第2話 強襲

熱で溶けきった扉の奥には、さらに下の階へと続く階段があった。おそらくこの先に、黒城たちがここに来た目的がある。


青い雛鳥は、黒城の携帯電話を反対側のポケットから器用に抜き取り、嘴(くちばし)で突いて電話を掛けた。電話の向こうから、大人の女性の声が聞こえてくる。


『黒城くん? あなたから掛けてくるなんて珍しいわね。そっちの様子はどう?』


「行方不明になってた子供たちッ、あとどれくらいいるのッ!?」


『ピーちゃん!? あと一人だけよ。他は全員保護されたわ』


「やってくれるわねッ、さすが乃呑ちゃんッ!」


青い雛鳥が喜ぶのとは裏腹に、電話相手の声のトーンが少し下がった。


『それが、もう一度施設に入って行ったっきり、乃呑ちゃんからの応答が無いのよ。てっきりあなた達と合流してると思ってたのだけど』


「さぁッ、見てないわよッ?」


一人と一羽の会話を聞きながら、黒城は下へと続く階段をひたすらに降りていた。そして、階段を降りきって大広間に出ると、目の前の光景に言葉を失った。


二人の少年少女が、ボロボロの状態で床に横たわっていたのだ。


少年の方は仰向けの状態で、顔を覆いかぶさるように学生帽が乗せられていた。息も絶え絶えの状態で、肩で呼吸しているように見える。


少女の方はうつ伏せの状態で、苦い表情をしながら黒城を睨みつけた。声が出ない状態なのか、口の動きで、必死に何かを伝えようとしているようにも見える。


「乃呑ちゃんッ!!」


「……待て、ヒナコ」


青い雛鳥は、横たわっている茶髪のポニーテールの少女に駆け寄ろうとしたが、黒城は遮るように立ち塞がった。


「どうしてッ……どうして邪魔するのよッ! アタシの【癒やしの炎】で今すぐ治してあげないとッ!!」


「……菜の花の口の動き。短い単語だったが、おかげで状況を把握できた」


黒城はゆっくりと、横たわる二人の元へと歩きだした。


「……テリトリー……つまり……」


そしてズボンのチェーンを素早く引き抜くと、息を潜めて闇に潜む一匹の獣を、鎖で拘束した。光にあてられ姿を晒したのは、白い獣だ。


「……しまっ……」


「グルアァァァァッ!!」


黒城が気づいてから、言い終える前に、白い獣とは別の、黒い獣が咆哮と共に襲いかかった。

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