第6話 秘宝大会

真逆の方角からは、黒髪の少年と黒髪の男の子が遊園地エリアに向かって距離を空けながら歩いていた。


「いつまで着いてくるんだよ、にいちゃん……」


「…………」 


黒髪の男の子は、無言で少し後ろを歩く年上の少年に話しかけるが、少年は何も答えなかった。


すると黒髪の少年のポケットから、青い雛鳥がひょこっと顔を出した。


「あんた一人だと心配だから着いて来たのよッ」


「んだよ……ガキじゃないんだし平気だよ」


「物騒な世の中なのよッ」


陽光町は治安のいい町ではあるが、黒髪の少年は弟を心配して着いてきたようだ。


「ところでなによッ、アンタの持ってるそれッ」 


「これか? これは今日のプレオープンのパンフレットだぜ!」


黒髪の男の子が青い雛鳥に見せたのは、栗毛色の髪の男の子が持っていたのと一緒のパンフレットだ。


「あらッ、秘宝バトルのイベントもあるのねッ」


「そう! そうなんだよ!」


青い雛鳥のつぶやきに、男の子は勢いよく食いついた。


「今日のイベントには秘宝大会3位のブラウ・ヴァルカンが来るんだって! 生でプロの試合が見られるなんて、絶対行くしかないだろ!?」


「秘宝大会ってッ、世界で三番目に強い秘宝使いってことッ?」


「ああ、そうだぜ!」


それを聞いた青い雛鳥は、黒髪の少年の肩を掴んでゆさゆさと揺らした。


「黒城ッ、アタシもその大会出るわッ!」


「……興味ないな」


「なんでよッ!?」


「……俺は非干渉主義だ。誰かと競い合うようなことはしない」


「またそれッ!? そうやってアンタは……」


青い雛鳥がピィピィと騒ぎ、黒髪の少年が無言で聞き流す、いつもの光景である。


そうこうしているうちに、目的地に到着していた。黒髪の男の子はすでに、遊園地の中へと走っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る