第10話 すれ違い

 美優の様子がおかしいと思った守は翌日、カフェを訪れた。

「あら、こんばんは!久し振りね!」

「桃さん、お久しぶりです!あの…昨日みーちゃんと電話で話したんですけど、様子がおかしくって…なんかありました?」

「え?……あー、」

 桃はバツが悪そうにしていた。

「なんか、あったんすね」

 桃の様子を見て、守が言った。

「大ありだ」春彦が言った。

「春彦さん!みーちゃん、なんかすごく元気ないっていうか…」

「みーちゃんはな、君と距離を置くそうだ」

「えっ!なんでですか!…僕、みーちゃんのことあまり構えてなかったけど、でも…僕、みーちゃんと仲直りしたいです。今日は、みーちゃんとたくさん話したいんです。だから…」

「会うのは、やめたほうがいい」

「春彦さん!どうしてです?」

「みーちゃんは今、守くんにとてもじゃないが会える状態じゃない」

「それって、どういう…」

「みーちゃんはな、自分を責めてるんだよ。一回デートをドタキャンされたからって守くんを困らせたことに」

「それは、みーちゃんを構えなかった僕の責任です。それは、僕が悪かったし…だから、みーちゃんが自分責めるようなことじゃないんです」

「そうだとしてもだ。みーちゃんは自分を責めてるんだよ。それに、みーちゃんは、守くんと居てはいけないと思ってるんだよ」

「どうしてです!僕とみーちゃんはお互いを愛し合ってる。愛し合っていれば…」

「みーちゃんは不安なんだよ。自分が本当に愛されているのかどうか」

「そうねえ、今まで男の人に愛されたことなんて、一度もなかったし、この愛が偽りなんじゃないかって思ってしまうんでしょうね」

「そんな…そんなこと」

「みーちゃんだってわかってる。あなたの愛は本物だってこと。でも不安なのよね。守くんモテるから」

「僕はみーちゃんしか…!」

「わかってる。けどな、守くん。守くんの部下、になるのかな。モデルの子が来てね、さんざんみーちゃんにひどいことを言ったんだよ」

「えっ?モデルの子…ああ、確かに…。僕、ショーを手がけることになってて、それで最近忙しくて。モデルの子も、選んだりしてて…モデルの子が、みーちゃんにそんなひどいことを…?」

「ああ、ひどいもんだな。」春彦は美優が言われた言葉を口にした。

「そんなひどいことを…!なんてことを言うんだ…僕はみーちゃんしか愛してないのに」その時、がたがたと音がした。階段から何かが落ちるような音ー桃と春彦、守が音のする方を振り返ると、美優が階段から落ちていた。美優が床に転がっている。


「みーちゃん!みーちゃん、しっかり!」守が一番先に駆けつけた。

「……」守は美優をゆさぶったが、返事はない。目は瞑ったままだ。桃は慌てて救急車を呼んだ。春彦も美優に声をかけた。

「みーちゃん、しっかりしろ!」

「みーちゃん、みーちゃん!しっかりして!みーちゃん、僕はね、君しか愛していないんだよ、わかるかい?…みーちゃんを傷つけるやつは許さない。みーちゃん、決して僕から離れようとしちゃ、いけないよ?僕は君の手を、絶対に離さないからね。あの子たちが言ったのは、でたらめだよ。僕は君を本気で愛している。みーちゃん、起きてよ。ね、みーちゃん!!」

 守は泣きながら美優を抱きしめていた。美優は黙って目を閉じていた。

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