に京朔はただ笑って聞いていた。龍一を小さいころから知る京朔には彼が苦悩して告白する様子がありありと想像が付いたからだ。

「式澤君……彼もRーFCのメンバーです」と言うと罫太は突然立ち上がり部屋を出て行った。どうやら自室から何かを取りに行ったのだ。

「そう言うことね……」と結華は呟いた。

 この半年間龍一は部活に参加せず、こそこそ勉強以外に何かをやっているようだった。この少年とゲーム作りをしていたということは信じられなかったが、何かに打ち込んでいる姿は想像ができる。息子がメンバーであるという少年の主張に妙に納得できた。

 そこに携帯電話が鳴った。結華に来たものだった。

「失礼します」と一度断りを入れ、窓のある部屋の隅へと移った。

 結華が移動しているところ、自室から少年が戻ってきた。手には広げたノートパソコンを抱えている。

「お待たせしました。これが僕らの作ったゲームの管理者プログラムです。正常に動いています」と言って彼は画面を京朔と三田に向けた。

 専門的なプログラム言語が並べられており、未知の領域である彼らにはこれがいったいどのような意味があり、どのように動くなど全く理解できない。ゲーム画面とはかけ離れたデータだけの世界が繰り広げられていた。

 すると急にそのパソコンから音がした。メール着信の音だった。

 少年はメールアドレスを一度確認すると展開せずに削除した。

「はい⁉家がですか!」と少年がメールを削除したと同時に窓辺の結華が大きな声を上げた。

「は?嘘だろ⁉」と今度は少年がパソコン画面を見つめて声を上げたのだった。

「何?どうしました?」と三田は結華に訊いた。

「何?どうかしたか?」と同時に京朔は少年に尋ねた。

「うちが火事にあったそうです」

「ゲームが完全に乗っ取られました」

 同時多発した問題に京朔と三田はお互いに顔を見合わせた。瞬間的に二手に分かれて対応することにした。

「ゲームが乗っ取られたとはどういうことです?」と三田が少年の担当を引き継いだ。

「やられました。さっき送られてきたメールは展開しないで削除した場合に広がるトラップ型ウィルスだったようです。プログラムがドンドンと書き換えられています」

 必死にキーボードを叩いて応戦しているようだが、苦戦を強いられているだろうことは見て取れる。

「家が火事とはどういうことだ?まずは落ち着こう」と京朔が消沈しへたり込んでいる結華のもとに向かった。

「大家さんからの連絡なのですけど放火にあったそうで消化活動中ですって」

「子供二人は?連絡してみた方がいいぞ」

「龍一は今日デートだからいないと……冴紀!」と震える手でスマホ画面をタップした。あまりのおぼつかなさにひと工程がやけに重たい。

「見てください。生意気にもハッカーから連絡が来ています。救世主ブリトラ……こいつが先輩らの言っていた奴か」と話す声が震えていた。三田の目には少年の手先が震えて見えた。事態の深刻さはそれだけでも伝わってくる。

『救世主VRITRA』と名乗る人物からのメールは以下の通りだった。

『プログラミングご苦労様。長いこと目を付けていたが、もう良き頃合いだ。だけど、君は優秀だからこんな状況下においても二次キーを掛けているんだよね。どうだろうか?この際だから私のところに持ってきてくれないか?すべては正しき社会秩序の実現のために。ついでに報告するけど、先行アップデートというものをお先に実行させていただきました。カギは三つあるんだよね。葉金君と……あと二つはわかっているよね?』

 結華は鳴らし続けていた電話番号は家の固定電話の番号だと気が付いた。火災で使えなくなっているという可能性を忘れ必死に待ち続けていた。そんな自分のボケに笑えない。気が付いてすぐに娘の携帯電話にかけ直した。だが電源が入っていない。コールを待つこともできなかった。そして最後の望みにかけた。

 コールは続いた。いつもなら諦めて切ってしまう長さを待った。すると電話は繋がった。

「龍一、無事?」

 尋ねる結華に龍一は『何とか』と冴えない返答をした。

 まさか火災から逃げ出したのかと頭をよぎったが、何か勘違いしているらしい。それに奇跡的に娘が傍にいるというのだ。だがそんな娘も具合が悪いという。

 二人は街中のショッピングモールにいると言うので迎えに行くことを約束したのだった。

「式澤、龍一君はモールにいるんですか⁉」

 口を挟んだのは葉金罫太だった。

「ええ。妹と一緒だって。大変そうだから迎えに行ってきます」と彼女は真っ先に葉金家を飛び出ようとした。

「俺も連れて行ってください」

 既に玄関で靴に足を掛けていた結華に罫太が願い出た。

「ありがたいけど、悪いわ。それにまだ警部に説明していないことがあるんでしょう?うちの事は気にしないでいいから」

「待ってください。これです」と罫太はパソコン画面を向け、説明を続けた。

「先行アップデートというものを乗っ取られました。それは簡単に言えばGPSを組み入れたP2Pを可能にする新たな機能なんですけど、俺にはまだ検討段階で実現なんて程遠い技術でした。それを救世主と名乗るハッカーが組み入れました」

「つまり?」

「ゲーム画面内でプレイヤーがわかります。龍一の居場所もわかるはずです」

「葉金君、私の車に乗って」

「はい!」と罫太は快活な声で返事をした。

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