4ラブ 紙とペンとラブレター

俺には仲良いよな、と言われるくらいの人間が一人居る、あの体育館しりとり事件で助けに来たのがそいつだ。


因みに体育館しりとり事件だが、友人が体育館倉庫前に行くとバレー部の二年男女全員が扉前に集まって開かない様に扉を押さえ付けていたらしい。何やってんだと俺は思ったが、話を聞く限り鮎川が百瀬さんとくっ付く為に裏から脅………頼み、あんな状況が生まれたようだった。


空気を読めない友人は、バレー部全員が止めるのを聞かず扉をどんどん叩いてから開けたんだが、ぶっちゃけるとその行為により俺と友人は鮎川から無言の圧力を受ける事になる、これもラブコメの所為だ。


で、その友人は小学校からの腐れ縁、俺と一緒でゲームも好きだったし、勉強も出来る訳でもなく。


昔はそいつよりも友人の数は確実に俺の方が多く、クラスが違った中学生時代に友人はハブられてったっぽいが、俺の前ではそんな感じは出さず触れて欲しくない話なんだと思って聞いてはいなかった。


それに自分で言うのもあれだが、俺は友人だと思ってるし、大丈夫だろうとあの時は鷹を括っていたのは確かで。


その友人の名前は石橋源太郎いしばしけんたろう


何故、今、こんな話をするかと言うのは、お気付きであろう。



友人は中学までは前髪が長く目は隠れ黒髪もっさりヘアーで身長は俺より低かった。


しかし高校デビューした友人は、見た目がどっかのギャル男みたいになり、金髪メッシュに耳に数個のピアスを開け、カラコンを入れ、肌は真っ黒。そしてグングン伸びた身長で180センチ近くはある。


話し掛けられた時はどちらさんですかと敬語を発動したくらいだ。ま、見た目変わって周りの友人のタイプも変わった源太郎だが、俺とはそれなりの友人関係を築けてはいる。性格は余り変わっていないと俺は思っているしな。


だからだろう、こんな相談を俺にしてきたのは。


「ウィー、ちょい良い?相談あんだけどよー、俺、マジでオナ中の沙田ますださんにBIGLOVE何だわ、んで、ラブレター書いてよ?五十嵐っち、読んで感想おねしゃす!」


「いや、日本語しゃべれ、源太郎」


ういーとか言いながら拳を押し付けて来た源太郎の腕を叩き落とす。落とされても負けず、何やら書いた手紙を押し付けてくる。


一応、言葉は理解した、同じ中学で俺のクラスの委員長である沙田さんを好きだと言う話だ、源太郎の言葉だと。


何でこうも、最近ラブコメっぽい出来事が起こるのか、無意識に顔を歪めた。その表情を見た源太郎が、げきおこぷん?とか聞いてくるが、怒ってる訳ではない。偶に源太郎にイラッとするが友人には変わりない。


この前、体育館倉庫から助けてくれたのもある、多分放課後に家に帰っても助けに来てくれるのは源太郎しかいないだろうくらいの友人だ。


ラブコメっぽい事に巻き込まれたくはないが、体育館しりとり事件の借りもあり、友人の相談でもあり、ラブコメと友情を天秤にかけた結果、友情を取る事にした。


もう少し詳しく聞くと、ハブられた時期に沙田さんだけが、クラスで源太郎に話し掛け優しくしてくれたらしい、ああ、うん、ラブな第一歩な話だな!


「……ま、良い、手紙読むから待てよ。で、俺は読んでどうすりゃ良い訳?」


「そりゃ、上手く行くようにでっしょー?ウィー、イエーイ」


ハイタッチを求められたが、俺はしない。取り敢えず、俺は手紙を開き読む所から始めた。


「………………………………源太郎、沙田さん、多分バイブス上げとか書いても解んないと思うわ、つーか読んでも誰も理解出来ないんだけど」


「ウィ?マジで?渾身の出来にあげぽよってんだけど、マジありえんてぃーなんだけど」


「何処が渾身だよ、意味解んないからね、これ。ありえないのはお前だから」


読んだ手紙を俺は指摘するが、源太郎は納得が行かない表情をする。ちょ、おま、納得しないなら俺に相談すんなよ!腹立つが、一応は友人であるため、我慢する。


「マジでの部分、MJDって書いてあるけど普通に意味不明状態だし、委員長で真面目な沙田さんがそもそもギャル語を理解出来ると思うのかよ」


「でもー、五十嵐っちは理解してんじゃん?俺ぴっぴっに神ってるしー」


「それなりに付き合いは長いからだろ、DSって、多分ゲーム機か何かと勘違いしそうだな。後、このアスパラベーコン、食いもんだから、他から見たら只の食べ物だから」


「……か、ら、のぉー」


「からのー、じゃねーし!続きは何もねーから!」


脱力し、俺は読んだ手紙を返しながら真面目に告げる。


「はい、書き直し!もうさ、素直に好きですでよくね?」


「か、ら、のぉー?」


「だから続きはねーから!」


結局、源太郎は俺の忠告、いやアドバイスを無視しありのままの手紙を沙田さんの机に入れていた。


書き直す気がないなら、俺に読ませるな!

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