0006 任務へ向かって

 本当、疲れた。


 電子化前の記憶がないので、いまのうちにとって、こんな運動が初めてだ。



 この1週間、研究員達の指示通りに、色んなテストを行われた。


 ただ体を動かせるだけではなく、筆記試験も混ざっている。


 イブ・システムのデータベースのお陰で、いつも全科満点だったが、千月のやつ、まさかほぼ全部がわからないとは、お陰でこっちはすげー苦労したぞ。


 こいつ、ちょっと天然で穏やかな性格と丁寧な口調なのに、まさか万年赤点だったとは、やはり第一印象はあてにならないな。


 運動テストについでだが、驚愕の一言でしかない。


 まさか、5メートルくらいの距離で、ランダムで発砲させたおもちゃの拳銃を、全部躱された、しかも6人同時に。


 ただ、数回避けた後、体がどんどん痛くなった、多分動態視力に合わせ、反射神経も人間離れになったけど、やはり筋肉が持たないだろうな。



「わーー!いーちゃん可愛い!ヤバい、ちっちゃい!可愛い過ぎます!これ本当に人間なの!?」


『何言ってんだよ!おまえ達にとっては異星生物だが、生物構造は地球人とほぼ同じだ!』


 まったく、休憩時間に赤毛が来て、昨日千月が頼んたうちの写真を持ってきたら、このザマだ。


「身長低すぎます!超可愛い!130センチくらい?お人形みたい!髪も綺麗な紫色、しかも超長い!」


 おまえ…キャラ変わってんぞ?興奮しすぎ!


 しかし、この写真は一体どういうことだっ!?


「いーちゃんって、昔はこんなエッチな服が好きなんですね?これパジャマ?」


『違う!どういう訳か分からないが、こんな写真うちも初めて見たぞ!?』


 研究所で見た写真は、普通の服だったぞ?


 クソーー!赤毛のやつ、いつかぶっ殺してやる!


 ああ…死にたいわ。


 っていうかうち、昔は一体どんな人間なんだ?



 そして、遂に任務遂行当日にやってきた。


 この1週間、テストの間合いに色々質問したのだが、うちらの状態と問題以外の質問は、全部答えてくれなかった。


 赤毛のやつも結構苦労したな、主に千月とうちから毎日の質問攻め、答えられないもの以外は何でも丁寧かつ細かく説明してくれる。


 千月の事情も全部聞いた、こいつも苦労するな、でも自業自得だろう。



 今は、午前4時、まもなく日が昇るだろう。


 うちらは中国福建の泉港にある小さな港から出航し、今は軍艦の中にいる、古いものだ、しかし何のためにわざわざ退役艦を?



 艦内の休憩室へ案内されて、そのまま赤毛と一緒に座った。


「さて、私達の箝口令は、出航してから一部解禁されました、質問があればどうぞ、これは最後のチャンスになります。」


 やっとか!もうそろそろ我慢出来なくなった!


『千月、まずはうちからだ、よろしく。』


「わかりました。」


 千月は、うちの質問を全部赤毛に伝えた。


 赤毛は目を閉じたあと、深く考えた様子。


「まずは、あなたは眠っている23年間の出来事と、今地球上にいる氷人の情報と、どうしてこんなに急がせるのか、なぜ強引にロシアからここまで連れてきて、強引に任務を参加させて、強引に元の仕事を停止させるのか、の質問に対では、残念ながらお答えすることはできません。」


 やっぱりか、一部解禁って、結局うちにとってほぼ無意味だ。


「それと、少尉に問いかけても、多分無駄でしょう、少尉もわからないと思います。」


「え?何のことです?氷人なら、テレビで見たことありますけど?」


 つまり、公表されてない極秘の事件ということか、それにテレビだなんて、一般人にも公表された事など、大抵はダミー情報だろう。


「続いて、何故飛行機ではなく、船で移動することに対で。」


 そうだ、台湾にも空港があるはずだ、なんでわざわざ船を、しかも、軍艦だぞ?


「これは、口で説明するより、自分の目で見た方が早いでしょう、30分くらいで到着するはずですから、後で説明しましょう。」


 30分?早すぎない?


「最後は、任務に対でですが、主の任務は4つですね。」


 4つもあるのかよ!?


「一つ目は、ある物品の回収、ただどんな物品なのか、私も知りません、知っているのは少尉だけです。」


「はい…私は日本で、この仕事を引き受けた翌日、赤毛さんはアメリカのよくわらない場所に連れて行って、任務に対での説明を、私一人だけで受けました、誰にも知らせてはいけないって、この事を言い出したら…」


『死刑…か?』


「…………」


 やっぱりか、いやらしいことをしやがって。


「赤毛…ですか、フフフ…」


 なに笑ってんだこの赤毛は、不気味だ!


「あ、ああ!すみません、いーちゃんがいつもそう呼んだから、つい…」


「まあそれでいい、本題に戻りましょう、残った3つは、それも現地に到着してから説明した方がいいと思います。」


『え?まさか千月、おまえもわからないのか?』


「ええ、任務は4つもあるっというのは知っていますが、説明してくれたのは一つしかありません。」


 なるほど、まああと少しだ、そんなに急がなくてもいいだろう。


「私からも一つ…どうしてこんな服を?」


「それも到着してから説明します。」


「あの…サイズが合わないのでかなりきついですけど。」


「…………」


 てめえ!どこを見てやがる!


「ゴホン、すみません、身長に合わせて用意したものですが、まさか少尉のむ…」


「……なんかいった?」


「と、とにかく予想外です、もう時間がないので、新しい服を作る時間もありません、どうかご辛抱を…台湾に着いたら、好きな服に変えてもいいのです。」


「はあ……」



 赤毛はこの間に、色んな物を用意し、大きなリュックの中に入れ、千月の前に置いた後、部屋から出た行った。


 中身を見ると、サバイバルによく使う物と、千月が今着た服と同じのものは2着もある、あと普通の生活用品と…なぜかナプキンまで…。


 そんなもの、千月の鞄にもいっぱいあるはず…だと思う。


 そういえば千月の鞄の中身はよく知らないな、女性用品がいっぱい入ってるって言ったけど、実際に見たことない。


「え?ええ?どうして全部私の愛用ブランドが…」


『はあ?本当か?』


「え、ええ、このシャンプーも、香水も、ナプキンまでも…」


 赤毛のやつ、真面目のように見えるが、実は変態か!!


「ええ?これは?」


『これは、台湾ドルだな、100万もあるぞ、今の日本円にすれば400万くらい、物価と収入の比例から見れば、1000万くらいの価値があるぞ。』


「ええーー!?そんなに!?」


 実際はわからないけどな、23年も経ったし、まあどうでもいいけど。



 そして、船は止まった。


 止まったあとすぐ、赤毛が来た。


「あれ?着きました?」


「ああ、そのリュックを持って、甲板に出ましょう。」


「ええ?こんな重そうなリュック、私独りで背負うの!?」


『他に誰がいるんだ!?』


「ははっ、大丈夫ですよ、重くないはずです、取ってみてください。」


 千月はリュックに両手を出し、下から持ち上げたのだが、まったく重量を感じない。


「これは…」


 どういうことだ?


「技術の進歩です。」


 またそれか!


「まあ元々そんなに重いものを入っていません、このリュックは新しい技術で作ったもので、ある程度の重量を軽減できます、限度がありますが、是非活用してください。」


 この23年間、一体どこまで進んたか?


「では、参りましょう。」


 千月はそのままリュックを背負い、赤毛と一緒に甲板に出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る