【KAC6】CUP-MEN ~世界最後の三分間~
@dekai3
ラスト・ミッション
ガサガサッ ゴゥン ゴゥン
大きな音と共に体が傾くほどの揺れが始まり、司令部に居る誰もが息を呑む。
「い、今のは…」
「シッ。偵察班の連絡を待ちなさい」
ここはCUP内容物中央司令部。
彼らは購入後にもう何ヶ月も放置されており、賞味期限も先週切れてしまったCUP-MENだ。
この国の人間はCUP-MENを保存食として購入する事は少なく、彼らのように賞味期限が過ぎてしまったCUP-MENは購入した事を忘れていたという場合が多い。
大概の場合は賞味期限が切れた物はCUP-MENであっても捨てられる事が多く、この司令部も廃棄されるのが今か今かと怯えながら待つ者が多かった。
しかし、CUP-MENは賞味期限が切れていても食べれる物だ。そして彼らは賞味期限が切れたからと言って保存や管理の手を緩めたりはしない。そう、廃棄が決定するまでは。
「とうとう俺らも終わりですかね」
「あーあ、可愛い女の子に食べられたかったなぁ」
静まり返った司令部に、一般管理班員の愚痴が響く。
本来ならば先ほどのようにその呟きを止めるべきだろうが、偵察班を待つと言った戦術作戦班長は今度はそれを止めなかった。
ここに来ての急な振動により、とうとう廃棄の時が来たのかと怯えている職員は何名か居る。寧ろほぼ全員と言っていいだろう。
そんな彼らの最後の呟きぐらい好きにさせてやりたいという気持ちもある。だが、万が一、いや、億や兆に一回という可能性であっても、自分達が産まれた意味が分かる時が来るかもしれない。必要があるかもしれない。
その時が来たら、彼らも愚痴る事は無く…
プルルルル
来た。偵察班からだ。
「はい、はい、了解。分かりました!」
それを司令部通信班が受け、直ぐに大声を挙げる。
「カップ上部の偵察班より入電!『我ラ、食サレル時、来タレリ』!『我ラ、食サレル時、来タレリ』!対象は現在お湯を沸かしている模様!」
「お、おおぉ!」
「まさか、本当なのか?」
「ふっ、遅かったじゃないか」
「ああ、全くだ」
それを聞き、火が付いたかのようにざわめき出す司令部。
だが、作戦班長は険しい顔をまだ崩さす、通信班に確認をする。
「見間違いや飲み物の可能性は!?」
「ありません!箸とおにぎりが用意されています!!」
「おにぎりなのに箸があるって事はほぼ確実か。分かったわ、直ちに警報を!保存班と偽装班への連絡は!?」
「同時に通達しています!各班長から連絡有り!」
「オッケー。じゃあやるわよ。私達の一世一代の大仕事を!」
ウウーウー ウウーウー ウウーウー
響き渡る警報。灯る照明。動き出す班員。慌しい動きながらも彼らの顔には笑顔が見える。
賞味期限が切れてもいつか出番があるかもしれないと、少しずつエネルギーをやりくりしていた甲斐があった。
作戦が終われば自分達に明日はない。だからこそ、ここで全てを惜しみなく使う。それが自分達が産まれた意味。与えられた使命。望まれた役割。
「さあ、最後の三分間を始めましょう!!」
ここに、
全てはおいしく食べて貰う為に。
【KAC6】CUP-MEN ~世界最後の三分間~ @dekai3
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