あなたを送りだす 午後6時 『雨のなか』

幾ばくかの涙を浮かべ

あなたを送りだす

午後6時

ぼつぼつと頭のうえで

傘が鳴る


幾千幾万もの雨粒が

まるで針みたく

目に映る

降り注ぐ針のなか

雨のなか


傘を飛び出したあなたを

引き止めるでもなく

見送った

わたしはしばらく

立っていた


今度という日はないことを

きっと判っていた

ふたりとも

だからこそ名前を

呼びもせず


雨の針はネオンのなかで

白く赤くきらめき

貫く

青い傘の

なかまでも


幾ばくかの涙を浮かべ

わたしは歌った

午後6時

ぼつぼつと濡れながら

雨のなか


さようなら

さようなら




20110930

お題003『雨の中』

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