第5話 プレオープン

この物語の舞台となるのは、田舎と都会の中間規模の町、陽光町(ようこうちょう)。太陽の光が眩いくらいに差し込み、子供たちの元気な声が聞こえてくる、賑やかな町である。


そんな町の商店街の通りを、栗毛色の髪の姉弟(きょうだい)が手を繋ぎながら仲睦まじく歩いていた。


「ねぇね知ってる? 陽光公園に新しいアミューズメント施設ができるんだって!」


「アミューズメント施設?」


栗毛色の髪を上部で編み込んだ、清楚な白のワンピースを着た少女は、キョトンとした表情で聞き返した。 


「うん! 陽光公園でずっと工事してたとこ。あそこが【遊園地エリア】としてオープンするんだって!」


弟は手に持っていたパンフレットを姉に手渡した。パンフレットには大々と、『遊園地エリア、プレオープン記念祭』と書かれており、その日付は今日であった。


「そうなんだぁ、全然知らなかった〜」


「この広告、小学校で貰ったんだ」


パンフレットの右上には三角形の切り取り線があり、小学生以下限定と書かれている。これが入場券として使えるようだ。


「ゆう君とも待ち合わせの約束してるんだよ!」


「ゆうたくんも?」


「うん!」


(じゃあもしかしたら、黒城くんも……って、何考えてるんだろ私!)


「……? どうしたの、ねぇね」


栗毛色の髪の少女は、赤らめた頬をブンブンと左右に振っていた。


商店街を抜けると、目の前に公園があった。ここが遊園地エリアのプレオープン祭が行われるという陽光公園だ。


「着いた!」


弟の男の子は公園に着くや、数メートルほど走って姉に手を振った。


「たくみ、一人でも大丈夫?」


「うん! ここまでありがとう、ねぇね」


「どういたしまして!」


(小学生までのイベントかぁ……。遊園地、私も遊びたかったなぁ……)


栗毛色の髪の少女は弟を笑顔で見送って、その場をあとにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る