第3話 突然の訪問客

 そんなこんなで忙しくしている美優に、突然の出会いが待ち受けていた。閉店時間に刻一刻と近づいていたその時、カランコロンとドアが開く音がした。ドアの方を見ると、1人の背の高いすらっとした体型の美男子が立っていた。

「いらっしゃいませ!」美優は頭を下げた。

「…まだ、大丈夫ですか?」その美男子は美優を見て言った。

「はい、大丈夫ですよ。どうぞ」美優は笑顔で言った。その男はカウンター席へ座った。

「なにになさいますか?」

「そうですね…じゃあ、コーヒーとピラフで」

「わかりました。コーヒーは先にお持ちしますか?」

「いや、ピラフと一緒で」

「わかりました。少々お待ちください」美優はお辞儀をして厨房へと入っていった。


 しばらくして、美優が厨房から出てきた。

「お待たせしました。コーヒーと、ピラフです。どうぞ、ごゆっくり」男は黙ってピラフを食べ、コーヒーを飲んだ。すると、奥から出てきた桃が男に話しかけた。

「いらっしゃいませ!…って、あら。もしかして優介くんじゃないの!」桃が微笑んだ。

「あ、もしかして…先輩じゃないですか!お久しぶりです!」男は嬉しそうに笑った。美優は不思議そうに桃と男を見ていた。

「あ、みーちゃん、紹介するわね。私の大学時代の後輩の、松田優介くんよ」

「そうなんですか…!」美優は優介を見た。

「…よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします…」美優は俯いた。

 美男子で、眩しすぎる。

「優介くんはね、警察官なのよ!すごいでしょ!」

「えっ!警察官、ですか!す、すごいですね…」美優は驚いた。

「しかも、噂によると、巡査部長なんだってー?さすがエリート!」桃が冷やかすように言った。

「やめてくださいよ。エリートってほどじゃないですよ。僕は、ただの巡査部長ですから。現場が好きなんですよ。」


「出ました、現場、命!」

「桃さん、やめてくださいって」

「捜査一課だっけ?」

「そうです」

「さっすがー!」

「僕をそんなに褒めても、なにも出ませんよ」優介は笑った。

「ゆっくりしていってね」

「はい、ありがとうございます。でも、あまり長居できないんですよ。まだ仕事が残ってるんで」

「大変ねえ」桃が眉間にしわを寄せた。

「桃さん、しわ寄ってますよ」優介が言った。

「こーらー!」桃が優介を見て言った。

「あはははは!すいません、すいませんって…いって、」桃が優介の頬をつねった。

「いたいっすよ、桃さん」桃が優介の頬を離した途端、優介が言った。


「ふふっ、ふふ」

 美優は我慢できずに笑ってしまった。それを、春彦と桃、優介が目を丸くして見ていた。その様子に気づいた美優は、はっとした。

「あっ、ごめんなさい!その…つい、面白くって…」美優が言った。

「あはははは」桃も笑った。優介も春彦も笑った。優介は、ピラフを食べ終わりコーヒーを飲み干した。

「そろそろ行かないと。すごく美味しかったです。また、時間があるときに来ますね。」優介は笑顔で言った。

「今度はいつ?」桃が言った。

「え?あー、いつになるかはわからないですけど、またそのうち。じゃ、また」優介はそう言って手を振って去っていった。


「よし、片付けしましょうか」桃が言った。桃たちは片付けを始めた。美優は食器を洗いながら桃に言った。

「知りませんでした。まさか、桃さんのお知り合いだったなんて」

「まあねー。私もびっくりしたわよ。」桃が笑って言った。

「かっこいいでしょ?優介くん」

「ええ、すごくかっこいいですよね」

「ああ見えて、彼女いないのよ」

「えっ?いないんですか?意外…」

「美男子で、すごく頭も良いのよ。それに、筋肉質だし」

「え、」美優は目を瞬かせた。

「あらー?興味ある?」

「ち、違います!そんなんじゃなくて…」

「いいのよ、素直になりなさい」桃が美優を見ながらにやりと笑った。

「優介くんは優しいし、良い男よ。優介くんと仲良くなっちゃえば?」

「そんな…そんな、恐れ多いです。あんな素敵な人、きっと、他に気になる人がいますよ。私なんて…」美優は俯いた。

「そんなことないと思うぞ?みーちゃん可愛いからな。自信持てよ」春彦が桃と美優の後ろから言った。

「わあっ!びっくりしたあ…」

 美優が驚いた。

「あははははは」春彦と桃は笑いあっていた。



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