第12話 審査
今日は審査という事で役所を訪れた。
まずはクエストを受注するよう言われた為現在三人は選んでいる。
ブルーランクとなると難易度6までは受注可能なので選べるクエストも相当な数がある。
難易度6ともなると報酬も高いがリスクも高い。
防具を買ったのは正解だろう。
「これはどうだろう」
蒼真が選んだクエストは討伐だ。
クエスト内容:キラーアント討伐
場所:アルテリア北部イーリル洞窟周辺
報酬:一体につき10,000リラ
注意事項:麻痺毒、百体以上の群れで出現
報告手段:魔石を回収
難易度:6
「キラーアント討伐は複数のパーティーで挑むクエストですよ? 終わりが無いんじゃないかと思うほど出て来るそうです!」
「まぁ銃弾もたくさんあるし余裕じゃないかな?」
「ミリーが吹っ飛ばせば片付くだろ」
「私がやるんですか!?」
「よし、これ行こー!」
受付でクエストを受注し、待合室で審査員こと冒険者を待つ。
「待たせたね」
振り返るとそこには青い髪に切れ長な目をした長身の男が立っていた。
白地に金の刺繍が入った高価そうな装備を纏い、腰には騎士の持つ片手直剣と背中に盾を背負っている。
輝きや質感から見てミスリル製のようだ。
男の後ろに立つ女性も審査員のようだ。
明るめの茶髪にクリッとした茶色の目。
そして頭から獣耳が生えている。
服装は濃い緑のローブ。
装備はスタッフのようだが、こちらは不思議な木とミスリルを組み合わせた武器と思われる。
「私はレオナルド。王国の騎士だが今日は訳あって冒険者としてこの街に来ている。今日は審査員として同行するのでよろしく頼むよ。ところでランクを三つも飛ばしたという噂の三人は君達だよね? 男二人と女一人のパーティーと聞いていたんだが?」
「たぶんこちらの方が女性ですよ。はじめまして、私はレミリアと申します。レオナルド様の従者をしております」
(たぶん)
少しミリーに突き刺さるものがあった。
「は、はじめまして、私はミリーといいます。こちらは千尋さんと蒼真さんです。よろしくお願いします」
頭を下げて挨拶するミリーに習い、二人もお辞儀する。
「君達…… 変わった武器を持っているね。見た所ミスリル製のようだが少し興味があるから見せてくれないかな?」
ミリーはレオナルドにメイスを渡す。
レオナルドとレミリアは食い入るように見つめる。
「すごい…… なんという美しさだろう。こんなにも輝く装備を見た事がない。国王に献上される品でもこれほどの物はないだろう」
「本当に綺麗ですね。まるで金や銀の宝飾品のよう。先端も宝石のように輝いていますがミスリルに着色してあるのですね」
驚きの表情で見つめるレオナルドと、うっとりとした表情でレミリアも見ている。
次に蒼真の刀を渡す。
「これは剣か? 初めて見る剣だが…… しかしこれも美しい。顔が映り込むほどの磨きといいこのギザギザとしたのは何だろう。わざと模様としているのかな?」
レオナルドさん正解です。
「これで剣との打ち合いに耐えられるのでしょうか。私達の知る剣よりも薄く、細く、反りがある。刺突用とも違いますし…… しかし刃の部分は薄いなどというレベルではありませんね。何でも切れてしまいそうです」
最後に千尋の銃を渡す。
「あ、ここは触っちゃダメだよ?」
先にトリガーを触らないよう注意しておく。
「ふむ、これは…… 何だろう?これも本当にすごいな。ここまでミスリルを細工するとは…… んん? これだけミスリルじゃない素材も使われているが。ふーむ…… どれもとても興味がある。今日の同行がとても楽しみだ」
「本当にすごいですね…… ミスリルの細工といい造り込みといい素晴らしい出来です。どのように使うかもわかりませんが武器なのでしょうか?」
全て見終わり少し考え込むレオナルド。
お礼を言って武器を返す。
アルテリアの北部へ抜けると左に草原、右に森林といった景色が広がっており、以前ミリーと配達に通った街道を今日また歩いている。
左から千尋、蒼真、ミリーと並び、そのすぐ後ろにレオナルドとレミリアが付いて行く。
「君達は袋以外の持ち物は無いのかい?」
「ミリーがヒーラーだからな」
「ヒーラーの冒険者とは珍しいね」
などと話しながら歩いて行くと、前回同様ワーウルフとリザードマンが現れる。
「いちいち立ち止まるのやだしオレやるよ」
千尋が少し前を歩く。
ワーウルフもリザードマンも千尋に近づくだけで泡を吹いて倒れ、倒れた
「こ、これは千尋君がやっているのか!?」
「うんっ、そうだよー」
「どうやってるのかはわかりませんが初めて見る魔法ですね…… ワーウルフもリザードマンも弱くないんですが」
「レミリアさん…… 私と被りますね……」
ただ歩いているだけで次々と魔獣が倒され、どんどん溜まっていく魔石。
「レミリア。私達はもう帰ってもいいんじゃないかと思えてきたよ」
「レオナルド様、それはいけません。まだあの武器を使うところを見てませんので」
「珍しくレミリアも興味を持ったのか」
少し微笑みながら話をする。
一時間ほど街道を歩き、林に入って十分ほどで大きな
キラーアントだ。
「おかしいですね。洞窟はまだ先なんですが」
「偵察用の蟻じゃない?」
「千尋はそろそろいいぞ。あとは銃でサポートしてくれ」
また歩き出して五分程でキラーアントの群れに遭遇した。
拓けた広場のようになった場所を埋め尽くすように蟻の集団が
かなり気持ちが悪い。
蒼真は刀を抜き、ミリーもメイスを構える。
後方で千尋も銃を抜いて待つ。
それを10メートルほど離れて見学するレオナルドとレミリア。
一斉に襲いくるキラーアントを蒼真はスパスパと斬り倒し、ミリーは爆破しながら次々と倒していく。
千尋は二人の死角から襲うキラーアントを撃ち抜いていく。
「これも地属性の魔獣だな、少し硬い」
「爆破なしでも倒せますけど、数が多いので爆破ありのが楽ですっ! 」
「すごいな彼らは。蒼真君のあの剣の切れ味はなんだ? 斬り方も変わっているがキラーアントをあんなにも容易く切り裂くとは……」
「ミリーさんの魔法も変わってますね。ヒーラーが攻撃魔法を使うのも初めて見ましたが、あれほど連続で爆裂魔法を発動できる人も初めて見ます」
「レミリアもできないのか?」
「私の爆裂魔法は少し発動に時間がかかりますよ」
「なるほど。それと千尋君のあれはなんだろうね。武器を向けたキラーアントが次々と倒されているが」
「何かを撃ち出しているんではないでしょうか? 時々何かを詰め替えてますね 」
レオナルドやレミリアはこれまでに数え切れないほどの魔法や戦闘を見てきたが、千尋達の戦いは今まで見てきたものとは全くの別物だった。
「キラーアントが減って来たな」
「そろそろ終わりでしょうか?」
「なんか逃げていく蟻もいるよ?」
「もしかしたらまとまって来るんじゃないのか?」
「腕が疲れて来ましたよー!」
「じゃあ
「そうですねぇ、お願いします!」
蒼真が風の壁を薄く作り出し、ミリーは魔力を放出して範囲を調整する。
千尋は二人から充分な距離を取り、残っているキラーアントを撃ち抜いていく。
「ん? 彼らは何かするみたいだね」
「魔力が広がっていますね。ヒーラー特有の魔力でしょうか…… 光のカーテンのような魔力を放出していますが何をする気でしょうね?」
「かなりの魔力量だがどうする気だろう?」
二人が疑問に思いながらも見つめていると、キラーアントの集団が再度現れ、一斉にミリー達に襲いかかる。
蒼真は風の壁を強化し、キラーアントの攻撃を阻む。
次から次へと襲いかかるキラーアント。
キラーアントがミリーの範囲内を埋め尽くすまで耐える。
「いきます!」
!!!!!!!!!!!!!!!
鳴り響く轟音とともに空高く突き上げる火柱。
吹き飛ばされ、焼かれていくキラーアントの群れ。
この爆発で百を超えるキラーアントが一瞬にして絶命した。
「あはははははっ! 凄い! 凄すぎる! とんでもない威力だ!」
「なん…… という…… あれ程の魔法を放てる人間がこの世界に何人いるでしょう。とんでもない魔法ですよ!?」
笑うレオナルドと驚愕するレミリア。
「ふう。上手くいきましたね!」
「お疲れ様ー」
「はぁ…… はぁ…… 引き付けたから粗方片付いたろう……」
「残ってるのはいなそうだよー」
魔石を回収し、辺りを見回すがキラーアントの生き残りはいないようだ。
戦闘が終わっただろうと近づいてくるレオナルドとレミリア。
「凄いね君達。レベル4や5とは思えないほどの実力だ。並みのレベル10では到底敵わないほどだよ」
「ブルーランクどころかパープル、シルバーランクでもいいと思います」
「ランクは簡単に上がるのに、レベルなかなか上がらないよねー」
「どうすれば上がるんだろうな」
「噂では魔法戦闘で苦戦するとレベルは上がりやすいと聞いた事があります」
「今回はそうだね、蒼真君。君はレベルが上がると思うよ?」
微笑みながら言うレオナルド。
「ミリーさんももしかしたら上がるかもしれません」
「んなっ!? オレは!?」
「千尋君は上がらないんじゃないかな?魔力使ってても常に余裕あるし」
「そうですね。あれほど落ち着いて戦闘していたらレベルは上がらないでしょうね」
「そんなああ……」
「千尋が苦戦か……」
「想像つきませんね……」
帰り道もわずかではあったがリザードマンやワーウルフが現れたので、千尋のサイレントキラーを再開。
一時間程で役所に到着した。
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