1020 絶対優先
うちらは一瞬で、その高い壁の前に到着した、300メートルくらいの距離を、一瞬で移動してきた。
「ふええーー!?見ただけでもすごいなーと思ったけど、自分も瞬間移動したらちょっと怖い…」
「ははっ、ねえちゃんったら、まだまだ行くぜ!」
そして佐方は今度、いきなり石畳の壁に向けて走った。
「ふええーー!?ぶ、ぶつかる!!……え?」
……え?
すり抜けた!?こんなこともできるのか!?
千月は背後を見て、壁はなんの変わりもない、うちらはまるで幽霊みたいに、壁をすり抜けた。
「ははっ、ねえちゃん、一々驚かないでよ、絶対優先って名前を付けたのはねえちゃんじゃねえか?」
《絶対優先》
これは、双子の能力、実はうちが付けた名前だ。
全貌はまだ掴んていない、この子達も自分の能力の正体はよくわかっていない、もちろん湧にいもよく知らない。
病室にいる数日、色々と実験を繰り返した結果、多分これは、限定的な物理干渉能力だと推測している。
例えば今の瞬間移動、これは空間干渉の結果だな、離れた両点の空間を捻じ曲げ、繋がっている、簡単にいうと、ワームホール現象だ。
しかし理論上のワームホール現象だったら、もしかしてこの子達は時間すらも干渉出来るかもしれないと思ったが、どうやらできないらしい。
しかし実験っといっても、所詮小さな病室の中で行ったものだ、出来ることは限られている、どこまで行けるかまだ確証はない。
空間も含め、一部の物理現象の法則は、自分の思い通りに書き換え、自分の発生させたい現象の優先順位を、法則の上に凌駕する。
確証はないが、どうやら全ての物理現象の干渉はできないようだ、だから名前は物理干渉ではなく、絶対優先、と。
「とにかく、今度は先に言ってよね、お姉さんの心臓が悪いよ…」
「ハイハイ。」
「ではお姉様、次は私から行きますわ。」
「え?」
続いて佑芳、光の屈折を操作し、うちらは透明になり、そして佐方は一気に近くの廃墟の建物の中に走った。
「……っ、こんなの、無敵じゃん…」
確かに非常に出鱈目な超能力だ、こんなの聞くだけでも、無敵だと思うだろうが、実はできないことと弱点もいっぱいある。
「5秒しかないですよ?」
そうだ、まずは、どんな干渉でも、5秒しか維持できない、5秒過ぎたら元通りになる。
「ねえちゃん、次は?」
「え、えっとね、なんか湧にいがこの港の何処かで、味方を混ざり込んているらしい、その人と接触したら、船を出してくれるだって。」
「どんな人?」
「確か、赤いずきんを被っている男。」
「しかしねえちゃん、こんなに視界が悪い所じゃ見えねえぞ?」
ああ、たいまつは結構灯っているが、それでも微かに見える程度でしかない。
これも弱点の一つだ、目に見えない、感じない、つまり認識できない対象には発動できない、あと距離も大体500メートルが限界、じゃないと本島までにはワームホールだけで一瞬だしな。
「私、いい考えがありますわ!」
おお?頼もしいな、張り切っているな、この子達。
佑芳は、佐方の耳元でなんか言ったあと、二人は千月を連れて、さっき入った入り口の所まで近付き、何かをやるつもりらしい。
佑芳は、空に目を向けて、そして……
夜を…明けた……
「わーー!ま、眩しい!熱い!」
「さーちゃん!」
「あいよ!」
佐方はまた千月に姫抱っこをして、佑芳と一緒に、この建物の屋上まで飛んた、重力と風圧を操作したようだ。
「あ…あれは!?」
…………はっ!?うちは一瞬、気絶したらしいぞ!?
ふざけるなああぁぁ!!
まさか、小さな太陽を…作り出したのか!?
空気が…焼けるような感じだ、なんか風も吸い込まれたような…!
「見えた!赤いずきんの人が!」
そして、屋上に着地した瞬間、佑芳はいきなり、倒れ込んた。
「あ…あれ?」
「ゆうちゃん!?」
「ゆうちゃん!?どうしたの!?」
千月と佐方は即佑芳の傍に走った。
『……気絶したらしい、眠っているだけのようだ。』
「…そうか、よかった、さーちゃん大丈夫、眠っただけみたい。」
「あ、ああ、しかしどうして…」
「……ねえさーちゃん、こんな出鱈目なこと、昔やったことある?」
「……ないな、父ちゃんと母ちゃん、あとじっちゃんもいつもいつも言ってくれた、他人に見せられてはいけねえって、知らされたら友達は全部いなくなるって、だからあまり使ってないな、超能力って。」
なるほど、ようやくわかった、湧にいは何回も強調した、この子達の暴走を抑える人が必要だってことを。
隔離後の新生児、生まれからの超能力、この子達にとっては、こんなの手足と変わらないものだ、つまり禁止された超能力は、誕生から今まで手足が縛られたみたいな感じだった、それを解き放された今、張り切っているのは当然の反応だな。
「そうか…とりあえず移動しよう、ここはもう危ないよ?」
ああ、大失敗だ、いまは壁の両側でも大騒ぎだ。
しかしまさか、ここまで破天荒な事をやったのに、気絶しただけだったとは…5秒しかないとはいえ、超ミニ恒星を創造したぞ?こんなのもう魔法だろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます