クローン

ならさき

X

「この世にある全ての数を足したら0になる」

それが彼女の考えでした。


彼女は思いました。

1~100までの数を足した後に-1~-100までの数を足すと答えは0になる。ならばこの世の全ての数を足し合わせたら0になるのではないか……と。


これはある青年と、Xと言う女の子が生み出す、感情を全て足し合わせた話。


少年「できた……できたぞ!!完成だ!!これが……人の感情を作り出す設計図……。

これでようやく終わる……!!僕が求めていた人の完成体だ!!

後は設計図通りにプログラムを打ち込んで……っと!!(キーボードの音)

ついに……できた……!!感情全てを司る(つかさどる)人間の完成だ!!怒りや悲しみ、憎しみもあれば、喜びも嬉しいという感情まである!!これがれっきとした人間……!!僕はこれで「人を生み出した英雄」になるんだ!!


後はこのキーを押すだけだ……。


さあ!目覚めてくれ!!「造られし人間」よ!!(キーボードのボタンを押す音)」


<プログラムに異常が起きる>


少年「なんだ……!?何か欠陥があるのか!?……仕方がない!!」

<キーボードで打ち込んでプログラムを修復する>


少年「これでどうだっ!!」


<爆発音と共にガラスが割れる>

少年「ぐっ……!失敗か!?」


青年「……っつ〜!!頭がガンガンする……。どうしよう……。どうでもいいか……。」

少年「……完成だ……!!ついに実験が完成した!!「人の元に造られし人間」だ!!」

青年「成功?実験?まあいいや。耳が痛い……。まあいいか……。」

少年「おい!実験体1号!具合はどうだ……?」

青年「具合?別に……。てか、誰?」

少年「僕は君を創り出した、言わば君の母親の様なものだ!君はついさっき造られたんだ!僕の手で!」

青年「造られた……。俺が……?まあいいか……。」


少年「僕はこれからも色々な実験でデータを取らなければならない。そのためには君のような完成体が必要なんだ。だから今日は体力を回復……(だんだん声が小さくなる。この少年のセリフの時は青年が一人称視点)」

<刃物を手にする音>

少年「だから……って、聞いてるか?」

青年「まあいいか……。」


<刃物を少年に突き刺す>


少年「……えっ?」

青年「別になにも興味は無いし、君にも興味はない。」

少年「バカな……っ!!人は感情で行動をコントロールするはず……!!なぜお前は僕を殺す!?僕は全ての感情をプログラミングしたはずだ!!お前には悲しみや愛しみが無いのか!!」

青年「悲しみ?感情?まあいいか。どうせ俺には無いものだ。」

少年「……なぜ……だ……っ!!」

<少年が力尽きる>


青年「これからどうしようか……。まあいいや。興味ない。

……っ!!!なんだっ……!!

頭にヒビが入りそうだっ……!!(頭痛の時に走るようなピー音)」


X「ほおほお!なるほど!!次に出来たのは「感情がない人間」か!いいじゃないか!極端で!

私は極端な物も好きでねぇ……。

でもまさかこっちからなにも言わなくても自分の主人殺しちゃうとかは想像付かなかったけどさあ。」


青年「……何者だ?」

X「あららら、質問してきちゃったよこの人!ああ……人じゃないか。まあいいや!

はじめまして。実験体クン。厳密に言えば君は、「実験体364号」かな?」

青年「別に番号なんて要らないや。自分は自分だから。」

X「そうだよねぇ……。今までいっぱいの実験体見てきたけど、放心したのは君が初めてだ。さっきの実験体363号クンは結構貪欲だったしねぇ。

君は結構見ごたえあるよ……。」

青年「……俺に何の用だ?」

X「おっと!そうか!言い忘れてたね。君には用があって話しかけた……ってもういいか!


君にはね、もう一人実験体を作ってほしいんだ。」


青年「……そうか。」

X「そう!実は君を作った彼が実験体363号で……ってええ!?驚かないの?」

青年「興味はない」

X「……ふふふっ!そう……。私、あなたのこと気に入っちゃった。あなたには「特別なもの」を作って貰おうかしら……。」

青年「特別なもの……紙……?」

X「私が今あなたにあげた紙には、人間の設計図があらかじめ書いてある。あなたはその順番に従って作ればいい……。わかった?」

青年「やらなければいけないんだろう。それに俺もやることがない。考えなくていいならそれでもかまわない。」

X「それじゃ、完成を楽しみにしてるわよ♪」


青年「特別なもの?怒り、痛み、悲しみ、苦しみ……。なんだこれ?このプログラムを動かして……。」



<季節、期間が流れる。何らかのSE>


青年「できた……。これが奴が作りたかった人間?」

X「そう。これが私が作りたかった特別なもの。」

青年「……2年ぶりだな」

X「あなた……驚きもしないのねぇ!変わった人!もっとこう、さ!ないの?「突然出てくるな!」……だとかさ。「2年間何やってたのか」だとかさ。

……「私の正体のこと」だとかさ。」


青年「……お前は誰だ?」


X「……へぇ!聞いてくるんだね。やっぱり君はおもしろい。

そうだね……


私はXと呼ばれる存在。または少女の形をしていたり、少年の形をしていたり。時には虫のような形をしていたり、ドラゴンの様な形をしていたり。……あるいは形がなかったり。


私はあなたを作った存在であり、あなたに作られる存在であり、あなたを造る存在。

私はこう呼ばれた。「人工生命体、ホムンクルス」。」


青年「……お前は俺か。じゃあ二つほど聞くが、なぜお前は俺に人を造らせる?お前が造ればいいんじゃないか?」


X「私は「あなたの中にいるもの」でしかない。あなたというフラスコの中でしか動き回れないのよ。」


青年「じゃあ二つ目だ。お前は俺に何を作らせようとしている?」


X「……あることを思いついたのよね。全ての数字を足し合わせたら0になるんじゃないかってね。例えば0~100+-1~-100みたいにね。

でもね、違った。

答えは何も無い。足し合わせの順番によって、0にもできたし無限大にもできた。

そしてあなたは0の人間。

私が求めているのは……」

青年「無限大の人間……か。」

X「あら、意外と考えてるのね。という事はもう解るわよね。」

青年「この設計図通りに進めたら、無限大の人間が作れる。そういうことか。」

X「見てみたいのよ。この目で確かめてみたい。だからあなたは造り上げる。

普通は拒むわよね。でもあなたは拒まない。だから私はあなたにその設計図をあげた。」

青年「そうか。ならば造り上げるしかないな。お前は俺だ。興味なくても従うさ。」

X「後はキーを押すだけね。」

青年「ああ。もうお前に聞き残すことはなにもない。」

X「そう。もしもあなたが最後に聞いてきたら、その時はあなたが造った新しい身体でキスでもするかもね。」

青年「……気持ち悪いな」

X「えっ!?ちょっと何よ!気持ち悪いって!」

青年「押すぞ」

X「えっ!?まだ心の準備がぁぁっ!!」


<プログラムに異常が起きる>


X「また……どこかで……会おう。」




陽子「……で最後、って聞いてます!?三木さん!?」

三木「……ん?ああ!寝てた……。ごめん……。」

陽子「はぁ……まったくこの人は……。もういいです!」

三木「まて!陽子!落ち着け!話せばわかる!」

陽子「はあ?私をなんだと思ってるんですか!今日は三木さん残業で疲れたでしょ。だからもう寝たほうがいいんじゃないですか?」

三木「ああ、ごめん……。気遣いありがとな。今日はもう寝させてもらうわ。」

陽子「……今日はもう遅いので、うちで泊まっていって下さい。どうせ電車も動いてませんから。そこのソファ、使ってください。」

三木「そうか……悪いな、何から何まで。じゃあ、寝させてもらうわ。おやすみ……」


陽子「おやすみなさい。



忘れないで。私があなたを造り出したという事を。チュッ(キス音)」

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クローン ならさき @Furameru

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