第35話 襲来
『
コロン火山までの道のりは馬車を使えば一か月かかる予定だったんだけど…………フレアが両手に僕とシナモンを抱えて飛んで一週間で到着したんだよね。
フレアは今でも『竜化』が制御できないみたいだけど正直『竜化』が無くても十分なんだよな…………
それにコロン火山までの道中での野宿はシナモンの薬草知識とフレアの料理スキルで凄くおいしいものが食べれたし…………あれ僕役に立ってなくない?
まぁこんな感じの経緯があってコロン火山のふもとに着いたわけなんだけど…………暑い。
それに火山の大きさは富士山何て比べ物にならないくらいの大きさ…………流石異世界クオリティー。
「シノブ…………暑いよ…………」
シナモンはもう既に服を数枚脱いで露出度高め。
でもここには人なんてめったに来ないだろうからいいと思う。
それに便乗して僕もある程度の服は脱いでるから。
「僕の方が凄く暑いから」
獣人は暑さに弱いんだな…………
服は脱いで暑さの調節はできるけど…………しっぽと耳の毛の中が凄く蒸し暑い。それに長い髪も汗で少し濡れてて体に纏わりつくから少し気持ち悪いよ…………
でもこんな状況でも平然としてるフレア。
「フレア……暑くないの?」
「はい、わたくしは暑いところには慣れてますから」
さ、流石です……
このプリンセスはやっぱりスゴイ。
ちなみに今回の目的、サラマンダーの討伐が成功すれば一気にパーティーランクがCからBに上がる。
「ご主人様、そろそろ参りますか?」
「そうだね」
「シナモンも行くよ」
「分かりました……」
シナモンは少し暑さに弱いみたいだけど……まぁいざとなったらしっかりすると思う。
こうして僕たちはコロン火山のふもとから火山を登り火口付近へと向かった。
サラマンダーは火口付近に生息していて溶岩や岩石を主な食料としているらしい。
体内で溶岩などの熱を魔力に変換できる独自の能力を所有している魔物。
サラマンダーみたいな能力を持っている魔物は
ギャウゥゥゥゥゥ!!!!
火口付近にやってくると大きな咆哮が響き渡った。
そしてゆっくりとマグマの中から姿を表した全身真っ赤なゴツゴツした体の魔物、これこそがサラマンダー。
大きなトカゲって感じ。
体調は4メートルを超える大きさ………
「サラマンダー……」
真っ先に身構えたのはフレアだった。
「わたくしたちという本物の『竜族』がいながら……よくのうのうと生きてこれましたね……」
あ、あれ?フレア?
「シノブ……何だかフレア怒ってない?」
「心配しないで……僕にもそう見えるから」
そう言えばこの星七個の依頼を引き受けたのもフレアだったような……
僕はフレアに恐る恐る声をかける。
「フ、フレア……どうしたの?」
「わたくしあの竜モドキがどうしても許せないんです!」
そう言ってフレアは拳を強く握った。
えっと……つまりフレアは竜に似た魔物が大嫌いってことなのかな?
「ご主人様、シナモン、今回はわたくしがアレを倒します」
ん〜別にフレアならなんの問題もないからいいか。
「分かったよ」
「今回は任せるね」
一方のシナモンはフレアの起こっている様子を見てガクガク震えている。
確かに少し怖いかも……
そしてフレアが詠唱を始めた。
ー大地を凍てつかせる氷の聖霊よ、我にやどりて氷塊の牢獄に閉じ込めよー
ー
するとフレアを中心に放射線状に氷が地面を伝ってサラマンダーにまとわりつく。
そして次の瞬間、サラマンダーが一瞬で氷に飲み込まれた。
流石魔法適性抜群のフレアだ。
こうも簡単に星七個の依頼が達成できるなんて。
「お疲れ様、フレア」
「ありがとうございます、ご主人様」
フレアの顔がみるみる赤く染まっていく。
「どうでしたか……わたくしの魔法」
「うん……すごかったよ」
でもちょっとやり過ぎのような気がするんだよね……
すると僕が言わなかった事をサラリとシナモンが口にした。
「フレア!少しやり過ぎです!」
「そうでしょうか?」
「そうです!〜〜寒い!それにシノブにいいところ見せられなかったよぅ……」
確かにここら辺一体が氷で埋め尽くされていた。
僕はそんなに寒さは感じなかったけどエルフは気温に敏感なのかな?
「ほほ〜これ程のものとは想像以上ですね」
!?
「だ、誰ですか!?」
突然の声に体を強張らせる。
そして岩陰から姿を現したのは浅黒い肌に長いエルフのような耳、そして真っ黒なヒゲが綺麗に整えられた執事のような男。
いやエルフなのかな?
それにしても肌が黒いし……
するとシナモンとフレアが揃って声を出す。
「「魔族……」」
え?魔族?
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