第一話





僕の名前は、絹旗正義。

所謂、普通の一般人である。

成績もそれほど良い訳では無く

かと言って、飛び切り悪い訳ではない・・・

・・・と思いたい。

目立つ様な特技は持ってないし

これと言って注目を浴びる様な趣味も持ってない。

当然、これらは意識的にやっている訳でも無い。





「 正義くん 」





家までの帰宅途中。

そう遠くも無く

かと言って近くもない道のりを歩いていると

少しやつれている様で元気いっぱいの女性の声が

彼の足を止めた。



声のする方へと体を向けると。





「 ?、ああ!、確か・・・、大森さん!。

  どうかされましたか・・・? 」


「 これ、この前

  ゴミ袋運ぶの手伝ってくれたでしょ?

  その御礼・・・! 」


「 い、いいんですよ!、そんな!

  礼を頂く為にしたわけでは・・・ 」


「 ふふ、まぁまぁ、遠慮なさらず。

  いつも御世話になってるからねぇ・・・ 」


「 私は、何せ、もう御婆さんだからねぇ・・・

  もう足腰もあっちもこっちもガタが来てて

  若い頃みたいに、走り回る事は難しいから。

  説教か、このくらいしか

  気軽に助け方ってのも、無いもんでね。

  まぁ、婆さんのしようもない我が儘だと思って

  受け取って貰えないかい・・・? 」


「 あはは・・・、はは・・・ 」



亀の甲より年の甲とは、よく言ったものだ。

そう来られては、切り返すのは

よっぽどの何か物を持てない理由がない限りは、難しいだろう。



「 ・・・いただきます。 」


「 ありがとねぇ、ほっほっほ! 」




ふと、視線を逸らすと二階の窓が見えた。




「 あの・・・、あそこの部屋って。 」




少し気になって尋ねてみる。




「 ああ・・・、あそこね。 」


「 あそこは・・・、孫の武志の部屋だよ。 」


「 武志・・・、さん? 」


「 うん・・・、昔は元気で明るい子だったんだけどね。

  元気過ぎて、すぐ私の手を離れちゃって。

  よく手を焼いたもんさ・・・。 」


「 ・・・それって。 」


「 ・・・本当に、突然だった。

  此処最近になって、急に

  いきなり、家に閉じこもる様になっちゃってね。

  何も前触れも無く・・・ 」


「 ・・・ 」


「 全く・・・、何が起こってるんだろうね・・・ 」







・・・・・








「 (結局、押し切られて受け取ってしまった・・・) 」



「 (中身は・・・、御饅頭か。

   家に緑茶あったっけな・・・。) 」






再び、自宅への帰路を歩く。

周囲に気を付けて、少し足を止めて

軽く中身を確認すると

多くの種類が入っているだろう大きさ。

と言っても二段も三段もある訳ではないが

それなりの個数が入っているだろう薄い箱が入っていた。


記憶を辿り。

在庫の個数を数えつつ

足を運ぶ作業へと戻る。





両親は、海外へ仕事で出張している。

なので、帰ったら家で一人だ。

兄弟姉妹は・・・、悲しい事に居ない。

欲しいとは思うけど

今、子供が産まれましたとか連絡を急に寄越されても

それはそれで、忙しくなるだろうし。








「 よう!、絹旗! 」


「 あ、大田先生!、こんにちは! 」





暫く歩くと

今度は、少し圧と熱の入った

勢いのある男性の声が聞こえて来た。

少年は、其方の方へ振り向く。



「 これから帰る所か? 」


「 はい、そうです。

  ・・・あれ、でも何で大田先生が此処に・・・? 」


「 ああ!、新しいトレーニングコースの下見だよ。 」


「 ( ああ、そうか。

    大田先生って体育の授業と運動部の部活の顧問

    兼任してるんだっけ) 」


「 ずっと同じコースだけだと

  筋肉も偏ってしまうからな。

  こうして適度にコースを変えて

  適度に筋肉を休めつつ、バランスよく鍛え上げるのだ。 」


「 バランスと経験。そして、精神の底から湧き立つ根性!。

  その先に、最高の肉体は生まれる!

  移り変わる高さや低さの波にいち早く対応し

  ペース配分する技術を体に覚えさせるのさ! 」


「 はは・・・、大変ですね。 」


「 絹旗も、運動部入ってみたらどうだ?

  運動はいいぞ!

  お前の様な好青年なら!、いつでも歓迎だ! 」


「 僕は・・・、まぁ・・・その・・・

  考えては起きます。 」


「 ハッハッハ! 」




大田先生は

体育会系らしい・・・、って言い方も変だけど。

エネルギッシュで豪快な性格の人だ。

でも、雑に見えて、確りと生徒の事も気に掛けられる。

先生としての役目は真っ当してるし

自分の仕事を誇りにも思ってる。


あんまり運動が得意じゃない僕には

少し相性は悪いけど

良い人だし、良い先生だとは、僕は思う。






「 ・・・まぁ、冗談はさておき

  実は、最近、ここら辺で不審者を見かけたという情報があってな。 」


「 !、・・・不審者、ですか・・・ 」


「 ・・・ああ、いや

  そう身構えなくていい。

  厳密に言えば・・・

  怪しい人物と言った方が正しい。 」


「 怪しい・・・人物・・・? 」


「 近くの交番から連絡が着てな。

  相手は、どうやら少女らしいんだ。 」


「 ・・・少、女? 」



不可思議な情報に

少年は首を傾げる。



「 ああ。そういう反応を見せるのも分かる。

  まぁ、それだけであれば

  何も警戒する程の事じゃ無いんだが。

  この話には続きがあってな。 」


「 ・・・その、続きというのは 」


「 ・・・私たちに情報をくれた警官は

  最初は、迷子か何かかと思ったそうなんだ。

  それで、話しかけようとしたら

  一目散に逃げられた、と。


  他にも、何者かに連絡していた。

  それも、特定の誰か一人というよりも

  集団に向けて話していた様に見えたそうだ。

  何より、巨漢や、明らかに戦闘慣れしているであろう集団を指揮していたという

  目撃証言もある。 」


「 ・・・それは・・・

  確かに、怪しいですね。 」


「 ああ、信じ難い話ではあるが

  こうして情報が上がっている以上

  生徒を危険に晒す訳にはいかん。

  だから、コースの確認も兼ねて

  こうしてパトロールをしていた、という訳さ。 」


「 ・・・なるほど。 」


「 連中は、何か

  というより、誰かを探している様子だったそうだ。

  それも、特定の個人というよりも

  何らかの条件を満たせる人間を見定めている様だった、と。 」


「 誰か個人ではない以上。

  お前が標的にされる危険性もある。 」


「 特に、お前は親御さんだって

  海外へ出張なさっているのだろう?。 」


「 ・・・十分、気を付けるんだぞ

  何かあったら、すぐに連絡するんだ。

  分かったな? 」


「 ・・・はい、ありがとうございます。

  大田先生。 」


「 うん、気を付けて帰るんだぞ。 」








  







「 ・・・不審者、か・・・ 」


























・・・・・・・・・・・




















???「 ・・・遂に、見つけたぞ・・・!

     我々の悲願達成の鍵となる人物を・・・! 」


????「 ですが、団長。

      相手は、子供です。

      我々の計画において

      本当に、この少年が

      重要な、を担える程の人材なのでしょうか? 」


?????「 オレは、十分キョーミあるけどなァ・・・、コイツの事。 」


??「 ・・・その程度の人材なら

    斬り捨てるだけだ。 」


???「 コラ!、貴様!

     言葉は慎めと言っておろうが!、バカ者が! 」






???「 此処から・・・、此処から始まるのだ!

     我々の計画・・・ 」


???「 いや・・・ 」



???「 我々の物語は! 」









???「 待っていろ・・・ 」





???「 絹旗 正義 ! 」







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極悪軍隊は、ヒーローになりたい。 下園 悠莉 @Yuri_Simozono_2017

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