2034 嫌がらせの戦争

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「セント様は本当にすごかったですわ!」


「うんうん!超かっけー!」


「はっはっはっ、皆様もなかなかやりますぞ!」


「はあ…結局ほぼセントの独壇場になったわ。」


 うちらはそのあと即城に戻り、今超高級のレストランで食事をしている。


「しかし戦闘服って、いったいどうな効果があります?」


「はっはっはっ、実は普通の服と同じですよ。」


「ええ!?じゃあどうして戦闘服と呼ぶの?」


「戦いにはロマンが必要でありますぞ!戦闘服というのは、つまり一般衣装と一線と画した、特別なデザインの衣装ですぞ!」


「はあ……」


 道理であんなロリコン趣味満載な衣装が普通に売っているな、昔の二次元文化の影響か?


 っていうか、そんなことは超絶どうでもいい!!


『千月、はやくここにいる氷人と接触してくれ。』


「…セント、さっきここにも氷人がいるって言いましたよね?紹介してくれませんか?」


「残念ですが、居るのは知っています、しかし知り合った方はいません、氷人っと言いますが、地球人との見分けがつきませんので…」


「ええ?確かテレビから聞いた話では、氷人の平均身長は地球人よりかなり低いのでは?」


「ええそうです、地球人と比べれば、寿命は短い、体も弱い、身長は低い、しかし外見上、まったくの同じですので、身長だけではとても…」


 まあ概ね間違いないな、他にもあるが、もうどうでもいい。


「そうですね、地球人でも身長バラバラですし、身長だけでは確かに見分けが付かないですね。」


 ちっ、ここまで来て、糸が切れたとは…


「ねえセント、春ねえともう一度会えないかしら?」


「もちろん出来ますよ、ただ多忙な身でありますゆえ、すぐとは保証出来ませんが。」


 ああ、春ねえなら何かわかるだろう。


「千月。」


「ひぃー!」


 な、なんだ!?


 天上が…いきなり、背後から現れた!


 何の音も気配もなく、いきなり…、やはりとんでもない危険人物だ。


「ああ…天上様…、やっと会えましたわ…」


「はっはっはっ、天上様、またいきなり現れましたね、流石に私でもびっくりしましたぞ!」


「ふん、最初から気づいたくせによく言う、とにかく、セントを借りるぞ?」


「はい!」


『っておいてめえ!まだ事情も聞いてないのに即答かよ!』


 くそー!このままじゃヤバイぞ、完全に恋愛脳になったじゃねえか、理性すらなくなったぞ!


「うん?天上様、まさか雲林の…」


「いや、そっちはまだ拮抗状態だ、いままで通りにな、今回は別件だ、奴はまた暴れ出した。」


「またですか…命令無視ですかね?」


「多分な、今は竜宮溪と八掌溪辺りで暴れている、味方は布袋城まで後退した。」


「いつもの嫌がらせですな。」


「ああ、面倒な奴だ、そろそろ退去させないとな。」


「そうですな、これ以上戦線を広めると、雲林方面ではさらに厳しくなりますな。」


「そういうことだ。」


「しかし、今の自分は千月様一行の護衛兼執事、千月様の身辺から離れませんぞ?」


「そんな…セントは私のものでもないし、それに大事なことでしょう?なら…」


「だったら話は簡単だ、千月、お前もついて来ればいい。」


 なに?なんか嫌な予感がする…


「いやいや天上様、台南の方々は敵意がないとはいえ、それは戦争ですぞ?流石に千月様を連れていくわけには…」


「はい!お供します!」


 はあ…やっぱりか。


「おお、流石は千月様!このセントラル、感動しましたぞ!」


『おい千月、戦争なんてする暇はないぞ?早く隔離をなんとかすれば、戦争も自然と終わると、いつも言ってんじゃねえか?』


「さーちゃんとゆうちゃんは?」


 無視かよ!


「もちろんいくぜ!」


「お姉様が例え地獄へ行こうと、私達も絶対付いて行きますわ!」


 はあ…どこでそんなセリフを学んたか…面倒だな…。



 #



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 うちらは晩飯のあと、昨日の超高級部屋に戻らず、適当なホテルで休んた、理由は、あの部屋は主城の貴賓室だ、これ以上貸しを作る訳にはいかない、安い部屋だけでいい。


 それから朝食後一直線、嘉義城の西口から出て、城門口にいる馬車駅から馬車を借りて出発した、かなり急いているようだな。


 この馬車、二頭の馬で引く、結構大型のキャリッジだ。


 しかしこの揺れっぷり…昔の道路をそのまま整備したようだが、現代設備がない今、やはり完璧にはいかないか。


「馬車って、こんなに揺れるものですね…」


「ま、まさか千月様、馬車も初めてですと!?」


「え、ええ、まあ…」


「流石に澎湖の田舎でも馬車があるはずでは…」


 あの時は隠密行動だし、自転車すら乗れないしな。


「…………」


 天上のやつ、いつも興味津々で千月のことをじっと見ている、すごく不気味だ。


「あの…さっき台南の方々はただ遊んているって言いましたよね?それはどういう意味でしょうか?」


「ええ、千月様、実は台南も元々姫様の領地ですよ、三年前から子供の喧嘩のような内紛によって独立しました、元々味方ですので、お互い攻めるわけにもいけません。」


「ええ?なら和解すればいいのでは?」


「ええ、実は台南の領主も和解したいですな、かなりお人よしな領主様ですよ、しかし喧嘩の原因であるあの方は、自尊心が高い方でして、姫様から頭を下げない限り、和解は無理ですな。」


 何?つまり領主本人ではないっと?


「そしてあの方は、領主でも頭を上がらない方です、あの方は姫様と仲が悪いですので、嫌がらせの最後は戦争ごっこへと発展されました。」


 子供か!!!


「そ、そんな…嫌がらせの戦争だなんて、そのために、兵隊さんを犠牲にするんですか!?」


「はっはっはっ、千月様、実はこの三年間、お互い何十回の喧嘩もしてきましたが、負傷者は確かにあります、しかし戦死者は一人も出ません。」


「ええーー!?」


 マジで子供の喧嘩か!


「実は姫様も満更でもない様子ですよ、お互い人を殺すことを避けているのなら、絶好な実戦訓練になれますな、負けでも何の損害もでないですしな。」


「では今回は…?」


「長年台中彰化の侵攻を防ぎ続けた雲林方面戦線は、最近かなりの緊迫状態になりました、流石にこれ以上台南と戦争ごっこをする余裕はなくなりましたので、今回は一時停戦の交渉をするつもりです。」


「交渉だけならどうしてわざわざセントを…?」


「いやー…あの侵攻ごっこの指揮官は…、千月様、すみませんが、これ以上はやはり千月様ご自分の目で確かめたほうがいいですな、はっはっはっ!」


「はあ……」


「千月、お前達は遠くから見ていればいい、到着したばかりの客であるお前達を巻き込むわけにはいかない。」


「はい…」


 そうか、それなら大丈夫だと思うが、いやな予感が収まらない、どうしてだろうな?


「お、お姉様!」


「ねえちゃんねえちゃん!すげーのがいるぜ!」


「ええ?」


 佐佑は馬車を乗ってからずっと興奮状態で、馬車の窓口から外を見ている。


「ええ?ふえええーー!?」


 千月も窓口から外を見てみたが…って、なんだあれは!?


「あれ恐竜?」


 どこからの知識だよ!?


「違いますわさーちゃん、そんな形の恐竜、絵本にも載っていませんわよ?」


 ああ、昔の絵本か?


「あれは…キリンじゃない?」


 ああ、確かに超絶の巨大キリンだ、高さは多分80メートル以上、20階層ぐらいの高さがあるぞ、この辺りは廃墟ばかり、ここで生息しているようだ。


「はっはっはっ、昔どこかの動物園から流れ着いたキリンでしょう、もう数年前からこの辺りに定着しています、無害ですので気にしなくてもいいですよ。」


「あんな漫画みたいなものを見ても気にしてないだなんて、台湾人すごいね…」


「ふん……」


 天上はまた不気味な顔をしてる…こいつ一体なんなんだ?

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