第8話 ヒーローショー

そのすぐ隣では、舞台の上でヒーローショーが行われていた。ヒーローショーと言っても、戦隊ものではない。


今舞台に立っているのは、いかにも悪人のような、ボサボサな茶髪に無精髭を生やした、山賊のような姿のオッサン一人であった。


「グヘヘへへ、悪い子はいねーかぁ! 悪い子はいねーかぁ!」


山賊のような男がレプリカの斧を舐めづると、舞台の前の席の観客、複数の子供たちが本気で泣き始めた。


(おいおい、ガチで泣くなよ……こん畜生……)


山賊のような男は、泣き止まない子どもたちを前にして、困惑の色を浮かばせていた。


(クソッタレ……ヒーローショーの重役にスカウトされたと思ったら、思っきし悪役じゃねぇか……俺様がやりたかったのはヒーローの役だったってのによぉ……)


「貴様、何をしている!」


そこに颯爽(さっそう)と現れたのは、日本海兵のような服装に白い軍手をした美青年だ。子どもたちは泣き止み始め、一斉にその名を呼んだ。


「ヴァルカンだ! 秘宝大会ベスト3の!!」


彼こそがこのヒーローショーの、ヒーロー。ブラウ・ヴァルカンである。ヴァルカンは腰に帯刀していた日本刀をギラリと抜いた。


「某の名は、ブラウ・ヴァルカン。貴様の数多の蛮行、成敗致す!」


ヴァルカンは日本刀を構え、山賊のような男に振りかざした。こちらも勿論レプリカではあるが。


山賊のような男は、頭上に迫った日本刀を咄嗟に両手で白刃取りした。


「おお、危ねえ。危ねえ」


「んなっ!? 話が違うぞ……!?」


「身なりの良いテメェに俺様の気持ちが分かるか!? こうなったらヤケだ。好き勝手やらせて貰うぜぇ!」


山賊のような男は用意されていた台本を無視して、日本刀を上へと払い退けた。そして両手で斧を振りかざし、舌なめずりをしながら、


「死ねやぁぁぁっ!」


と叫びながら、レプリカの斧を振りかざした。

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