第3話 入りたい!!
これは俺が保育士を始めてすぐの話
もう本当に1日目か2日目くらいのことだったと思う
保育園と言うのは結構むかしの文化が根強く残ってたりするんだよね
例えば、残業代という概念自体無かったりして、
一言でいえば『今風じゃない』んだよ
だから当然新人マニュアルなんかも無いし、もちろん研修なんかも一切ない
とにかく、見て、接して、体験して覚えるってのが基本だった。
で、来てそんな文化にビクビクしながらも子供たちとおっかなびっくり接するわけだ
最初は子供たちも知らないおじさんが来た、ってなって警戒してるから
仲良くなる時間はすごく大切なんだよ
で、その日の朝園庭で遊んでる時だったな、砂場の方に
えーん、えーんって泣いてる男の子(3才)を見つけたわけさ
これはチャンスって思って近づいていって
「どうしたん?」って聞いてみたら
「入りたい―!入りたいー!!」って砂場の砂を指してえんえん泣いてんのさ
何があるのかなーって、指してる方を見たらそこには
結構大きめの落とし穴みたいなのがあって、そこに一生懸命で水を入れて
溜め池みたいなのを作ってる男の子が二人くらいいたのね
で、それを見て俺が思ったのは
『こんな溜め池の中に入りたいんか?子供の考えることはマジで分からん』だった
だけど、このまま泣いたままほっとく訳にもいかないし、
これを解決できれば仲良くなるチャンスだ、
って思って頑張って説得しようとしたんさ
「こんな中に入りたいの?服とかべちゃべちゃになるよ。やめときな」
って言ったんだよ
そしたら、火に油を注いだみたいにその子ぎゃんぎゃん泣きだした。
不測の事態にオロオロする俺
そこへ遠くでみていた主任保育士が、見かねて助けに来てくれた
「ゆみ太さん!そんなこと言っちゃだめじゃない!
入りたいって言うのは、この溜め池作りの遊びに入りたいってことよ
分かるでしょ!そんなの」
そう俺に言って、主任は泣いている子を連れて、
溜め池を作っていた子たちに、輪に入れてあげるようにお願いしに行った
そういうことか
目から鱗
俺はハンマーで頭叩かれたような衝撃だったね
みなさんも子供の「入りたいー!」には注意しましょう
ってこんなミスするの俺だけか
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