【劇場版】ヨハネと獣の黙示録
上崎 司 (かみざき つかさ)
第1話 新たなる黙示録(ものがたり)
黒髪の少年、黒城(こくじょう) 弾(だん)は廃墟となった研究施設の中を息を切らせて走っていた。
彼の背後には誰もいない。いや、正確には〈いなくなった〉。彼を先へ進ませるため、身を呈してその場を引き受けた仲間がいた。
「黒城ッ、振り返っちゃダメよッ! 今は目の前のことだけを考えなさいッ!」
「……ああ!」
黒髪の少年のシルバーチェーン付きポケットから、青い雛鳥がひょこっと顔を出して彼を鼓舞する。彼が【典型的な巻き込まれ主人公】と呼ばれる所以(ゆえん)であり、彼のパートナーでもある……、
「ピーちゃんよッ!」
炎属性のSランク秘宝獣、Phoenix(フェニックス)。自称ピーちゃんである。
黒髪の少年は徐々に走りを緩め、そしてドアノブの付いたドアの前で足を止めた。ドアノブを回し、ガチャガチャとドアを手前に引く。その後、軽く助走を付けて体当たりする……が、ドアはビクともしていない。
「……ヒナコ、ドアに向けて火炎弾だ」
「あらッ、それって器物損壊にならないッ?」
「……今はそれしか方法がない」
ヒナコというのは、黒城 弾が青い雛鳥を呼ぶときの愛称である。ちなみに彼の台詞に……という間があるのは、【考えてから言葉にする】という癖があるからだ。
「わかったわッ、ドアから離れなさいッ」
青い雛鳥は黒城のポケットから外に出ると、空中をパタパタと羽ばたきながら、大きく息を吸い込んだ。この行動は、火炎弾の発動モーションではない。火炎弾よりもさらに上の…
「必殺ッ……蒼炎弾ッ!」
空気を含んだ熱は、激しく青く燃え上がる。その熱量はドアのみならず、外壁まで溶かしきっていた。
「これで先に進めるわよッ!」
「やりすぎだ、ヒナコ……」
黒城は心の中で思ったことを、思わず口走っていた。
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