罰が一つになりました

@grow

第1話 ちょっとしたことで罪人になる

「どんな罪に対しても、罰は無期懲役のみ」

というルールが新たにきめられた。


ちなみに、容疑者として罪罰所に来た場合、アリバイを証明できれば無罪になれる。

アリバイ:現場不在証明が可能かどうか。


漫画やドラマでは容疑者のアリバイを聞く場面が多々出てくる。でも、レシートの時間とか防犯カメラに写っている等が確認されないとアリバイを立証する手立ては少ない。


けれど、このルールが制定された現在、アリバイを作るのが簡単になった。

家で寝ていたからアリバイはない=家の鍵は施錠する時間を決めることができる。その時間内は絶対に鍵は開かない。

✳︎災害が発生した場合のみ即座に解除。

なお、各家の玄関には赤外線センサーが付いており、出入りすると管理会社にログが残る。

外出している場合でも、装着必須のブレスレットにGPSが組み込まれている為、犯行時間にいた場所がわかる。地下でも対応可。


無害な一般人にとってはアリバイが自動的に造られるのは安心材料にしかならない。


そして、無害な一般人は目撃者や通報者になる事に躊躇しない。

見て見ぬ振りも立派な罪だからだ。


たとえどんな罪でも罪は罪。

些細な罪でも罪は罪。

罪人は減らさないといけないのだ。


道では

「おいお兄さん、ここは歩きタバコ禁止区域なのわかってますか? 電柱や地面にも書いてありますよね」

「ちょ、そこのお母さん。今赤信号なのに横断歩道渡ってたよね。しかも、子供と一緒にでさ。赤信号で渡ったらダメって教わってるよね」

「はい、そこの小学生止まって止まって。今、片手運転してたよね。しかもイヤホンしてるね。目の前に人が出てきたらどうするの? 注意喚起されても聞こえないのが危険なのわかるよね」


電車では

「なあ、今ドアが閉まる状態なの分かってたよな。閉まるドアにご注意下さいってアナウンス流れてたろ。何で無理やり入ってきた? 駆け込み乗車だよな、今の」


働き盛りの男性、育児中の母親、小学生、女子高生、おばさん、etc・・・


ルール制定前ならスルーされていた罪。罪人として捕まらない様な行動が、現在では罰せられる対象となっている。


信号無視と殺人の罪を同じ重さなのはおかしいと思うかもしれない。

けれど、信号無視により車にぶつかり本人は死亡。運転手もぶつかった衝撃で車が横転し、当たりどころが悪く死亡。車が横転したことで、対向車の車とぶつかる事故が発生し、大惨事に陥る。この様な事故現場が生み出される可能性がなくはない。


大げさに聞こえるかもしれない。けれど、交通ルールを守らないといけないのは、そういった事故を発生させないためにあるのだから。


些細な罪でも、弊害になる可能性がある。だから、全ての罪に対して同じ罰を与えないといけない。

罪を犯す人が増えない様にニュースで話題にするのは、反面教師に仕立て上げる為だ。


犯罪者として捕まった人たちは刑務所で働かされる。日用品を作ったり、食材を作ったりするのが日常となる。働かないと生きていけない。

そうやって死ぬまで生き続けさせられる。


自分が犯した罪が小さいことでも、「罪」なのだから。

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