彼らのルール

上山ナナイ

第1話彼らのルール

彼らのささやきはどこからともなくやってくる。風の木の間から、小鳥のさえずりの中から。小学校の生徒たちは歌う。小学校の生徒たち、そう彼らにはルールがある。はないちもんめ、かごめかごめ、学校の勉強、帰り道の小話。お掃除の時間。彼らにはルールがある。先生が作ったルールなのだが。彼らは大人に縛られる。それを破る少女がいる。少女はランドセルの山の上を歩き、教室のクラス番号の書かれた札に雑巾を投げつける。クラスメイト達は少女の行動に魅了され、あとに続く。先生の権威に挑戦すること、ルールを破るのは楽しいことだと。


引越しして彼らは離れ離れになる。しかし彼らは夢で繋がってる。夢の世界で彼らは遊び出す。たとえ少女がいじめられても。少女は星々の明かりに疑問を持つ。ぬいぐるみをギュッとしながら。


初恋。進学。やがて大人になる。大人達のルールはより過酷に。それでも少女は生きていく。少女の心はずっと子供のまま。彼女は公園で遊び出す。滑り台。鉄棒。砂場。近所の子供達と混ざりながら。


少女はルールを破り続ける。たとえ大人になっても。やがて少女の居場所はなくなる。男は花束を差し出す。笑いながら受け取る少女。愛にはルールなどない。くだらない大人達のルールなど。


なぜこの世はかくもルールに満ち溢れているのだろう。子供の頃の自然界すらそうだ。宇宙がめちゃくちゃになってしまうから?


ルール、それは宇宙の神秘。少女は破壊者なのか。いや、彼女は……。


星が彼女と男を照らし出す。何億年も前からやってきた過去の輝き。君は神のような人だね。男は言う。落ちぶれた私を拾ってくれた貴方が神なんじゃないの?少女は問う。


やがて子供が生まれる。いないいないばあ。少女は子供と一緒にランドセルの山の上を歩く。男は保護する。


ルールは変わっていく。世の中と一緒に。この宇宙の神秘のように。しかし彼女が破壊してしまう。彼女と子供と男は笑いだす。周りの子供達も。あはははははは。学校、それは大人達のモデルケース。少女が神なら、我々は神のモデルケースなのであろうか。


少女が夕餉の支度をする。熱い炎が燃えだす。ルール、それは狂わせてはならない。宇宙がめちゃくちゃになってしまうから。炎が彼女の手を焼かないように。


我々はこの世を作り出した神の似姿。ルールを定めたのはきっと彼ら。


愛にはルールなどあるのだろうか。遺伝子の神秘。見ただけで惹かれ合うもの。不可思議な愛のルール。


この世の黄昏まで続く、宇宙のルール。子供達は天を見上げて。


残酷なこの世に神などあるのであろうか。飢餓、疫病、災厄。いや、きっといるのであろう。我々人類が機械を作るように。人間を作ったのだ。


動植物にも魂はあるのだろうか。人形にも宿る魂。魂のルール。物にも宿る。


少女の魂はどこからやってきた?海の向こうから。彼方から。彼女は何者なのか。神の似姿。子供達の神。神々のルールを打ち砕くもの。美しい少女。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼らのルール 上山ナナイ @nanai_tori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ