援助交際
ホテルの部屋に入って彼女には2万円を手渡した。言われた通り先にシャワーを浴びて戻ると、彼女はもう全裸になってベットに腰掛けていた。何かを決心したように見える表情には、まだ幼さが残っていた。体つきも20歳には見えない。どう見ても未成年にしか見えなかった。
とりあえず、彼女には毛布を渡した。どうやら全裸で居るのは恥ずかしかったらしく、すぐに毛布にくるまった。
「少し聞きたいんだけど、いいかな」
「プライベートなコトはイヤです」
「じゃ、簡単な話をしよう。俺と会う前はどこで待機してたの?」
「どうして?」
「もう業者に引っかかるのはゴメンだから、少し情報収集したいんだよ」
「そうですか。このホテルの近くのマンションの部屋です」
「そこに何人くらい待機してるの」
「3人くらいかな。多い時は5人くらいいる」
「どうしてそんなところにいるの?」
「家出て来て、他に行くところがない人もいる」
「君も?」
「私は違う。お金が欲しかっただけ」
「バイトじゃだめなの?」
「足りないもん。バイトじゃ生きていけないもん」
「そう。お腹すいてない?」
「それは大丈夫。事務所の人が食べさせてくれるから」
「事務所って、男の人もいるの?」
「男の人しかいないよ」
「そうなんだ。学校がある日は放課後から事務所に行くの」
「そうかな。部活とかも入ってないし」
高校生だと確信した。下手なコトはできないな。裸を見ただけでも犯罪かもしれない。
「ところでさ、ちゃんと生活できるなら事務所辞められる?」
「無理だよ。前に『辞める』って言った娘がいたけど、どこかに連れて行かれちゃった」
「なにそれ。もしかして、殺されたの?」
「ううん。1週間くらいで戻ってきた。戻ってきたけどね」
「どうかしたの?」
「壊れてた」
「壊れてた?」
「うん。なにも喋らなくなって、急に泣き出したり、笑いだしたり、叫んでたこともあった。あんなになりたくない」
たぶん薬を使われたんだと思った。
「その娘はまだ事務所にいるの?」
「いつもいるよ。レギュラーだもん」彼女は悲しげに笑った。
「そうか。確認したいけど、こういうの辞められるなら辞めたい」
彼女は真顔になって叫び出した。
「やりたくてやってるわけないでしょ。辞めたいに決まってるじゃない」
顔を真っ赤にして泣き叫ぶ彼女を、毛布の上から抱きしめた。すすり泣く声が耳元にまとわりついた。
「わかった。なんとかしてやる。大丈夫だから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます