第270話 ザウス王国魔剣部隊
ザウス王国聖騎士長ロナウドは軍団長を一人通常の激震で斬り伏せ、続く軍団長三人を相手に真っ赤な炎をあげながら激震で動きを止め、サラマンダーのブレスで炎に包み込む。
そこへ守護者の頭上からの一閃。
盾を持ち上げてその斬撃を受け、盾による死角から突きで反撃を繰り出す。
盾の表面を転がるようにして回避した守護者に向けて今度はサラマンダーからのブレス。
直撃するものの、膨大な魔力を放って一瞬にして消化し向き直る。
驚きの表情を見せる守護者だが、強敵を見つけて嬉しそうに嗤う。
「強いな。俺は守護者のベルナルド。お前の名を聞いておこう」
「ザウス王国聖騎士長ロナウドじゃ。お主が相手であれぱ存分に戦いを楽しめそうじゃな!」
加速して激震による一撃を見舞うロナウド。
共振魔法によりベルナルドの腕の痺れが広がり、炎を放ってその魔力を振り払う。
その後も向い来るロナウドの強襲に、激震を体内に残すと危険と判断したベルナルドは炎の出力を上げて防御に徹する。
片手剣のロナウドに対し両手剣のベルナルドの剣は速く、激震による斬撃を受け払いながら幾度となく反撃を繰り出していく。
しかし盾に阻まれその剣はロナウドの体を捉える事はできず、盾で受けるのを合図にしているのかサラマンダーがブレスを放って牽制、ロナウドの突きがベルナルドの腹部目掛けて繰り出される。
咄嗟に回避するも全て避けきる事はできずにわずかに傷を負い、超速回復に魔力を回しながらロナウドと斬り結ぶ。
ベルナルドはこれまで盾を使う相手と戦った事がなく、これ程までに戦いにくいとは思わなかったのだろう。
思うように自分の剣を振るう事ができない。
しかし自分の強みを相手に押し付けてこその戦いであり、強者の証ともいえる。
自分と対等がそれ以上の相手との戦いにベルナルドも嬉しそうに剣を振るう。
淡い青色をした雷球を周囲に複数展開して軍団長に斬り掛かったレオナルドは、斬り結んだと同時に雷球が引き寄せられて包囲した魔人を雷撃が襲う。
一瞬で意識を刈り取られた魔人は地面へと落下していき、レオナルドは次の獲物を探しながら新たに雷球を作り出す。
これは飛ぶ斬撃にレオナルドなりのアレンジを加え、雷球として放出した魔力を魔剣に落としている。
雷魔法は風魔法などとは違い、斬撃として放っても真っ直ぐに飛ぶ事はない。
近くにある物質目掛けてそのまま落ちてしまうのだ。
プラズマ球として放って雷撃を浴びせる事は可能だが、速度がそれ程速くない為飛行戦闘では使用する事ができない。
それならばと射出する事を諦め、周囲に雷球を展開して自分の魔剣に落とす事で威力と速度を稼ぐ。
雷球を利用しての緊急回避も可能な為、レオナルドの飛行戦闘の幅を大きく向上させている。
軍団長格が向かって来ないならばとレオナルドは魔貴族と思われる老人に斬り掛かる。
そこに直属の部下であろう軍団長格が間に入り込み、レオナルドと斬り結ぶが雷球を魔貴族に掻き消されてしまう。
二体一では分が悪いと判断したレオナルドは下方に降下しつつ飛行戦闘に持ち込む。
新たに雷球を作り出し、追ってくる魔貴族と軍団長が二人。
ここから三体一での戦いとなるようだ。
速度で勝るレオナルドは雷球を置き去りにしてさらに加速。
背後から追う魔人が雷球を躱し、レオナルドとの距離を詰めようとしたところで罠を発動。
雷球とレオナルドの直線上にいた軍団長は雷撃を浴びて地面に向かって落下していく。
倒す事はできないまでもある程度のダメージを与え、油断していた事で麻痺も残るだろう。
地面に叩きつけられれば相当なダメージとなるはずだ。
距離を詰めた魔貴族を急降下する事で回避し、もう一人の軍団長格の背後に回り込んで背中に雷撃を乗せて斬り掛かる。
飛行装備の付け根を斬り付けられた事で状態維持する事ができずに落下し、しばらくは戦線に復帰する事も難しいと思われる。
しかしここへ魔貴族が斬り掛かり、レオナルドも雷撃を纏わずにその一撃を受けて弾かれる。
そこから魔貴族の剣戟にレオナルドは防戦を強いられるも盾によって全ての斬撃を受け、防御に徹しながらも再び雷球を錬成。
反撃の突きを魔貴族は受ける事なく回避し、レオナルドの隙を探して空を舞う。
襲い来る魔人に旋風を放って牽制するレミリアは近接戦闘は得意ではない。
ある程度の訓練を受けているが、防御に徹したものであり攻撃の技術は持たない。
魔術師団副団長というその立場から近接訓練をこれまでほとんどしてこなかった為だ。
しかしこの戦争においては近接戦もあるだろうと聖騎士と共に訓練しており、魔杖による防御だけに絞って訓練している。
向かって来るのは軍団長であろう女性の魔人。
爪刃を振るって切り掛かるもレミリアは魔杖で受けて下方へと落下しながら加速する。
風魔法を得意とするレミリアであれば、近接よりも高速飛行からの遠距離攻撃で挑んだ方が有利であり、淡い緑色をした小さな風の球体、風の刃による嵐を圧縮した嵐球を軍団長目掛けて放つ。
速度に特化した魔人ではなさそうだが、距離がある事で余裕をもって躱してレミリアを追う。
しかしレミリアの意思でその圧縮された嵐球はいつでも解除が可能であり、解除と同時にその体積が膨れ上がる。
魔人の後方で10メートル程度の円形の嵐となって弾けて霧散した。
空を舞う背後の魔人に当てるのは難しいが、嵐球の解除のタイミングを合わせればその飛行を乱す事ができるはず。
霧散した嵐球を見た為か、魔貴族女性と他の軍団長がレミリアを追う。
一対三の戦いとなるが、飛行速度で上回っている為かそれ程不安はない。
嵐球を二発放って魔人が躱すのを見計らい、少しタイミングをずらして球形を解除。
レミリアは急上昇して魔人の上空から再び嵐球を放ち、飛行を乱された魔人に着弾、解除すると全身を切り刻まれて落下していく。
嵐球に使用する魔力量はそれ程高くはない為死ぬ事はないだろう。
レミリアの急上昇に追従できない魔人二人の背後に回り込み、後方から嵐球を放ってその飛行を乱す。
そのまま魔人に接近しては自分も巻き込まれてしまう為左方向へと旋回し、飛行を乱された魔人を旋風によって全身にダメージを与え、体勢の保たなくなったところに再び嵐球。
遠距離攻撃の速度としては嵐球よりも旋風の方が早い為、距離が離れている場合には旋風の方が有利と判断した。
二人目の軍団長格を倒し、魔貴族女性は風の刃を放ってレミリアを追う。
風の刃は嵐球を解除する事で相殺し、解除された嵐を回り込みながら方向転換。
速度を落として嵐を回り込む魔貴族だが、そこに配された嵐球に気付かず着弾。
膨れ上がった風の刃に切り刻まれるも、風の衣を纏った魔貴族は浅い傷を残すのみ。
通常の嵐球では大きなダメージを与える事は難しそうだ。
それならばと拡散型の嵐球ではなく圧縮型の嵐球を作り出し、魔貴族の風の衣を突き破ろうとレミリアは嵐球を放つ。
しかし魔貴族にあっさりと回避され、拡散されることのない嵐球は飛行を阻害する事もできない。
拡散型と圧縮型を使い分けながら戦闘するべきと判断して魔貴族に臨む。
聖騎士ダルクに向かう魔人は二人。
守護者であるケレンの直属の部下であろう軍団長の二人は強い殺意をもってダルクに襲い掛かる。
ケレンの誘いを断った事が許せないのだろう、火炎を放ってダルクと斬り結ぶも暴風による精霊魔法で払い除け、続く二人目の斬撃を余裕をもって受け流す。
軍団長格の力を知りたいと魔剣を振るうダルクには慢心が見えるものの、これまで積み上げてきた訓練からの自信によるものだろう。
聖騎士長ロナウドでさえ訓練相手に指名する程の実力を持つ。
以前の擬似魔剣とは違う、圧倒的な出力を持った魔剣テンペストを振るい、軍団長二人を相手に後れをとる事はない。
魔人の火炎を掻き消し、高い強化をされた爪刃を受け、その全てを払い除けて反撃を繰り出す。
全力ではない普段の訓練と同じような感覚で魔人に臨む。
ダルクは問題なく戦う事ができるものの、さすがは軍団長であり聖騎士と同等かそれ以上の実力はあるだろう。
剣術、爪術というのだろうか、振るわれる斬撃は鋭く隙がない。
飛行装備の能力が上回っていなければ命を落とす聖騎士もいたかもしれない。
ダルクの実力を認めたのか精霊剣を持つ魔貴族が襲い掛かり、暴風をもって受け流す。
「んん。お前らは下がってろ、こいつは俺がやる」
守護者ではないようだが魔貴族の中でも放出する魔力が抜き出た存在。
大柄な男で頭にはツノのようなものが生えた魔人だ。
「聖騎士ダルクだ。来い」
強者を相手に嬉しそうな表情を見せるダルクも戦闘狂と言っていいだろう。
「西の魔貴族グレイディ。愉しませてくれよ」
ニヤリと笑ったグレイディは膨大な魔力内包する強化のみの魔人。
地属性強化を得意とする魔人だろう。
距離を詰めて恐ろしいまでの速度で振るわれた斬撃を風刃をもって受け止める、が、その威力はダルクの想像を超えて高く下方へと薙ぎ払われる。
体勢を立て直して空を舞い、グレイディの右に回り込んで斬り掛かる。
下級魔法陣を発動した豪風による風刃でグレイディの斬撃と斬り結び、速度の乗ったダルクが威力で勝り攻勢に回る。
防御を強いられるグレイディだが、強化の高さからダルクの剣よりも速い。
全力で斬り掛かるダルクに多くの反撃を繰り出してくる。
威力で勝るダルクにグレイディは速度で上回る事でその威力を抑え込む。
守護者に匹敵する魔貴族だと判断したダルクは爆風を生み出して距離をとり、優位に運べるであろう飛行戦闘に持ち込む事にした。
間違いなくグレイディは精霊化する事ができ、このまま上級魔法陣で挑んだとしても勝てるかはわからない。
飛行戦闘である程度ダメージを蓄積させたうえで全力で臨むべきだろうと加速してグレイディに向かう。
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