十
そういうことでも言いたくないものだ。
それも、初対面の人間もいるのだ。美波は我知らず背が張りつめてくるのを感じた。
「では、今度は真保からいきましょうか?」
「え?」
名指しされた真保は真っ赤になった。やや色黒の肌がどす黒くなる。もともとあまり顔色が良くなかったのだ。
「えーと、あの……」
しどろもどろになりながらも真保は言葉をひねり出した。
「食事を残しました」
「それだけ? それだけじゃないでしょう?」
シスター・マーガレットの目は細められたままだ。
「えっと、他にも友達の悪口を言ったり、嘘をついちゃったり……」
真保は他愛もないことをつらねた。シスター・マーガレットは微笑しているが、茶色がかった
「もっと他にあるでしょう?」
「え……、それは」
真保はこわばった小さな顔でシスター・マーガレットを上目づかいに見上げた。
「真保、他の皆もそうだけれど、あなたたちは何故この学院に来たのだと思う?」
一瞬、美波も夕子も唇を引きしめていた。
「あなたたちは生まれ変わるためにここに来たのでしょう?」
目を向けられている真保は硬直している。
シスター・マーガレットの顔は真剣そのものだ。
「ここが大切なときなのよ。ここで生まれ変わるか、地獄の業火で永遠に焼かれるか」
過激な言葉に美波は呆気にとられた。
ふと見ると夕子もぽかんとした顔をしている。
「ねぇ、真保、よおく考えてごらんなさい。秘密をすべて打ち明けなさい。そうして心から懺悔すると、新たな人生が始まるわ。あなたは、何をしたの?」
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