第7話 氷室冷願
「あっ、いました! ゆうくーん!」
遊園地エリアの入口で、栗毛色の髪の男の子、たくみが手を振っていた。黒髪の男の子、ゆうたは手を振り返して駆け寄った。
「悪い、待たせちまったな」
「いえいえ、僕も今来たところですから」
たくみは姉の前以外では、基本的に敬語を使う。同い年の相手に対してもだ。
「さっそく中へ入ろうぜ!」
「そうですね!」
ゆうたはパンフレットに付いていたチケットを切り取り、受付のお姉さんに手渡した。たくみも同様にチケットを切って渡す。
「2名様ですね、いってらっしゃい」
受付のお姉さんは笑顔で、二人を遊園地エリアのへ通した。
遊園地エリアの中は、数百人を超える子供たちが溢れており、どの子も無邪気にはしゃぎ回っていた。
「やぁ、君たち。ようこそ、子供たちだけの夢の国へ」
そう言って出迎えたのは、青いスーツ姿の高齢の男性だった。高齢と言っても、40代前半から50代くらいだろうか。オールバックの白髪にサンタのような白い髭がそう見せているのかもしれない。
「おじさん、誰?」
「ゆうくん、いきなりそれは失礼ですよ……」
「そ、そうか……?」
たくみが焦って耳打ちすると、青いスーツの男性は「ハッハッハ」と高笑いをした。
「おじさんで結構だよ。でも本当は、『理事長』と呼んでほしいところかな」
「理事長……? あっ……!」
そのフレーズに、たくみは何か思い当たることがあったようだ。
「学校で1番偉い人ですね!」
「Exactory! ……正解だ!」
青いスーツの男性は、紳士のようにお辞儀をしながら言った。
「私(わたくし)は陽光中学校の理事長を務めている、氷室(ひむろ) 冷願(れいがん)。そしてこのイベントの主催者でもある。今日は存分に楽しんでくれたまえ」
「にいちゃんの学校の……」
「そうだったんですね!」
「That's Light! ……その通り!」
話によると、遊園地エリアが完成するまでには、まだ少し時間がかかるらしい。だがこの理事長、氷室 冷願が、子供たちの生の声を取り入れ、より完成度の高いテーマパークを作ろうと言ったことで、プレオープンという形になったと言う。
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