3056 武装(?)千月

 C.E.2063_0602_1215



 あれから3日経った。


 領主は色々準備させてくれっと言って、3日もほぼ独りで執務室に籠った、急用以外の事務は全部副官に任せている。


 うちらはこの間も色々と情報を集めている、とは言っても、実はただのショッピングだしな、名産集めや装備(お洒落な服)などを見回って、ぶっちゃけ観光だ。


 今も嚮後の勧めで、セントと天上を除き、うちらは露天屋台で擔仔麺とエビ飯を楽しんでいる、すげー美味しかった。



「オヤジは一体どうしたのかな?」


「さあ?多分嚮後さんの事を悩んでいるかも?」


「ちーちゃんも人が悪いね、あんなセリフはよく口にすることができるね、あたしだったら絶対無理だわ。」


「実は結構怖かったわ、殺されるかと思いました、でも嚮後さんのためなら、やらなければ…」


「ちーちゃん…」


「そういえばお嬢様、お母上には報告しましたか?旅に出る事を。」


「セント!アンタわかっているじゃない?そんなこと言い出したら殺されるわよ!」


「はっはっはっ!確かにお母上の性格では、殺されるかもしれませんな!」


「嚮後さんは一人娘ですか?」


「ああー、一人娘といっちゃ一人娘だけど、弟は一人いるよ?」


「弟ですか…、きっと立派な方でしょう?」


「いやいや、お世辞にも立派とは言えないね、あいつ。」


「ええ?」


「いやー、あいつはな、女々しいからな、もう20才なのに、今でも毎日遊び倒しよ?女癖も悪いし、領主の息子の身分を利用して、いい噂は一つもないわ。」


「……ごめんなさい。」


「いいって、オヤジもあいつの事を諦めているから、それで第一継承者はあたしって訳。」


「なるほど、道理であんなに保護していますね。」


「でもあたし、保護されるのは嫌いで、オヤジの言う事は全部無視して来たわ、今回も…」


「流石に今回の件は危険過ぎますね。」


「ちーちゃん、まさかここであたしを置いていくつもり?」


「いいえ、強引にでも連れ出すつもりでしたよ?嚮後さんが居ないと駄目よ。」


「そ、そう?まあ…」


「千月。」


「ひぃぃー!」


 天上のやつ、また性懲りもなく、いきなり背後から現れた。


「て、天上さん!もうそんなことはしないでって何度も言ったじゃないですか!びっくりしましたよ!」


「す、済まん、何故か癖になった。」


「変な癖ですね、お兄様。」


「……それより、前頼んた物を調達して来た、見ろ。」


 天上の手に持っているのは、金属バットとサバイバルナイフ、そして掌より少しだけ大いの小型金属製クロスボウだった。


「……天上さん、野球が趣味ですの?」


「違う、お前この前頼んた物だ、お前にも扱える武器だ。」


「「「はあーー!?」」」


「な、なんだお前ら?」


「お兄様!それが武器ですか?」


「あ、ああ、セントも結構悩んたぞ?千月ならこれが一番扱い易いと思う。」


 そういえばそんなこともあったな、先日嚮後の勧めで、千月にも何か保身用の武器を持った方がいいって言われた。


「ぜっ…、ぜっ…、天上様…、そんなに走ると…、自分付いていけませんよ…」


 あっ、セントは後ろから走って来た。


「セント!どうしてこんなオモチャを買って来たのよ!」


「お、お嬢様、色々考えましたが、やはりこれは千月様には一番扱い易い武器かと思いまして…」


「ああ、千月、お前剣とか槍とか、そんな筋力だと持ち上がらないだろ?」


「……そうですけど。」


「外側の武器では普通銃器だろ、だったらお前は弓など前時代の射撃武器の扱い方もわからないだろ?」


「はい…」


 いや例え銃があっても、こいつも多分扱えないと思う。


「千月様の加速と筋力に合う武器は、色々考えた結果、この3品は一番しっくりくると思いました、クロスボウは小型ですので射程も短いですが、ある程度の遠距離攻撃も出来ますぞ?」


「……クロスボウとナイフならともかく、バットはちょっと…」


「何が問題か?」


「…可愛くないし…」


「…………」


「しかしお兄様、バットは例え金属製でも、対人攻撃用ならすぐ壊れるじゃないですか?」


「ナナメ様、それは心配ご無用ですぞ?これはただの金属ではありません、昨日知り合いの金属系超能力者を頼んて、強化と特殊効果も詰めている特製バットですぞ!」


「特殊効果?」


「ええ、どうやら記憶金属効果と軽量化、あと拡張機能も付いているだそうですな。」


「記憶金属?つまり凹んても回復しますの?」


「そうです、ナナメ様。」


「拡張機能って?」


「それについではよくわかりませんが、あの方も上手く説明出来ないようですな、ちなみにこのクロスボウとナイフも、同じ強化を施していますぞ?」


「まあ物は試しだ、持って見よう。」


「……ううぅ、はい…」


 千月は嫌々と、天上から武器(?)一式を受け取った、これは……


「あれ?凄く軽い、凄い…」


「そうか、良かったな。」


「しかしセント、こんな軽量化も出来るのなら、剣も軽量化できるじゃない?」


「お嬢様、実は限度があります、この前千月様は、練習用の木刀すら、持ち上がるだけでも精一杯ではありませんか?本物なら例え軽量化されても、精々木刀と同じぐらいの重量までにしか軽減されませんぞ?」


「なるほど、金属バット、ナイフ、クロスボウは元々軽い武器ですからね。」


 ていうかバットは武器じゃねえだろうが!


「はあ…、しかし一気に3つも持てませんよ…」


「千月様、実はそれに対でも対策済みですぞ?ほれ!」


 ぬお?サバイバルナイフの革鞘、クロスボウを納める革袋、そして革帯。


「千月様、この革帯で鞘と袋を太ももに付いたら、なんの負担もなく簡単に装備出来ますぞ!」


「げっ…可愛くない…」


「ちーちゃん!付けてみて!なんか超かっこいい!」


「千月さん、昔テレビからよく見たのではありませんか?スパイ映画などの主人公らしいですよ?」


「可愛くない…」


『まあ千月、護身用には確かにビッタリだ、小型だし軽いし、扱い方も簡単だし、これからは戦争だぞ?文句を言う場合か?』


「はい…」


 そして千月は嫌々と、ナイフの鞘は右側、クロスボウ袋は左側の太ももに付いて、ナイフとクロスボウを納めた。


「かっこいいですわ!お姉様!」


「ええ、凄く似合いますよ?千月さん。」


「何故か…どういう訳か知らないけど、その衣装と凄く似合うね、ちーちゃん。」


「しかしバットはどうしたら…」


「そればかりは仕方あるまい、手で持つしかない。」


「ねえちゃん、普段は僕が持ってあげるよ、このリュックにも帯があるんだ。」


 佐方はバットを取り、リュックの側面に付いている帯に掛け、なんとちょうどいいサイズだった。


「そういえばセントさん、そのクロスボウの矢はどうします?1本しか付いてません。」


「自動生成らしいですぞ?」


「「「はあ!?」」」


「その記憶金属効果の応用で、なくなった矢はすぐ自動的に復元するだそうですな。」


 どんな技術だよ!っていうかこんな超能力やばくね!?


「しかし矢の補充が必要なくなった代わりに、連射ができないだそうですな、なにせ1回は1本しか復元できないですしな。」


 まあそれで十分じゃないかな?これからはできる限り自ら戦闘をすることは避けたいし、滅多に使わないだろ。


「はあ…、私、なんか乱暴なチンピラになっちゃった。」


「文句いうな、それにチンピラなどこんなものを買えるはずがない、せめてマフィアと言え。」


「中国語で言えば黒社会か黒道ですな!」


「同じじゃないですか!」


 いやいや全然違うし!


「マフィアか…、我ながら言えて妙だな、フフフ…」


「もうお兄様ったら。」


「天上さん!」



 まあ、とにかくこれで行けるだろ、数回の加速を経て、そこで導き出した結論は、加速20%以上はいけない、あと攻撃力が足りないの2点だな。


 もちろんできる限り加速は避けるべきだが、戦争だし回避できない場合もあるだろ、どんな状況にも対応したい、これで少しだけ補える事ができるはず。

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