001 - 003 - オスト
オストは焦っていた。
日課である、雛の巣を遠目に眺めていると、一人の少女が施設へ入って行く。
「ミリイが・・・カラスに・・・?」
オストはシアとミリイの兄貴的存在で、年の近い兄弟として仲良く暮らしてきた。
2年前に異人となり、とある事情から大陸送りから逃れ、隠れ覚醒者となったものの、いまだに一番大切なのはシアとミリイ、そして母親のような存在であるフセ、そして施設の子供たちであった。
とある事情、と言っても単純な理由である。
異人孤児はイジメはもちろん、異人を糾弾する団体の餌食になりやすい。
過去には他の地区で異人孤児がリンチで殺されたケースもある。
オストはこの施設の守護者となるべく、大陸送りから逃れることを決意した。
「よう、兄貴」
「!シア!?」
「久しぶりだなあ、ちゃんと食べてるのか?」
「どうして俺がここにいるってわかったんだ!?というより施設にミリイが来てるだろ」
「逃げてきたんだよ、全く、ミリイがカラスに入るなんて想定外だったよ。あと、オストは単純だから行動パターンくらいすぐに分かるし、毎日そこから見てるのを僕もフセさんもとっくに知ってたよ」
「大陸との連絡は基本的に禁止されてるから知りようもないしな・・・」
「僕は知ろうと思えば知ることはできるけどね、それでさ、ちょっとお願いがあるんだけど、3日後までミリイを拘束して監禁してくれないかな」
「は!?お前何言ってるか分かってんのか!?」
「あーあと、雛の巣のみんなをこのエリアから遠ざけてほしい。多分、この辺りは3日後に戦場になる。それも異人同士の戦いだ」
「なんで・・・お前がそんなこと知ってるんだ?そんなことが起こるなら、街のみんなを避難させないと!」
「この戦いは逃れられない運命なんだ、この地区じゃない場所にできるかもしれないけど、結局戦いは起きてしまう。でも大丈夫、すぐに終わるから」
「お前が何を言ってるのか俺にはほんの少しも理解できない。だけどお前がこんな冗談を言う奴じゃないってことは俺が一番よく理解してる。やってみる・・・けどミリイはカラスのエリートだ。俺じゃ敵うわけがない」
「それじゃあこれ使って、飲ませるタイプの強めの睡眠薬と、注射タイプの筋弛緩剤、あと一応スタンガンと、対異人用の電気拘束ロープ、これで縛り付けると微弱な電流でうまく能力が使えなくなるんだ、全部このリュックの中に入ってるからね、多分ミリイなら話がしたいって言えば簡単に睡眠薬入りの飲み物を飲んでくれるよ。そしたらロープで縛り付けて3日安全なとこに監禁しておいて」
「お前は・・・何者なんだ?」
「僕を一番知ってるのは多分、オストだよ。オストが知らないなら、他の誰も知らない。だから安心してよ」
シアはそう笑うとオストの前から去り、呆然としたオストはミリイの元へ向かった。
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