第3話

 週末がきて朝にサトミちゃんのアパートの前に待ち合わせした。

「おはよー」

「おはよう」

「昨日の夜、ダイキくんと少し話した。彼ともう一人の友達と池袋駅に会おう」

 サトミちゃんは3人の女性の中ダイキくんの連絡先が持っているから、今日のお出かけに誘う番は彼女に回した。でも、私の依頼をそんなにあっさりと受けるかと思わなかった。

「ダイキくんはあからさまにチズちゃんに興味あるみたいよぉ」

 駅へ出かけようと彼女は手を頭の上に伸ばしてあくびをかみ殺した。

「彼の友達はどんな人か気になる。ダイキくんよりイケメンなら責めないとミサちゃんが盗むかもしれない」

 私は唖然と彼女に見つめた。本当にイケメンがダイキくんと一緒に来たら修羅場になるか、と自分も可能性あると思った。けれど、ちょっと不思議じゃない。この2人はいつもダイキくんについてかっこいいとかイケメンとか言うけど、問題なさそうに私に譲る気があるでしょうか。この私はダイキくんと話したらこの2人に本当にいいのか、と疑った。

「そういえば、どう?」

 サトミちゃんは私の前に少し走って私が彼女の服装を見えるように回った。

「すごく可愛いよ」

 本当にすごく可愛い、と思った。明るい青のワンピースの上に赤いカーディガンが着ていた。普通の学生制服だけじゃなく、私の今着ているジーパンと半袖シャツよりも可愛い。

 彼女は私の感想を聞くと満足そうな顔で私にニコニコと笑った。男性たちもきっと同じもの言う、と思った。

 駅について、池袋行きの丸の内線に乗り込んだ。

「近いからあと10分ぐらいだと思う」

 席に座り込んだ時、サトミちゃんが私に教えた。そんなに近いならどうして座ったか、と思ったところ、私が彼女の足を気づいた。ハイヒールだ。そして、普通のハイヒールじゃなく、スチレットだ。私は履いたことはないけど、見るだけで一日中ずっとその靴で歩いたらかなり厳しいとわかった。

「大丈夫か?」

 私は彼女の足に指示した。

「あ、大丈夫大丈夫。休みの日普通に履くから全然平気だ」

 嘘だと決まっているけど、この話を置いた方がいいと決めた。きっと、男性たちのために履いている。けれど、男の子はこんなものよく知らないから、意味はないと思った。

 男性たちの代わりに私は今日一日中彼女のことに気を付けると決めた。出来れば出来るだけ彼女に席を譲るし、階段も避けるし、いっぱい買ったら鞄も手伝う。サトミちゃんが私のためにせっかくダイキくんを誘ってくれたから彼女も男性にモテるように頑張る。

 丸の内線の終点、――池袋駅に降りて待ち合わせの出入口を探しに行った。私はどこか行くか全くわからなく、人込みの駅に圧倒された。息苦しかった。サトミちゃんは何けなく駅に進んだけど、人が多くて私からどんどん離れていった。いつのまにか彼女の姿はもう見えなくなった。

 私は必死に追いかけるように頑張ったけど、どうやっても人の波を突破できない気がした。ようやく、私の足が止めた。目から涙が溢れてきた。女子高生は駅の真ん中に1人で泣いているのは情けない光景だとわかったけど、自分の涙が止めらなかった。足も動いたらどこへ進めばいいかわからない。サトミちゃんを連絡するように静かのところも人込みのなかによく見つからない。帰るの丸の内線の改札もこの駅の中にどこかわからなくてやめて帰るのも難しい。本当に迷子になってしまった。

 失望だ。

 それで、誰かが私の手を掴んだ。あまりのビックリさで誰かを見上げた。彼だ。あのいつも公園のベンチで朝ご飯を食べる人だ。どうしてここにいるでしょうか。どうして私がいるかわかっているでしょうか。頭の中に質問ばっかりが浮かんだ。

彼はただ私に優しそうに笑った。

「なんで?」

 その一瞬に私はそれしか言えない。

 彼は相変わらず何も言えずに私の手を取って私を引っ張った。

「な...何している?」

 彼は答えないとわかった。けれど、ついに聞いてしまった。

 最初に彼の手から離すように頑張ったけど、何秒の後に彼の強い握力から離せないとわかって諦めた。素直に彼の後にすると決めた。

 彼も私は諦めたことを気づいたみたいで握りが弱めた。

「どこ行くの?」

 もう無駄だとわかっていた。彼は無言で私を駅の出入口に導いた。階段を上げたらサトミちゃんとミサちゃんとダイキくんがそこに立っていた。サトミちゃんは両手で私の方へ激しく手を振っていた。ようやく彼が私の手を放した。私は友達に走り出した。

「チズちゃん、先に行ってしまってごめんね」

 私は彼女の胸に押し込んで彼女の手に囲まれた。はたから見れば迷子になった子供がお母さんを見つけたシーンのようだ。

「チズちゃん、大丈夫か?」

 ダイキくんは私に聞いてみた。私はうんと頷いて、あの男性に振り返った。彼はダイキくんの隣に止まった。

「知り合い?」

 私は呆然とダイキくんに聞いた。

「お、竜介?彼は僕の友達だよ。連れてくるって言ってなかった」

 ―――え。友達だと。ダイキくんが言ったことは頭に全然入ってこないみたいだ。

 一つのことだけわかった。彼、あの最初に公園のベンチに座ってサンドイッチの綺麗な男、あの何も言わない礼儀知らない男、あの池袋の駅の中に迷ってしまった私を助けてくれた男、あの男の名前は竜介だ。



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