2030 苓蘭
「待たせてすまない!」
「ひぃー!」
突然、扉を開けられた、ノックもしない、いきなり誰かが飛び込んてきた、びっくりしたぞ。
「やあー老人方がすげーうるさくてなぁ、時間がかかったわ。」
な、なんだこの女…入った途端、凄まじい気圧が…、空気が…燃えたような錯覚だ。
「え、えっと…」
「君は千月ね?いやーゴメンゴメン。」
「え、ええ、あなたは…」
「私は苓蘭、ここの人は、大姫っと呼んてるよ。」
「れいらん…様…。」
苓蘭。
痩せも太くもない、平均的な体格、約165センチ、顔から見れば多分30代前半か。
超普通のジーンズとジージャン、超普通の白いTシャツ、超普通のスニーカー。
あと髪型も超普通のショートボブ、顔つきも超普通の女性、もう何もかも超普通、まるで市場で今日の晩御飯の食材を物色しているような、どこかのお母さん。
あとあの口調、こんな人、本当に姫でいいのか?っという感想が漏れるだろう、“見た目だけでは”。
あの自然に溢れた、周りの空気も燃えたような圧力、地獄の底すらも明るくなるような、太陽みたいな気質、そして、一目だけでも感じる程の、圧倒的なカリスマ性。
もし、台湾に勇者がいるのなら、この人のことだろうな、とんでもない神聖なオーラだ。
「れいらんっていいよ。」
「そ、そんな…」
「じゃあ、一部親しい人は春ねえって呼ぶから、君もそれでいいじゃん?年齢的にも丁度いいね。」
春?多分あだ名だろう、確かに春でも連れてくれるような感じだ。
「は、はい!はるねえ…はるねえ…」
「はっはっはっ、まったく堅苦しい子だねぇ、もっと気楽にしてよ。」
頭が…撫でられた、この人に撫でると、不思議に…すごくいい気分だ。
「は、はい!あ、あの…、お、お姉様と呼んちゃ…ダメ?」
「よしてくれよ、そんな柄じゃねえって。」
「はい…」
くっ、何という人間だ、一目だけで、千月はまるで子犬にもなったように、しっぽを振っている。
だが、わかる、この人に近付くだけで、気分がよくなった、本当に、太陽のような人だ、ここまで来るともう人間の域を超えているぞ、もしかして、これも超能力か?
「あの子達は、佐方と佑芳ね?」
「あ、ああ!すみません!春ねえの前で寝るなんて失礼なことを…すぐ起こしますね。」
「いや、このままでいいよ、細かいこと気にすんなよ、気楽で行こう、自分の家に居るような感じでな。」
「あ、はい!」
そして春ねえも適当に座った、本当にセントラルの言った通り、かなり大まかな人だ、いや、もう大雑把だろう。
「さて、天上さんの紹介だけど、最初はどんなすごい人間かっと思ったが、なるほど…」
「わ、私なんか…」
「なんか、君、超普通じゃないか、親近感湧いてきたね。」
「あ…、す、すみません、期待を外れさせちゃって…」
「いや、そういう意味ではない、寧ろ逆に、どうしてこんな一見普通そうな若い女の子を紹介してくれたか、興味が湧いてきた。」
「え、えっと…」
「多分、あの御仁だけが見えている何かが、君が持っているのでしょうね、残念だが私は見抜くことができないね。」
「わ、私なんか…」
「だから逆に興味が湧いてきたよ、君はどこが、あの御仁の眼鏡にかなう所があるのかっと。」
「え、えっとその…天上さんは、ここの偉い人ですか?」
「うん…表向きには、あの御仁は何の役職もない、ただの一般人よ?」
「表向き?」
「うん、しかしこれ以上は私の口からは言えないね、知りたければ本人に聞いてみ?」
「そうですか…残念です…」
「はっはっ、君、惚れたでしょう?」
「ふええーー!?どうしてわかるんですか!?」
「だって私もあの御仁のこと超好きだからね!君のそんな惚れ顔、私と同じじゃん、すぐわかったよ。」
「ええ!本当ですか!」
「おう!って、何が知りたい?うん?」
「あの方の趣味が知りたい!」
『があああぁぁーー!千月!何やってんだよ!そんなの後回しだ!情報だよ情報、あと面会の理由もまだわからないぞ?』
ガールトークの場合か!?
「ほほう、趣味か、それなら…」
「あ、す、すみません、やっぱり今後の楽しみにしておきます、まずは、天上さんはどんな理由で紹介してくれたのか、知りたいです。」
「ああ、いいよ、理由ね、ないね。」
「え?」
「あの御仁はただ私に、君と面会しろって言われただけよ、あと、君の頼みならできる限り協力しろって、それだけ、理由など一言もないね。」
「ええ…、なんで…。」
「さあ?しかしあの御仁からの頼みだ、私的にも公的にも、逆らえないよ、しかしさっきの言った通り、今は私個人的にも君に興味が湧いてきた、だからできる限りの協力をしようか。」
「あ、ありがとうございます!」
「うん、では早速本題に入る?」
『千月、うちは腹が減ったぞ。』
「あ、すみません、あの…昼飯はまだ…」
『なに?先に食事を済ませてくれって言ったよ?セント!セント!』
ああ、まさか忘れたのか…?
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